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転生したおじさん、いきなり放り込まれた戦場で生き延びたい  作者: なごやかたろう
変わりゆく日々と、消えた痕跡

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第3話 生きる力を――孤児院に広がる学びの輪

狩りが習慣になり始めた頃、ラースはふと、

孤児院の子供たちの“ある弱点”に気づいた。


(……みんな、数が苦手だ)


食事の配分。

薪の本数。

洗濯物の数。

畑の収穫量。


どれも生活に必要なことなのに、子供たちは「なんとなく」でやっていた。


(……これじゃ、外に出たとき困る)


胸の奥に、“教えなきゃ”という思いが自然と湧いた。



ある日の午後。

ラースは木の棒を拾い、孤児院の裏庭の土の上に線を引いた。


「みんな、ちょっと集まって」


ミーナ、トム、レオ、エマ、そして他の子供たちも興味津々で集まってくる。


「今日はね、数の数え方を教えるよ」

「か、数……?」

「なんでそんなの……」

「でも、ちょっと面白そう!」


ラースは土に「1」と書き、その横に小石を置いた。


「これが“1”。小石がひとつだから“1”。じゃあ、これが二つなら?」

「“2”!」

「そうそう」


子供たちの目が輝き始める。

ラースは続けた。


「じゃあ、1と1を合わせると?」

「……2?」

「そう、正解」

「じゃあ、2と1は?」

「3!」

「すごいね!」


子供たちは次々と答え、土の上の数字が増えていく。

ミーナが嬉しそうに言った。


「ラース君、先生みたいだね!」


ラースは照れくさく笑った。


(……先生、か)


胸の奥が少しだけ温かくなる。



ラースの授業は、いつの間にか孤児院の日課になっていた。

小石を使った足し算

木の枝を使った引き算

畑の収穫量を使った掛け算の基礎

薪の本数で割り算の感覚をつかむ

子供たちは驚くほど早く覚えた。

そして――2年が経つ頃には、孤児院の中に“教える文化”が生まれていた。

年長者が年下に教え、年下がさらに小さな子に教える。


「ここは“3”だよ」

「違うよ、こうやって数えるんだよ」

「わぁ、分かった!」


裏庭には、いつも誰かが数字を書いている。


(……すごいな)


ラースはその光景を見て、胸が熱くなった。



学びが広がると、子供たちの自信も育っていった。

ある日、院長が嬉しそうに言った。


「商店の主人がね、“あの子たちは計算ができるから助かる”って言っていたよ」


商店の丁稚として働く子が増え、孤児院の評判も良くなった。

(……みんな、本当に強くなった)

ラースは誇らしく思った。



だが、その成長を見守る中で、ラースはふとした瞬間に気づく。


(……俺、なんでこんなに“教える”のが自然なんだ?)


10歳の子供が、狩りを教え、計算を教え、

孤児院の生活を改善し、年長者のように振る舞う。


(……俺は、本当に10歳なのか?)


胸の奥に、またひとつ“影”が落ちた。

だがその影は、子供たちの笑顔に溶けていく。


(……今は、これでいい)

ラースは静かにそう思った。

この話で10万字到達。

いつも読ませていただいている方の作品等で100万字超のものありますけど、素直に凄いなと思いました。

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