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第2話 温かいココアと、ふかふかの特等席

お仕事や学校、毎日の生活でクタクタに疲れた夜、「お布団の中で読んで、とにかくストレスゼロでホッと癒やされるお話」を届けたくて執筆しています。


【毎日21時】に、心がぽかぽか温かくなる優しい日常をガシガシ更新していきますので、これからのエルマともふもふ神獣の物語を、どうぞお気軽に楽しんでいってください!

白く、柔らかな天国の中に、私はいた。


「……ん」


 ゆっくりと目を覚ますと、視界に飛び込んできたのは、見たこともないほど高価なシルクの天蓋(てんがい)だった。


 私が今まで暮らしていた公爵家の、カビ臭くて冷たい地下の自室とは何もかもが違う。体を包み込んでいる羽毛布団は、まるで本物の雲の上に寝転んでいるかのようにふかふかで、驚くほど温かかった。


「きゅふぅ……」

すぐ隣から、小さくて可愛らしい寝息が聞こえた。


 布団をそっとめくると、昨日雨の路地裏で拾った真っ白な神獣の赤ん坊が、私の脇腹にぴったりと体を寄せ、丸くなって眠っていた。額の小さなお角(つの)が、私のパジャマにちょこんと当たっていて愛おしい。


 その時、部屋の大きな木の扉が、静かにノックされた。

「失礼するよ。エルマ、気分はどうかな?」


 入ってきたのは、この邸宅の主であり、隣国の最高位武官である銀髪の辺境伯、ラインハルト様だった。


 朝の木漏れ日を浴びたその姿は、彫刻のように整った顔立ちがさらに際立ち、思わず息を呑むほど美しかった。その手には、湯気が立ち上る銀のトレイが載せられている。


「まだ体が冷えていると思ってね。朝食を用意させた。私の特製ココアもあるよ」


「あ、ありがとうございます……」


 ベッドの横のテーブルに並べられたのは、黄金色に焼けた大麦のパンと、湯気が立ち上る濃厚なコーンポタージュ。そして、甘く香ばしい匂いを放つ特製ココアだった。


「きゅ、きゅふっ!」


 甘い匂いにつられて、お布団からぽふっと飛び出してきた白い毛玉――おこげ(と、心の中で名付けた)が、机の上のスープをじっと見つめて短い尻尾をちぎれんばかりに激しく振っている。


「ふふ、食いしん坊な神様だ。エルマ、まずはスープから温まるといい」

 ラインハルト様に促され、私は木のスプーンでスープをすくい、口に運んだ。


「……っ」


 甘い。そして、もの凄く、美味しい。

 トウモロコシの濃厚な甘みとバターのコクが、昨日まで凍りついていた私の胃袋へ、じんわりと優しい温もりとなって染み渡っていく。


 焼きたてのパンをちぎってスープに浸し、ハグハグと頬張る。これまでの辛かったこと、寂しかったことが、その美味しさと一緒にすべて溶けていくようだった。


「美味しいです……本当に」


「それはよかった。君がそんな風に嬉しそうに食べてくれると、この部屋をプロデュースした甲斐があるというものだよ」


 ラインハルト様は優しく目を細め、私の口元についたスープの跡を、白いハンカチでそっと拭ってくれた。そのあまりの過保護さに、私の顔が一気に赤くなる。


 食後、私はラインハルト様から「神獣のケア用」にと手渡された、最高級の猪毛のブラシを手に持っていた。


「きゅ〜……」

 おこげを膝の上に載せ、そのシルクのようになめらかな真っ白な毛並みを、優しくブラッシングしてあげる。


 シュッ、シュッ、と小気味いい音が響くたび、おこげは気持ちよさそうに目を細め、短い両手(のようなもの)をパタパタさせて喜んだ。


私が耳の後ろのあたりを優しく撫でると、完全に脳を溶かしたような顔で「きゅふぅ……」と小さく鳴いて、私の膝の上でとろけるように丸くなった。


 その様子を横で見ていたラインハルト様が、驚いたように目を見張る。

「……本当に驚きだ。神獣といえば、気性が激しく、人間の王ですら容易に近づけない孤高の存在のはずなんだが。君の腕の中では、ただの甘えん坊な


綿飴(わたあめ)のようだな」


 ラインハルト様は私の隣に腰掛け、私の頭をそっと大きな手で撫でた。

「エルマ。君のその力は、国を救うほどの偉大な奇跡だ。


それを『無能』とバカにして追い出した前の国は、よほど目が曇っていたのだろう。……もう安心していい。私の目の届く場所で、君とおこげを、世界一幸せに甘やかしてあげるからね」


「ラインハルト様……」

 その銀色の瞳に真っ直ぐ見つめられ、私の胸の奥がぽかぽかと温かくなる。


 私を「ハズレ」と罵った元の国が、今頃聖女の結界を失って大パニックになっていることなんて、今の私にはどうでもよかった。


 私の、最高に過保護で、最高にもふもふな新生活は、まだ始まったばかり。

2話をご覧いただきありがとうございました!

贅沢な朝食をバクバク食べるエルマちゃんと、ブラッシングされて脳がとろけているおこげの姿に少しでも癒されていただけたら幸いです。


ラインハルト様の過保護な溺愛もこれから加速していきます……!


「おこげのブラッシング、私もやりたい!」「ラインハルト様が優しすぎてキュンとした」と思ってくださった方は、ぜひページ下部の【ブックマーク】や【☆評価】で応援をよろしくお願いします!


おこげに高級なおやつをあげるパワーになります!





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