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第4話 甘いミルククッキーと、初めての『あーん』

もふもふたちのために用意された、夢のようなプレイルーム!

おこげとフェザーウサギの赤ちゃんたちは、新しい遊び場に大はしゃぎです♪


そして、お礼にとエルマが焼いたのは、甘いミルククッキー。

喜んでくれるもふもふたちを眺めていたはずが、なぜかラインハルト様からも可愛らしいおねだりが……!?


もふもふに癒やされ、辺境伯様の甘い溺愛にドキドキする第4話。

どうぞお楽しみください!

「うわあ……!」


 翌朝、ラインハルト様に案内されて隣の部屋の扉を開けた瞬間、私はあまりの光景に歓声を上げてしまった。


 昨日までただの広い客間だったそこは、完璧な『もふもふ保育園(プレイルーム)』へと生まれ変わっていた。


 床一面には、転んでも痛くないような最高級のふかふかした緑の絨毯が敷き詰められ、部屋の隅にはちいさな木製のアスレチックや、神獣たちのための特製ベッドが並んでいる。


「きゅふっ!」


「ぷぃっ、ぷぃっ!」


 私の足元から、おこげと三匹のフェザーウサギの赤ちゃんたちが、競い合うようにして部屋の中へと飛び出していった。


 おこげはアスレチックの坂をぽてぽてと登り始め、子ウサギたちは短い羽をパタパタさせながら絨毯の上を転がり回っている。みんな、新しい遊び場が嬉しくてたまらないみたいだ。


「気に入ってくれたようでよかった。一晩で突貫工事をさせた甲斐があったよ」

 背後で、ラインハルト様が満足そうに微笑んでいた。一晩で部屋を丸ごと改築してしまうなんて、辺境伯領の財力と行動力は本当に凄まじい。


「ラインハルト様、本当にありがとうございます。何か、私にできるお礼はありませんか……?」


 これほど良くしてもらっているのに、ただ甘えっぱなしでは申し訳ない。そう思って見上げると、ラインハルト様は少しだけ考えるように顎に手を当て、それから悪戯っぽく目を細めた。


「それなら、君の手料理を食べてみたいなお礼として」


 手料理。そんなものでいいのだろうか。

 私はすぐにお屋敷の広大な厨房をお借りすることにした。料理長の料理人さんたちが「聖女様がクッキーを!?」と色めき立つ中、私は持ってきた材料を丁寧にボウルで混ぜ合わせる。


 おこげたちのための、甘いミルククッキー。

 小さな口でも食べられるように、生地をちいさく、まるく形作っていく。オーブンに入れて少し待つと、厨房の中にふんわりと甘いバターとミルクの香ばしい匂いが立ち込め始めた。


 サクサクに焼き上がったクッキーをお皿に載せてプレイルームに戻ると、もふもふ達が一斉に動きを止めた。


「きゅ、きゅふふぅ!」


『いい匂い!』


『おいしいのきたー!』


 おこげと子ウサギたちが、猛烈な勢いで私の足元に集まってくる。


 私がクッキーを小さく割って差し出すと、おこげは短い両手で器用にそれを挟み込み、「もにゅ、もにゅ、ハグハグ」と小さな口を必死に動かして食べ始めた。子ウサギたちも、羽をふりふりさせながら、サクサクと美味しそうに音を立てている。


「ふふ、みんなお行儀よく食べるんだよ」

 そのもふもふ達の幸せそうな姿を眺めているだけで、胸の奥がぽかぽかと満たされていく。


「実に良い匂いだね。おこげたちが羨ましくなるほどだ」

 いつの間にか、お仕事の一区切りを終えたラインハルト様が部屋に入ってきていた。


 彼は私の隣に腰掛け、小さな手で必死にクッキーを頬張るおこげの頭を優しく小突く。


「あ、ラインハルト様。あの、人間用にも少し甘さを控えめにして焼いたものがあるんです。食べますか?」


 私はお皿の端に分けておいた、綺麗なきつね色のクッキーを指でつまんで差し出そうとした。お皿ごと渡すつもりだったのだけれど――。


 ラインハルト様は、私の手をそっと大きな手で包み込み、動きを止めた。

 美しい銀髪の間から覗く、深い琥珀色の瞳が、真っ直ぐに私を見つめる。

「エルマ。私にも、そのクッキーを『あーん』で食べさせてくれないか?」


「え、ええっ!?」


 耳を疑った。

 普段は数万の軍勢を率いる冷徹な総司令官であるはずのラインハルト様が、まるでおねだりをする子供のような、甘く優しい表情で私を見つめている。


「だめだろうか。これだけ見事なお部屋をプレゼントしたお礼なのだが」

「う、うう……」


 そんな顔で言われたら、断れるはずがない。

 私は心臓が壊れそうなほどドクドクと鳴るのを必死に抑えながら、震える指先で小さなクッキーを彼の唇へと近づけた。


 ラインハルト様は嬉しそうに目を細め、私の指先が少し触れるくらいの距離で、優しくクッキーを口に含んだ。


「……素晴らしい。今まで食べたどんな宮廷菓子よりも美味しいよ、エルマ」


 サクサクと音を立てながら、彼は私の指先をそっと引き寄せ、手の甲に優しくキスを落とした。


 私の顔は、完全に限界を迎えて真っ赤に爆発してしまう。

「きゅふぅ?」


 足元では、おこげがクッキーの粉を口の周りにつけたまま、不思議そうに私たちを見上げていた。


 本物の聖女を失ったせいで、元の国のお城では、国獣である聖ラマがストレスで大暴走して王太子の高級な寝室をめちゃくちゃに踏み荒らし、大パニックになっているらしいけれど。


 この甘いミルクの香りと、ラインハルト様の過保護な体温に包まれたプレイルームの中では、本当にどうでもいいお話だった。

第4話をお読みいただき、ありがとうございます!


今回は、おこげたちのための「もふもふ保育園」が完成しました♪

小さなアスレチックで遊ぶ姿や、ミルククッキーを一生懸命ほおばる姿……想像するだけで、こちらまで幸せな気持ちになりますね。


そして、普段は冷静で頼もしいラインハルト様の、まさかの「あーん」のおねだり!

エルマにだけ見せる甘い表情と、さりげない手の甲へのキスに、エルマの心臓も大忙しです♡


一方、元の国では聖ラマが大暴れして大変なことに……。

けれど、エルマにはもう、もふもふたちと優しく甘やかしてくれるラインハルト様がいます。


これからエルマがどんな幸せを手に入れていくのか、引き続き見守っていただけたら嬉しいです!


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

よろしければ、ブックマークや評価、ご感想などもいただけると励みになります♪


次回もどうぞお楽しみに!

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