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4

 ——街中のブティックにて。

「ねえ……」

 スゥは、落ち着かない体を試着室に隠して、カーテンの隙間から顔を出した。

「もうちょっと、こう、ちゃんとしたやつない?」

「ちゃんとしたって?」

 フェレアが、よくわかりません、とでも言うように、首をかしげる。

 フェレアの選ぶ服は、どれも、袖や丈が短かった。

 上着の袖が短いだけなら、まだいい。

 問題は、下に穿くものだ。ズボンの裾は、股下までしかない。スカートはひざ丈だが、側面にスリットが入っていて、少し歩くだけで、スゥの白い太ももが、ちらちらとのぞいてしまう。

 スゥは言った。

「もっと、こう、丈の長いやつじゃダメ? ほら、スキニー系のズボンなら、肌を見せなくても、足のラインはわかるし」

「いけません!」

 フェレアは拳に力をこめて、

「わたしの大事な推し足なんです。せっかくみなさんに見てもらうのに、服で隠しちゃったら、意味ないじゃないですか」

「でも、これ、なんかいろいろ見えそうで」

「そういうものです」

 と、フェレアは新しい服を探しに、店の奥に行ってしまう。

 スゥは、靴置き場のトレッキングブーツを見つめて、

「助けて!」

「おれに言ったって、しょうがねえだろ」

 ブーツは、退屈そうな声で、

「このあいだ、似たようなの着てたじゃねえか。修道服ってやつ?」

「あれは仕事着。あと、あのエロ神父が見て満足するためのもの。しかもあれ、裾のところがちょっと切れてただけだし」

「おれからしたら、どれもおんなじに見えるけどな」

「……それじゃあ」

 スゥは目を細めて、

「ブーツなんて下駄と同じでしょ。って言われたら、どう思う?」

「どこのどいつだ、そんなこと言うのは。そいつの頭、いますぐ蹴り飛ばしてきてくれ」

「そういうこと、わかる?」

 なるほどな、と、ブーツはだまってしまった。


 ひとしきりブティックで買い物をすませると、フェレアは次に、アクセサリーショップに案内した。ここでもまた、フェレアがあれやこれやとアクセサリーを手にとって、お気に入りの人形さながらに、スゥの首や足に、似合いそうなものをつけていった。

 フェレアに言われるがまま、スゥは、銀色のアンクレットを買った。

 ちなみに、スゥは今日、一度もお金を払っていない。あの眼鏡の男性が言っていたように、コンテスト出場者は、服もアクセサリーも、すべて、タダでもらえるそうだ。

 スゥが店を出るとき、

「がんばってください!」

 どの店員も、笑顔でスゥを見送った。

 それにどう応じればいいのかわからず、スゥは苦笑いを返すばかりだった。


 フェレアとは、待ち合わせた公園で別れた。

「コンテストまでは時間があります。新しいアクセサリーを買ったり、街を散策したり、自由に過ごしてください。わたしはたいてい詰め所にいるので、困ったことがあれば、いつでもいらっしゃってください」

 そう言って、フェレアは広場を出ていった。


 スゥは重い足取りで、ホテルまでもどってきた。

 部屋のドアノブに、布の袋がかけてあった。シャツも下着も、キレイに洗濯されていて、袋を取るだけで、袋の中から、洗剤のやわらかい香りがした。

 部屋に入るなり、スゥは買い物袋と布袋を、床に放り投げて、ベッドに倒れこんだ。

「……つかれた」

 いつもは平気で長い距離を歩くのに、今日はいつもの倍、疲れた。

 頭と心の疲れが、そのまま足にきている——足取りの悪い泥道を歩いたあとのような、ずっしりとした重みが、太ももとふくらはぎに、のしかかっている。

 たくさん歩いて汗をかいている。

 シャワーのひとつでも浴びないと。

 でも、もう、動きたくないなあ……

 なんて思っていたら、いつのまにか、眠っていた。


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