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 ——午後。

 守衛服でやってきたフェレアは、この前とは別のお店に、スゥを案内した。

 フェレアが選ぶ服は、やっぱり、丈の短いものばかりだった。

 スゥは、店の商品を見回して、気づいた。この店には、丈の短い服しか置いていない。そういえば、このあいだフェレアに連れていかれた店にも、そういった服しか置いてなかったような……

 スゥはたずねた。

「今朝、フェレア、長めのトレーニングウェアを着てなかった? わたし、ああいうのでいいんだけど」

 フェレアは、「ああ」と、なにやら答えづらそうにうなって、

「あれは、その……よその街から、取り寄せてもらったんです。この街にも、行商人の方がいらっしゃいますから、その人にお願いして」

「この街にはないってこと?」

「そうですね」

 フェレアは言った。

「この街の服飾店は、どこも、美脚コンテストを意識しています。わたしが生まれるずっと前から、そうなので……街の文化なんです」

 文化と言われてしまえば、スゥに返す言葉はない。

 スゥは今日もまた、フェレアの着せ替え人形になることにした。


 結局、あれこれ試着しただけで、スゥは一着も買わなかった。

「いいんですか?」

 とフェレア。

「コンテスト用に買った服は、返さなくていいんですよ。余所の街から来た参加者さんが、この街の服をお土産に持って帰れば、街の宣伝にもなりますし」

「わたしはいいよ」

 スゥは首を横に振って、

「帰る街も、服を見せたい人もいないから。それに、荷物が増えたら、歩きづらくなっちゃうでしょ。旅の荷物は、最小限に」

「なるほどです」

 フェレアは、それ以上スゥのことは聞かず、「次に行きましょう」と、店を出ようとした。

「待って——」

 スゥは、フェレアを呼び止めて、

「フェレアの服も、選んでいい?」

「え?」

 フェレアは、ぎこちなく止まって、振り向いた。

 きょとんとした顔。

 それでいて、嫌なものを踏んでしまったときのように、どこか頬が引きつって見える。

 スゥは、気安い笑顔を浮かべて、

「ほら、わたしばっかり、選んでもらってるでしょ。せっかくだから、フェレアの服も選ばせてほしいなって」

「あぁ……」

 フェレアは、ばつが悪そうに頬をかいて、

「えっと、自分は、いいです。ほしい服もありませんし。それに、わたしはコンテストに出ないので、お金がかかっちゃいます」

「わたしが払ってあげる。服を選んでもらったお礼もしたいし」

「……あ、それじゃあ!」

 フェレアはスゥの手を引いて、

「じつは、行ってみたいお店があったんです。でも、ひとりじゃ行く機会がなくて……そこでおごってもらっていいですか?」

 言いつつ、フェレアはスゥの手を引いて、店の外に出ていた。

 スゥは手を引かれながら、「いいよ」と答えて、フェレアの後についていった。


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