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店主にお代を払って、スゥは宿に向かった。
通りを行きしな、街を見回した。
通りに面した建物も、離れたところにある住宅も、どれも一階建てで、幅が広い。太い木を柱にして、家の壁は、粘土と石で補強してあった。建物の周りには、人の背丈より高い石垣が築かれていた。強い風に負けないような工夫が、そこかしこに見受けられる。それに、この街の風習だろう、玄関先には、巨大な足をかたどった石像が置いてあった。
スゥは宿に荷物を置いて、ウエストポーチに小物をまとめ、ふたたび宿を出た。
近々、その嵐とやらが来るらしい。
お祭りで騒がしくなる前に、あの足を観察しておきたかった。
その足は、大河から少し離れた、丘なりになった土地の上にあった。
足の周りには草ひとつなく、むき出し地面が広がっている。
見ると、ところどころ、短い杭が打たれていた。杭でつくられた円は、巨大な足を囲んでいる。それより内側には入らないように、ということらしい。
スゥは、肉眼と双眼鏡で、円の外から、巨大な足を観察した。
ぱつぱつに張った肌には、皺ひとつ見つからない。吹きさらしの土地にあるせいか、風にとばされた石や草がぶつかって、いくらかすり傷ができている。目立った傷はそれくらいで、人の手はまったく入っていなかった。
あっというまに調査が終わる。
「せっかくだから、もう少し滞在しよっか」
「どういう風の吹き回しだ?」
ブーツが言った。
「いつもなら、足の調査が終わったら、すぐ街を出るくせに」
「風祭りっていうのがあるんでしょ。たまにはゆっくり、お祭りの空気にひたるのも、悪くないかなって」
スゥは、目で見たものを手帳に残して、大河の方に向かった。
河原には、人だかりができていた。
空は心地よく晴れていて、吹く風も温かい。絶好の行楽日和で、子ども連れの家族や、仲睦まじいカップルが、川沿いの道を歩いていた。子どもたちの中には、上裸になって、大河のほとりを泳いでいる子も見つかった。
行楽中の人だかりの向こうに、なにやら作業している男たちがいた。
だれもかれも、力に自信がありそうな体つきをしている。
彼らはみんな、重そうな袋を持って、大河の縁に、袋を敷きつめていた。
通りがかった男性に、スゥは話しかけた。
「なにをしているんですか?」
「土嚢を積んでるんだ」
男性は言った。
「風祭りのときには、決まって、大雨が降るんだ。土嚢を積んでおかないと、もし河が増水したら、街に被害が出ちゃうからね」
「なるほど」
スゥは空を見上げた。
快晴の空に、雨の気配はない。
嵐が来るという南を見ても、大河の水平線に、怪しい色は見つからない。
こんなにおだやかなのに、ほんとうに嵐が来るのだろうか。
スゥはしばし、河原のそばの芝生に座って、河川敷のにぎわいをながめていた。




