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アルフォンスは魔導士ではなく、猫である  作者: 猫のアミーゴ


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第17話 キルヒナーの告白

キルヒナー氏との会談は、3日後に魔法管理局内の会議室で行われることとなった。

オレとネリーの他にハンス事務長が同席する。

名目は「ランゲ教授の実績について講演会の依頼」ということにしたそうだ。

事前にいくつかの準備をして、オレとネリーは予定時刻より前に会議室に入り、打合せ通りに衝立の後ろに身を隠した。



キルヒナー氏は、時間通りにやってきた。

「本日はご足労ありがとうございます」

「いえ、教授の助手として教授の偉業は広めたいですから」

キルヒナー氏が席についたところで、ハンス事務長は切り出した。

「キルヒナー氏に紹介したい人がいるんですよ」

「はあ」

「ジルバーシュタイン君」

ハンス事務長の呼びかけで、オレとネリーは衝立から姿をあらわした。

「あ……あなたは、告別式で」

キルヒナー氏は席を立ちかけた。

「見てほしいものがあるんです」

オレは慌てて、少し汚れたシュシュ型の首輪を取り出した。

これは、かぎしっぽのものではない。ネリーが作ってくれた。

さらに信ぴょう性が増すように、土埃で汚した上にレモンの抜け毛をつけている。

キルヒナー氏の顔色が悪くなった。

「たまたま、その猫にあなたが首輪をつけているのを見たのです。 その猫が亡くなったので、猫を探しているんじゃないかと思って、お伝えしたくて」

彼は、しばし黙った後、

「その猫は、なぜ死んだのですか?」

手が震えている。

「息絶えているところを見つけたので、死因はわかりません。亡骸は埋葬しました。これは遺品です。」

オレは、死因を知らないのだから嘘ではない。さてどう反応するか。



彼は、首輪を手に取って指でなぞるような動きをした。

シュシュには一か所、やぶれたような穴を空けている。

さて、キルヒナー氏はフォルダのことを知っていて、かぎしっぽに着けたのか。

彼は、シュシュの中身を確かめるように何度も握り、生地を引っ張った後に、穴のところで手が止まった。

「ない……」

無意識だろうか、小さな声が彼から漏れた。

フォルダを探している――。



ネリーがオレの手に触れてきた。アレの出番だな。

「これをお探しですか?」

オレは、キルヒナー氏に見えるようにフォルダを掲げた。

「あ……」

手を伸ばしてきたが、オレは引っ込める。

「これには、何が入っているのですか?」

「知らない! 知らないんだ!」

オレは、目の前でフォルダのロックを解除した。

「な……なんで」

キルヒナー氏の目が驚愕で見開かれた。

「それには、何が入っていたんだ……!? 教えてくれ!」

ふむ、キルヒナー氏は中身を知らないようだ。

「どうして、中身がわからないのに、ノラ猫の首輪に仕込むようなことをしたのですか?」

彼は、うつむいたが、やがてぽつりぽつりと話し始めた。



キルヒナー氏の話を要約すると――。

教授が亡くなった後、研究室の片付けをしていたときに机の引き出しの奥から出てきたそうだ。

ロックがかかっていて、暗証コードもわからない。

遺族と相談することにしていた。

そんな矢先に、「それを譲って欲しい。お金なら払う」という人が現れた。

いくら遺族と相談してからといっても、しつこく何度も訪ねてきた。

ある日、なんとなく嫌な予感がしたので、フォルダを持って外出した。そのあと、研究室に誰かが入った形跡があった。

怖くなったキルヒナー氏は、余り布で足首に巻ける大きさのシュシュを作り、その中にフォルダを入れて持ち歩くようになった。

しばらくは、何事もなく過ごしていたが、ある日、謎の植木鉢が自宅前に置かれていた。

不審に思った彼は、魔法検知をかけたところ、魔法がかかった何かが植木鉢に仕込まれていたことに気づいた。

探索か、盗聴だろうか。爆発系ではないようだった。自警団の詰所に植木鉢を運んだところ、不在だったので、植木鉢を詰所に置いて去った。

命を狙われているのじゃないかと不安に駆られ、たまたま猫の餌場で目についた猫の首にシュシュを着けた。

ノラ猫なら一定の場所にいないだろうから、見つからないだろうと思った。

また、餌場に行けば、自分が回収することもたやすいだろうと。

それから、何事もなく過ごしていたが、あの告別式で猫のことを聞かれたことで動揺した。



「あの猫を、まさか殺したのか……? 私が逃げたばかりに」

キルヒナー氏は泣きそうな声で聞いてきた。

「事故です。 車にぶつかったことで、弱って力尽きたようです」

ネリーには聞かせたくなかったな。オレはちらりとネリーを伺った。

「そうか……、ところでそれには、何が入っていたんだ? 国家機密か……、やばいものなら言わなくてもいいです」

キルヒナー氏は、疲れた声だった。



「わかりません」

オレはきっぱりと答えた。

「はあ?」

オレは、種明かしをすることにした。

「そのフォルダに似せた別のフォルダです。 解除したところを見せるためにオレが適当にロックしたのを開けただけです」

ちなみに、暗証コードは【ツバキのおなかはポンポコリン】だ。

キルヒナー氏は突っ伏した。



今後のことを4人で話し、本物のフォルダはオレの家で預かることになった。

「アル君、君の家なら大丈夫だろうから、それを預かってくれ」

まあ、オレの家は、とある事情でセキュリティが高いから荒らされる心配はないだろう。

ネリーが反論しようとしたが、ハンス事務長がなだめた。

そして、植木鉢のことを確かめるために自警団の詰所に向かうことになった。

ハンス事務長が、精密に魔法検知が可能な魔石を借りてきてくれた。

ただし、事務長はこの後、予定が詰まっているため、詰所に向かうのはオレとネリーとキルヒナー氏となった。



道中、気になっていたシュシュの余り布のことを尋ねると、キルヒナー氏は、カバンから同じ柄のお弁当の入った袋を取り出して見せてくれた。

彼の手作りのランチバッグだそうだ。

ネリーと手芸の話で少し盛り上がっていた。

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