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転生したおじさん、いきなり放り込まれた戦場で生き延びたい  作者: なごやかたろう
静かな日々と、胸の奥のざわめき

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第4話 夜の孤児院――記憶の影

その夜。

孤児院の寝室には、子供たちの寝息が静かに満ちていた。

トムは豪快ないびきをかき、エマは小さく丸まって眠り、

レオは静かに胸を上下させている。

ラースだけが、目を開けていた。


(……眠れない)


天井を見つめながら、胸の奥に広がるざわつきを抑えられなかった。

昼間の出来事が頭をよぎる。

パンの取り合い。

畑の乾いた土。

子供たちの痩せた腕。

そして――自分の口から自然に出た“大人びた言葉”。


(……俺は、なんであんなことを言ったんだ?)


10歳の子供が言うには不自然な言葉。それを自覚した瞬間、胸がざわついた。



目を閉じると、暗闇の中に“何か”が浮かび上がった。


――セシリア

――シャーリー

――ガルド

――黒い影

――剣

――炎

――叫び声

――血の匂い

――崩れ落ちる誰かの身体

――自分の名前を呼ぶ声


断片的な映像が、まるで夢の残滓のように脳裏をかすめる。


(……誰だ?この人たちは……)


胸が締めつけられるように痛む。

思い出したい。でも、思い出したらいけない気もする。


(……俺は……何を……)


ラースは頭を押さえた。



その時だった。

――カサ……ッ

窓の外から、微かな音がした。

風かと思った。だが、違う。

もっと……生き物の気配に近い。

ラースはそっと身を起こし、窓の外を覗いた。

月明かりに照らされた裏庭。畑の向こうに広がる森。

その森の奥から――“何か”がこちらを見ているような気がした。


(……誰か、いる?)


いや、誰かではない。“何か”。

昼間、畑で感じた違和感。食堂でのざわつき。胸の奥で蠢く記憶の影。

それらが、森の暗闇とひとつに繋がるような感覚。

ラースは小さく息を呑んだ。


(……あの森には、何がある?)


答えは分からない。だが、確かに“呼ばれている”気がした。



ラースは布団に戻った。

眠れないまま、天井を見つめる。


(……明日、森を見に行こう)


その考えが自然に浮かんだ。

まるで、“そうするべきだ”と誰かに言われたように。

胸の奥のざわつきは、もう止まらなかった。

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