第13話 猫と手土産
コン、コン、コン
「坊ちゃん、起きていらっしゃいますか?」
いつも通り返事も待たずに、ハンナがドアを開けた。
「砕石所から、荷物届いてますよ。どちらに運んでもらいますか?」
オレは、現在のツバキのトイレ近くの物置に運んでもらった。
だって、オレだと持ち上げられないからね。もちろんチップも払う。
砂は、魔石より高いかもしれない。
ハンナが作った食事をとりながら、新聞を読む。
ツバキは、とっくに食事を終えてハンナの手製のおもちゃに夢中になっていた。
――劇場の人気女優に5股疑惑。お相手は、あの俳優以外に、監督、劇場支配人、マネージャー、大学教授。
カイル、どんまい。女優ってこわいな。
――レンガ商店街近くの住宅の空き巣。容疑者逮捕。外国人の犯罪か。
あ、捕まったんだな。これでマリアの気も晴れるだろう。
――魔導士学校 名誉教授 スヴェン・ランゲ氏の告別式の開催日時が決まりました。
これは、案内状が届くかな。
食事が済むタイミングで、コーヒーが出てきた。
「坊ちゃん、今日はこれで失礼いたしますね」
遊び疲れたツバキは、すでに猫ベッドで眠っていた。
オレは、猫トイレの開発に再び着手した。
砂に、ジュースと庭の植物の葉っぱを入れて、よく混ぜる。
いきなり、ツバキの物で実験して失敗したら、掃除が大変だからな。
精神的ダメージが少ないものを選んだ。
魔石を起動すると、砂から不純物が魔石のほうに吸い寄せられていく。
魔石の周りに、葉っぱとジュースが混ざったものが溜まった。
砂は綺麗になっていた。
魔法としては成功だな。あとは、この抽出したものの扱いだな。
水分もやっかいだ。
こっちは、水分蒸発の魔法を組み込んで、抽出したものを捨てやすい形に。
魔石の前に穴を空けて、そこにゴミを落とす形として、引き出しがいいな。
よし、木箱を大工に発注しよう。
木箱の設計図を作ることにした。
翌日、ポストの中に教授の告別式の案内状が届いていた。
立食式パーティで、教授の偉業を語る会。ほぼ同窓会だな。
木箱の設計書を大工に依頼しに出かける。
今日もツバキもカバンの中だ。
木箱は、特注品なのでちょっと高かった。だいたい3日でできるそうだ。
完成したら届けてもらうように頼んだ。
さて、時間ができたので、エッカート女史と、魔法の説明文修正の相談日程も決めたい。
オレは、魔法管理局に向かうことにした。
魔法管理局にきたのはいいけど、窓口のダーヴィットに、元カノを呼んでもらうのは気が引ける。
気が付いたら、売店で魔石の物色をしてしまっていた。
「ジルバーシュタイン様!」
エッカート女史がいた。売店のサンドイッチを手にしている。
お昼ごはんを買いに来たのだろうか。ちょっと遅い時間だった。
「こんにちは、エッカート女史。ちょうど良かったです」
「この前は、ありがとうございました。あの、私を探していらしたのですか?」
「ええ、ご迷惑じゃなかったら、魔法の説明文の訂正を……」
ダーヴィットじゃないから、すぐに出れる訳じゃないよな。
「女史のご都合の良い日に、どこか喫茶店とかでもどうでしょうか?」
「あ……あの、明日私休み取ります! いや、非番ですから、私の自宅でどうでしょうか!?」
休み取るって言ってない? いいのか公務員。
「えーと、女性の家にお邪魔するのは気がひけるので……」
さすがに、それは良くないよな。
「あの、レモンの様子見に来てください!! 猫ちゃんも一緒に。ねっ、それなら理由ありますよね!」
エッカート女史は、顔を真っ赤にして言った。
あー、レモンの心理的ダメージのケアして欲しいのかな。
「レモンの様子を見に、お伺いしますね」
だいたいの時間の約束をして、目的を果たしたオレは自宅に戻った。
あれ、もしかして、これ手土産いるパターンだよね。
オレは、慌ててマリアに女性の喜びそうな手土産を売っている場所を聞きに行き、マシンガントークにやられ、閉店間際に焼き菓子の詰め合わせを手に入れることに成功した。
今日も、長い一日だった。ツバキの顎の下を撫でながら、いつの間にか眠りに落ちていた。
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