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アルフォンスは魔導士ではなく、猫である  作者: 猫のアミーゴ


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第20話 青い花、買わされました

独演イベント当日になった。ネリーとの待ち合わせ場所に向かう。

10分前だから、ちょっと早いけど遅れるよりいいだろう。

ってネリーが先に待っていた。やばい。

「ネリー、すまない。オレ時間間違えてたか?」

慌てて走り寄るオレに、ネリーは笑いながら答えた。

「楽しみすぎて、ちょっと早起きしてしまいました」

そっかー。カイル、同好が増えたぞ。良かったなー。



劇場に向かう道すがら、青い花がいたるところで売られているのを見かけた。

ローザ・オイラーの名前と共に売られている。

不思議そうな顔をしているオレに、売り子のお姉さんが、

「お兄さん、ローザ・オイラーのファンじゃないの?」

「青い花は何かあるんですか?」

ネリーも不思議そうな顔をしている。常識ではないようだ。

「ローザ・オイラーが青が好きだから、ファンは青い花を買ってイベントに行くのですよ。ローザブルーって呼ばれてます!」

お姉さんは続けて売り込みにかかる。

「イベントに行くなら是非買っていったほうがいいですよ。アンコールの時にみんな一斉に投げるのが圧巻で」

お姉さんは、ちょっと声を潜めて、

「あの新聞記事の影響で、ファンがピリついているんですよ。青い花を持っていなかったら冷やかしと思われてからまれるかもしれません」

「じゃあ、2本ください」

からまれたくないオレは、ネリーの分も含めて2本を買った。

「毎度ありがとうございます!!」

体よく売りつけられたのかなー?



劇場の入口にカイルがいた。

頭にローザ・オイラーと書かれた青い布を巻いている集団の中に。

近寄りたくねぇ。

オレは、カイルに気づかれないようにネリーを誘導しようとしたが、遅かった。

「アルー! ネリーさんも」

「カイルさん……」

ネリーも引きつった顔をしている。

見つかってしまったから、仕方はない。

「君らにローザブルーを渡そうと待ってたんだけど、持ってきているなんて感心。感心」

あー、買ってきてもからまれましたよ。売り子のお姉さん。

「はい、これ今日のパンフレットね。」

カイルは、ローザ・オイラーが表紙になっている冊子をオレとネリーに一冊ずつ配った。

「あ、これ布教用だからお金はいらないからね。今日は是非、ローザの魅力を堪能していってくれよ。僕はファンクラブのみんなと最前列にいくから!!」

「そ……そうか」

手を振るカイルが、離れていったことに心底ほっとした。



カイルのせいか、オレとネリーは席に着くまで無言であった。

やがて、幕が上がった。

舞台は圧巻であった――。



結婚の約束をしたカップル。カップルの女性役をローザが演じる。

ローザが、恋が実り、結婚を夢見て、歌い、踊るところから始まる。

しかし、結婚を前にして男は大口の仕事のために1年ほど外国に行くことになる。

男を心配する気持ち、不安、そして戻ってきたら結婚しようという約束への歓喜を歌い上げる。

一旦舞台は暗転し、男が戻ってきたというナレーションが入る。

男は、女性を伴って戻ってきたのだ。しかもその女性と結婚するという。

男の心変わりにローザは、苦悩、悲しみ、そして憎しみを抱き、表面上は祝福をしながら復讐を誓う。

結婚のお祝いを装い、ローザは男女を森へ誘い出す。そうして二人を洞窟の天井に空いた穴に突き落とす。

『二人のうちひとりだけ助けるわ。あなたたちの愛を私に見せて~』

狂気に取りつかれた顔で歌い上げる。

男女は最初、ローザを言いくるめようとするが失敗し、次第に争っていく。

それを見て笑いながらローザは去っていく――。



ローザ以外の役者は出てこない。舞台演出とナレーションと声だけで、後はローザひとりが演じる。

ミュージカル仕立てで、まさに独演であった。

カイルのことも忘れて、オレもネリーも舞台に夢中だった。

最後のアンコールの後、青い花が舞台に飛ぶ。 二人とも花を投げていた。



舞台の余韻を誰かと共有したかった。

「ネリー、舞台の感想を共有したいから、どこかでお茶でもしながら話さないか?」

いやー、あのあとローザはどうしたんだろうって意見聞きたい。

オレは少し興奮していた。

「行きます! 私も話したいです」

ネリーも同じだった。良かった。

喫茶店で、席について注文を済ませると、ネリーが語りだす。

「あの男の仕事が決まったときの不安って、女の勘だったんでしょうかね」

「たぶん、浮気するっていう伏線だったんじゃないかな」

「あの森に誘い出すシーン、まんまとついていく男女もねぇ」

「あれって完全犯罪になるのかしら」

ひとしきり考察や感想を言い合って一息ついた。

ネリーがカイルからもらったパンフをパラパラとめくり始めた。

「あれ……」

ローザのインタビュー記事のところでネリーの手が止まる。

「どうかした?」

「アル、ここ見てもらえますか?」



――ローザのインタビュー記事

Q.最近した大きな買い物は何ですか?

A.理想の家ですね。

暖炉にあこがれていたので、暖炉付きの煙突がある家を購入しました。

それから、私色にしたかったので、屋根の色は青く塗り直して。

休みの日に花壇を作ってます。

皆さまから頂いたローザブルーをそこに植え替えるつもりです。

……



どこかで聞いたような気がする。



ネリーは、パンフをひっくり返して裏側を見てつぶやいた。

「このパンフが発行されたのは、半年前ですね」

ネリーはしばらく考え込んだ後、

「ヘルマンさんが空き巣の犯人の調書を調べていましたよね。詰所の裏の花壇を見に行くついでに、今度聞きに行きませんか?」

「青い花の植木鉢!!」

ネリーは、にっこりと微笑んだ。

そうして、ネリーの次の休みに自警団詰所を訪問することになった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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