第11話 シュシュのひったくり
今日こそは、フォルダを買おう。
オレは再び、魔法管理局の隣の売店に向かった。
「ジルバーシュタイン様、また、お会いしましたね」
エッカート女史と今日もばったり出会った。
女史は、いくつかの文具を抱えていた。売店には文具やお弁当なども売っている。
そりゃ、職員だからいる可能性が高い。むしろ、オレが連日いる方がおかしいだろう。
「よくお会いしますね。昨日はうっかりフォルダを買い忘れちゃって」
女史の手首に見覚えがあるものが巻かれていた。
「ああ、これですか? レモンの首輪を同じ布で作ろうとしたんですけど、レモンがつけてくれなくて……もったいないから自分がつけちゃってます」
かぎしっぽの首輪の柄によく似ているな。少なくとも色は一緒かな。
「首輪が引っ掛かったのが怖かったのじゃないかな」
レモンが男性に追っかけまわされていたことは、告げないほうがいいよな。
「じゃ、また」
オレはフォルダをいくつか手にとって、会計に向かった。
「あっ……」
何か、女史が言いかけたような気もしたが、気のせいだろう。
失敗した――。
オレはため息をつきながら、水浸しになった床を拭く。
洗浄のイメージで、水洗いになってしまった。猫トイレ用なのに。
魔石、買ってこよう。
本日2度目の売店に向かった。
夕暮れ時だ。急がないと売店閉まってしまうかもしれないな。
オレは、速足で売店へ向かう。
あれ、遠目に前の道を歩いているのは、エッカート女史じゃないかな。
仕事終わりかな、やばいな。売店開いてるか。
「きゃ!!」
路地から何者かが飛び出し、エッカート女史に襲い掛かった。
オレは慌てて走った。
男が、女史の腕を引っ張っている。
「何してるんだ!!!!」
とっさにオレは、失敗作の魔石を投げつけた。水が円を描いて飛び散る。
男が女史を突き飛ばした。
突き飛ばされた女史を、オレは辛うじて腕で支えた。
その隙に、男は逃げてしまった。
「エッカート女史、怪我は? 何か取られましたか!?」
「あ……あのシュシュが……」
昼間、女史を見たときに、マリアから聞いた話で警告すべきだったとオレは後悔した。
「怪我はありません。あの……ありがとうございます。」
女史は、びしょぬれだった。
「あの、とっさに魔石投げてすみませんでした!!」
オレのほうが被害与えてない? 慌てて魔石を止める。
「ふふ……助けてくださったんだもの。」
「失礼します!」
ドライヤーの魔法で女史を乾かす。ツバキも驚かない安心設計だ。
「まあ! こんな魔法もあったのですね。私も買おうかしら」
「ぜひ、買ってください!! まだ一個もダウンロードされてないんで!!」
顧客ゲットできるかも。
「ジルバーシュタイン様が作られたのですか?」
「売れてないんですけどねー。あの良かったら自警団の詰所までお送りしますよ」
もう、売店閉まりそうだし、女史が風邪引いたら寝覚めが悪い。
詰所までの道中に女史から聞いた。
オレの魔法は、説明文が悪いから売れないのじゃないかと。
説明文欄? ダーヴィットに丸投げしてたよ。
尚、今度見直すのを手伝ってくれるって、女史いい人だ。
そしたら、魔法ダウンロードされるかもな。
オレは新たな可能性に期待を抱いた。
家に帰ると遅いとツバキに怒られた。
《アルが帰ってこないから……誰もいないから……かぎしっぽも……》
その夜、オレはうなされて、目が覚めた。
腹の上でツバキが眠っていた。
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