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アルフォンスは魔導士ではなく、猫である  作者: 猫のアミーゴ


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ネリー外伝 猫ごと私を大事にしてくれる人

※番外編です。今回はネリー視点のお話です。

私、ネリー・エッカートは、学校を卒業してから王都の魔法管理局の事務員として就職した。

実家は王都ではなかったため、最初は難色を示されたが、叔父が王都に住んでいることもあって最終的に折れてくれた。

叔父も私を気にかけてくれ、魔法管理局事務長である叔父の秘書として秘書課に移ることとなった。

実態は、時々叔父の秘書、普段は事務員といった感じである。

そうして、私は実家から連れてきたアンバーと一緒に、都会暮らしを始めたのだ。



最初は、事務員として採用されたのに秘書課にいる私は少し遠巻きにされていたようだ。

ある日、同僚が公園の木のそばでおろおろしていたのを見かけた。

子猫が木に登って降りられなくなって、今にも落ちそうだという。

彼女に上着を預けて、靴を脱いで私は木に登った。 パンツスーツで助かった。

無事に小さなトラ猫を捕獲し、木から降りることに成功した。 田舎暮らしは伊達ではない。

トラ猫はレモンと名付けられ、私が飼うこととなった。

この件があって秘書課のララと仲良くなった。



ある日、ララから合コンに誘われた。

「魔法管理局は公務員だから安定職よ。あんた奥手なんだから、こんな機会でもないと彼氏もできないでしょ!」

それでも躊躇する私にララは、

「猫がいたら幸せなのはわかるし、レモンを押し付けることになった私がいうのもあれだけど。猫の寿命がきて、一人はさみしいと思ったときに、あんたは40代よ!」

胸が痛かった。叔父からも似たようなことを言われていた。

「今のうちに、猫ごと大事にしてくれる彼氏作るべきよ」

気が付いたら、ララの言葉に頷いている自分がいた。



合コン当日、ララのアドバイス通りにワンピースで出掛けた。

「ネリー可愛いわよ。戦闘準備は抜かりないね。いくわよ!!おー!!」

ララは、気合を入れるように手を高く突き上げた。



ノリについていけない……合コンで思ったことはそれだった。

色んな男性が話しかけてくる。 話題は劇場の話、ダンスパーティの話、カードゲームの話、時計の話……。

なじみのない話題ばかりだった。帰って猫をもふりたい。

そんな時に話しかけてきたのは、ダーヴィットだった。

ダーヴィットは、私がその話題についていけていないと気づくと、補足してくれた。

気が付くと私は笑っていた。

ダーヴィットは、盛り上げ上手だった。

盛り上がっていない所に行っては、笑いを呼び起こしていた。

合コンを楽しんでいる自分がいた。



帰りに、ダーヴィットから

「お試しでオレと付き合ってみませんか?」

とちょっとおどけた感じで言われた。 でも、初対面の人だしと引いている私に、ララが肘で突いてきた。

「あんたは奥手すぎるんだから。お試しでいいっていうんだったらいいじゃない。生理的に嫌ってわけじゃないんでしょ?」

その言葉に私はうなずいた。



ダーヴィットといると楽しい。

彼は話上手だ。 嫌な出来事も全てを笑い話に変えてくれた。

ララからも、明るくなったと言われた。



そんなある日、ダーヴィットを初めて自宅に招いた。

アンバーとレモンを紹介する約束だったのだ。

彼は物珍しげに、アンバーとレモンを見つめる。

「これがネリーの飼い猫だね。 よろしく~!」

いきなりアンバーに触れようとした。飛び退くアンバー。

「なんだよぉ~。撫でさせてくれよぉ~」

ダーヴィットは猫に慣れていない。これはいけない。止めなくちゃ。

「おっ、この窓から俺の家の方見えるんじゃない」

何かに気づいたダーヴィットは無造作にドアを開けた。

「だめー!!」

ソファの影から隙を伺ったレモンが飛び出していった。

急いで外に出たが、既にレモンの姿はなかった。

「レモンー!レモンー!」

近くの茂みを覗き込む。塀の上から道路を覗くと走り去るレモンの姿が遠くに見えた。

「あー、お腹が減ったら戻ってくるだろ」

呑気なダーヴィットに初めて腹が立った。

だけど、ダーヴィットが猫に慣れていない時点で注意すべきだった私が悪いのだ。

「今から探しに行くから、悪いけど」

私は獣医に連れていくときのカゴを引っ張り出し、戸締りを始めた。

「俺も一緒に探しにいくよ」

ダーヴィットもついてきた。 今日は彼の話が楽しいとは思えなかった。



日が暮れてきた頃、レモンは見つからない。

「俺の友達に猫の言葉がわかる奴がいるから、連れてくるよ。今日は遅いから戻ろう」

本当はずっと探したかった。 だけど仕事を無断欠勤する訳にはいかないし、アンバーを残してきた。

私は後ろ髪を引かれながら帰ることにした。



翌朝、叔父にレモンがいなくなったこと。休みを取得したいことを告げた。

「今日は早退していい。ただレモンを探すのは夕方までにして夜はちゃんと寝なさい。明日は休みにしておくから」

叔父とダーヴィットは仕事が終わってから、レモンの捜索に参加してくれた。

ダーヴィットから明日、例の友達を連れてくると言われた。

夜は捜索をしないが、とても眠れる気がしなかった。



その日、ダーヴィットが友達のアルを連れてきた。彼のカバンから、彼の飼い猫が顔を出していた。

正直、レモンを探しに出掛けたかった。

アルは、アンバーと会った時に何か話しているようだった。

にゃごにゃご言っているようだけど、アンバーの態度が変わった。

「あ、こいつ魔導士で猫の言葉わかるらしいんだよー」

期待していなかったはずなのに、なぜだかレモンが見つかるような気がしてきた。

「とりあえず、近所に聞き込みしてきますね。エッカート女史は、少し睡眠取られたほうがいいです」

「俺が付いてるから大丈夫だよ。アル、猫探し頼んだ!!」

少しだけ、休ませてもらおうと思った。 気が付いたらソファでうつらうつらとしていた。

アンバーの威嚇の声で私は覚醒した。

ダーヴィットを私に近づけまいというような体であった。

「この猫、結構凶暴だよな。何もしないって」

ダーヴィットは、ひっかき傷だらけだった。

ふと彼は、アンバーを名前で呼ばないなと思った。



目が覚めてすぐに、アルが戻ってきた。

「聞き込みの結果、レモンは、橋の辺りに逃げ込んだみたいです。怖い思いをしたみたいなので、オレが呼んでも出てこないと思うので、……ご足労してもらってもいいですか?」

「もちろん!すぐ行きますわ!」

私はカゴを引っ掴んで家を出た。 もちろん戸締りだけは確認した。

レモン待っててね。

橋が近づいてきたところで、アルが止まる。

「オレ達は待機だ。レモンが怯えて出てこないかもしれない。女史お願いします。」

そうよね。レモンにとっては私以外は知らない人間だ。

「レモンー!レモンー!」

がさがさがさ……。

レモンが茂みから顔を出した。 逃げないようにそっと近づこうとしたが、レモンは駆け寄ってきた。

私はレモンをそっとカゴに入れた。



「ジルバーシュタイン様、本当にありがとうございました。レモンを獣医に見せたいので、お礼は後日でよろしいでしょうか?」

「ああ、レモンを優先してやってください。」

この人は、ちゃんとレモンを名前で呼んでくれている。

レモンの首には首輪がない。

「首輪はどこかに落としちゃったのかしら。でもレモンが無事でよかったわ。カッシュさん今日は帰ってもらえますか?」

ダーヴィットとは、付き合えないと彼を苗字で自然に呼んでしまった時に気づいた。



ダーヴィットに別れを告げた。

「そっか、わかったよ」

あっさりとしていた。 ごねられたらどうしようとか心配していたが特に何もなかった。

ララにも別れたことを話したが、

「まあ、ちょっとあんたとは合ってなかったかもね」

「今度は、絶対『猫ごと私を大事にしてくれる人』探すつもりよ」

私がそういうと、ララは机にクッキーを置いていってくれた。 クッキーはほろ苦かった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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