幕間 希望へ続く魔法
※幕間です。
本編の合間に挟まる寄り道のようなお話です。
読まなくても本編の理解には影響しませんので、気が向いたときにでもどうぞ。
無理して読む必要はありません。
猫たちもそう言っています。
世界に異変が起きだした。
人だけではなく、土地も植物も弱っていく。
少しずつ、もやのようなものが溜まっていくのだ。
最初は影響はない。ただしそれが多いところに留まり続けると弱ってしまう。
そのもやのことは、穢れと呼ばれるようになった。
風の魔法で穢れを払っても、それは穢れが移動するだけでなくならなかった。
人々は穢れを生活圏から押し出すことで対処を行ったが、ついに作物どころか草も木も育たない土地まで現れ始めた。
穢れの発生は、国境を越えて広がった。
互いに争っていた国々も、穢れの広がる地域では戦うことができなくなった。
有用な魔法を作れないために、農業に携わっていた魔導士が奇跡を起こした。
彼女の願った白い魔石は、今まで何も起きないと思われていたが、穢れだけを消したのだ。
その魔法は、彼女にしか作れなかった。
どの国も彼女を欲した。
ある国は地位を、ある国は富みを、ある国は武力を持って。
しかし彼女はどの国に対しても、仕えることを拒んだ。
武力をちらつかせる国には、自身の命を盾にし、ただただ中立を望み、世界の浄化を願った。
しかし、彼女だけでは世界は広すぎた。
今では小さな刻印で刻むことができるようになった、入れ墨魔法は刻印魔法と呼ばれるようになっていた。
彼女は、浄化の対価として、魔石魔法の国々には魔石の提供を、刻印魔法の国々には刻印魔法の技術を望んだ。
国々は拒むことはできなかった。
彼女の考えに賛同する人々は、彼女の名前からアウロラ教徒と呼ばれるようになった。
アウロラ教徒は、アウロラから浄化の刻印魔法を刻まれ、浄化の旅にでる。
少しずつ、世界は元の形に戻っていった。
アウロラ教徒だけの中立国、アウロラ聖教国が成立したのだ。
一説では、この段取りは別の人が行い、彼女は魔法を刻むことだけを行っていたとも言われている。
アウロラ聖教国は、アウロラがいなくなってしまえば、再び浄化魔法が消えてしまう。
危うい立場であった。
しかし、それは世界の危機でもあった。
新たな浄化の魔導士を探すことは、世界の急務でもあったのだ。
聖教国は、魔石を集めた。
浄化の魔石を備蓄し、新たな浄化の魔導士が生まれるまで世界を護るためであった。
聖教国以外の国々も、この問題に取り組んだ。
ここでついに、魔石魔法と刻印魔法の共同研究が始まったのだ。
魔石に刻印を刻む。これはまず、失敗した。
刻印は願いを込める作業であったからだ。
ただの魔石になるか、魔石が割れた。
逆に魔石に込められた魔法を、人に刻むことができないか。
これには成功の兆しが見えた。
魔石の魔法より威力がかなり低くなるが、魔石から人への魔法移動が見受けられたのだ。
減衰率は9割であった。
さらに、魔法を移動させられた魔石は割れなかった。
これまでは、魔石は使ったら砕ける。
使い切りのものだと思われていた。
魔石は、魔法を込める前の状態に戻っていたのだ。
魔石から魔石に魔法は移動できないのか。
魔法を移動させても魔石が割れないことから、
・魔石間の魔法移動
・ひとつの魔石に複数の魔法を移動
ふたつの試みが行われた。
減衰率こそ高かったが、成功であった。
研究の成果はゆっくりと進んでいった。
アウロラは70歳を超えていた。
いまだ、新たな浄化の魔導士は見つからなかった。
アウロラが78歳の時、ついに浄化の魔導士が見つかった。
10歳の少女であった。
聖教国は、少女を迎え入れた。
その後、浄化の魔導士は、聖女、聖人と呼ばれるようになった。
魔石からの魔法移動の減衰率は、いまだ7割であった。
アウロラの没後も、世界は希望に向かって進み続けた――。
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