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第5話 もふもふたちの初めてのお昼寝と、辺境伯様の独占欲?

もふもふたちとの、幸せいっぱいのお昼寝タイム♪


おこげがラインハルト様の胸元で眠ってしまったり、エルマをめぐって辺境伯様がちょっぴり嫉妬したり……今回も癒やしと胸キュンが盛りだくさんです♡


ところが、そんな穏やかな時間を破るように、王都から思いがけない知らせが届いて――!?


今さらエルマを連れ戻そうとする王太子。

そして、大切な彼女を守ろうとするラインハルト様。


甘く幸せな日々に、波乱の予感が漂い始めます。


ぜひ最後までお楽しみください!

「きゅふぅ……」


 お昼過ぎ。


 もふもふ保育園の真ん中で、おこげが小さなあくびをした。


 さっきまで元気いっぱいにアスレチックを駆け回っていたおこげも、フェザーウサギの赤ちゃんたちも、今ではすっかりおねむの時間らしい。


「ふふっ、いっぱい遊んだから眠くなっちゃったのね」


 私は小さなベッドにふわふわの毛布を敷きながら、三匹のフェザーウサギたちを順番に抱き上げた。


「ぷぃ……」


「はいはい、もうお昼寝しましょうね」


 一匹をベッドに寝かせると、残りの二匹も待ちきれないとばかりに私の腕に飛び込んでくる。


 羽毛のように軽くて、驚くほど柔らかい。


 ああ、幸せ……!


 この子たちを抱っこしていると、どんな悩みだって消えてしまいそう。


「おこげもおいで?」


「きゅふっ!」


 呼びかけると、おこげは短い足で一生懸命に走ってきた。


 そして、私の膝によじ登ると、当然のように丸くなってしまう。


「もう、甘えん坊さんなんだから」


 頭を撫でると、おこげは気持ちよさそうに目を細めた。


 そのまま、すうすうと寝息を立て始める。


 どうやら、私の膝を自分専用のベッドだと思っているらしい。


「……困ったわね」


 全然困っていないけれど。


 むしろ、このまま一日中こうしていたい。


 そう思いながら、私はおこげの背中を優しく撫で続けた。


 すると――。


「随分と、幸せそうな顔をしているね」


「ひゃっ!?」


 突然、頭上から声が降ってきた。


 振り向くと、そこには銀髪をさらりと揺らしたラインハルト様が立っていた。


「ら、ラインハルト様! いつからそこに!?」


「つい先ほどだよ。君が小さな獣たちに囲まれて、蕩けそうな顔をしているところから」


「と、とろけそうな顔なんてしていません!」


「そうかな? 私には、とても幸せそうに見えたけれど」


 ラインハルト様はくすりと笑うと、私の隣に腰を下ろした。


 そして、膝の上ですやすや眠るおこげを見つめる。


「この子は、ずいぶん君に懐いているんだね」


「はい。最近は、私が座るとすぐに膝に乗ってくるんです」


「……なるほど」


 なぜか、ラインハルト様の声が少し低くなった。


「ラインハルト様?」


「いや。私も、その場所が羨ましいと思っただけだよ」


「えっ?」


 聞き間違いだろうか。


 辺境伯様ともあろうお方が、魔獣の赤ちゃんに嫉妬している……?


「ふふっ、ラインハルト様も抱っこしてみますか?」


「……君が抱っこしてくれるのなら、ぜひ」


「え?」


「冗談だよ」


 そう言いながら、ラインハルト様は少しも冗談らしくない笑顔を浮かべていた。


 私は顔が熱くなるのを感じながら、慌てて視線をそらした。


 この方は、時々とんでもないことをさらりと言うのだから困ってしまう。


 そのときだった。


「きゅふっ!」


 突然、おこげがむくりと起き上がった。


 そして、私の膝からぴょんと飛び降りると、ラインハルト様の膝に前足をかけた。


「あら? おこげ、どうしたの?」


「きゅふ、きゅふっ!」


 おこげは何かを訴えるように鳴きながら、ラインハルト様の服をよじ登ろうとしている。


「おや。私にも懐いてくれたのかな?」


 ラインハルト様が手を差し出すと、おこげは迷わずその腕によじ登った。


 そして、彼の胸元にちょこんと収まる。


「まあ……!」


 いつも私にべったりのおこげが、ラインハルト様に!


 嬉しくなって見守っていると、おこげは彼の胸元でくるりと丸くなり、再び目を閉じてしまった。


「……なるほど」


 ラインハルト様が、なんとも言えない表情でおこげを見下ろした。


「この子は、私を寝床に選んだようだ」


「ふふっ。ラインハルト様、温かいですものね」


「それは光栄だね」


 彼はそう言って、おこげの小さな背中をそっと撫でた。


 その手つきがあまりにも優しくて、私は思わず見入ってしまう。


 普段、数万の兵を率いる総司令官とは思えない。


 こんな顔もされるのだ。


 そう思った瞬間、ラインハルト様と目が合った。


「……エルマ」


「は、はい?」


「そんなに見つめられると、私も期待してしまうのだが」


「き、期待!?」


「君にも、私を甘やかしてほしいという期待だよ」


 ラインハルト様は、私の手をそっと取った。


「おこげだけでは不公平だろう?」


「そ、それは……!」


 反論しようとしたのに、言葉が出てこない。


 だって、そんな優しい顔で見つめられたら……。


「……ラインハルト様は、十分すぎるほど頑張っていらっしゃいます」


 私は小さな声で答えた。


「いつもお仕事をなさっていて、休む時間も少ないのでしょう? たまには、ゆっくりなさってくださいね」


 そう言って、彼の手を両手で包み込んだ。


「私にできることなら、何でもお手伝いしますから」


 ラインハルト様が、ぴたりと動きを止めた。


 そして。


「……君は、本当に」


「は、はい?」


「私を駄目にする天才だね」


「ええっ!?」


 彼は困ったように笑うと、私の手を握る力をほんの少しだけ強めた。


「そんなことを言われたら、君のそばから離れたくなくなる」


 その言葉に、私の胸がきゅんと鳴った。


 離れたくない。


 ラインハルト様が、私のそばに……?


 頬が熱くなって、まともに顔を見られない。


 そのとき。


「ぷぃ……」


 ベッドのほうから、小さな寝言が聞こえた。


 見れば、三匹のフェザーウサギたちが、いつの間にか一つのベッドに集まって眠っていた。


 小さな羽を重ね合い、まるで一つの大きな毛玉みたいになっている。


「まあ! みんな、仲良しさんね」


 思わず立ち上がろうとした瞬間、ラインハルト様が私の手を離さないことに気づいた。


「あ、あの……?」


「もう少しだけ、このままでいてくれないか」


 彼はおこげを起こさないように気をつけながら、穏やかに微笑んだ。


「君とこうしていると、普段は気づかない疲れまで消えていく気がするんだ」


 その声が、いつもよりずっと柔らかかった。


 私は小さく頷き、再び彼の隣に腰を下ろす。


「……はい。もちろんです」


 すると、ラインハルト様は満足そうに目を細めた。


 窓から差し込む午後の日差し。


 ふわふわの毛布に包まれて眠る、小さな神獣たち。


 そして、隣には優しい笑顔のラインハルト様。


 こんな穏やかな時間が、ずっと続けばいいのに。


 私は心からそう思った。


 ――けれど。


「失礼いたします、閣下!」


 突然、部屋の扉が勢いよく開いた。


 駆け込んできたのは、ラインハルト様の側近らしい男性だった。


「緊急のご報告がございます!」


「……声が大きい」


「も、申し訳ございません!」


 ラインハルト様のひと睨みで、側近の男性は慌てて口を押さえた。


 しかし、その表情は真剣そのものだった。


「実は、王都から使者が到着いたしました」


「王都から?」


「はい。聖女エルマ様を連れ戻すよう、王太子殿下から正式な命令書が届いております」


 ――え?


 私を、連れ戻す?


 思わず息を呑んだ。


 もう、あの国には戻らないと決めたはずなのに。


 かつて私を必要ないと切り捨てた人たちが、今さら何の用なのだろう。


 不安で指先が冷たくなった、そのとき。


 ラインハルト様が、私の手をしっかりと握り直した。


「……そうか」


 その声から、先ほどまでの優しさが消えていた。


 冷静で、鋭く、辺境の軍を率いる総司令官の声。


「使者には待機するよう伝えなさい」


「はっ!」


「それから、王太子殿下に返書を用意する」


 ラインハルト様は私を見つめた。


 その琥珀色の瞳には、少しの迷いもなかった。


「エルマは、私が守る」


 彼は静かに、けれどはっきりと言い切った。


「本人の意思を無視して連れ戻すことなど、決してさせない」


 その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなった。


 私はもう、一人ではない。


 私には、おこげたちがいて。


 そして、何より――。


「……ありがとうございます、ラインハルト様」


 彼は私の手の甲にそっと口づけた。


「礼には及ばないよ。私はただ、大切な人を守りたいだけだから」


 大切な人。


 その言葉が、何度も胸の中で響いた。


 窓辺では、三匹のフェザーウサギたちが気持ちよさそうに寝息を立てている。


 おこげも、ラインハルト様の胸元ですやすやと眠ったままだ。


 どうやら、もふもふたちはまだ知らないらしい。


 この穏やかな午後のあとに、私の運命を大きく変える出来事が待ち受けていることを――。


 そして、ラインハルト様が私のために、王太子殿下へどんな返事をするつもりなのかも。


 ……けれど、一つだけ確かなことがある。


 私はもう、あの国で一人ぼっちだった頃の私ではないのだ。

第5話をお読みいただき、ありがとうございます!


今回は、おこげたちのお昼寝姿と、エルマに甘えたいラインハルト様をお届けしました♪


普段は冷静で威厳たっぷりのラインハルト様ですが、エルマの前では少しだけ甘えん坊になってしまうところが可愛いですよね♡


おこげに嫉妬してしまう姿も、エルマのそばを離れたくないという本音も、彼女を大切に思っているからこそ……。


そして、ついに動き出した王都。

エルマを手放したはずの王太子が、今になって彼女を連れ戻そうとしています。


けれど、今のエルマには、彼女を守ってくれる人がいます。


果たしてラインハルト様は、王太子からの命令にどう立ち向かうのでしょうか?

そして、エルマの気持ちはこれからどう変化していくのでしょうか……?


次回は、王都からの使者をめぐって新たな展開が待っています!


引き続き、エルマともふもふたち、そして甘々なラインハルト様を見守っていただけたら嬉しいです♡


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

ブックマークや評価、ご感想などもいただけると、とても励みになります。


次回もどうぞお楽しみに!

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