表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したおじさん、いきなり放り込まれた戦場で生き延びたい  作者: なごやかたろう
静かな日々と、胸の奥のざわめき

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/130

第2話 孤児たちとの出会い――小さな世界の中で

ミーナに案内されて部屋に荷物を置いたあと、ラースは食堂へ向かった。

昼食の時間が近いらしく、廊下には子供たちの声が響いている。

笑い声、喧嘩の声、走り回る足音。

そのどれもが、ラースには少し眩しく感じられた。

(……こんなに賑やかな場所、久しぶりだな)


いや、“久しぶり”という感覚自体が奇妙だった。

本来なら、ラースはまだ10歳。孤児院の生活は初めてのはずなのに。

胸の奥に、微かなざわつきが生まれる。



食堂に入ると、長い木のテーブルがいくつも並び、子供たちが思い思いに座っていた。

ミーナが手を挙げて言う。


「みんなー! 今日から新しい子が来たよ!ラース君って言うんだ!」


一斉に視線が集まる。

好奇心、警戒、無関心。いろんな目がラースを見ていた。

ラースは少し緊張しながらも、小さく頭を下げた。


「……ラースです。よろしくお願いします」


その瞬間、一番奥の席から声が飛んだ。


「おいミーナ! また男かよ!どうせすぐ泣くんだろ!」


乱暴そうな少年が、パンをかじりながら笑っている。

ミーナはむっとして言い返した。


「バカ言わないでよ!ラース君はそんな子じゃないもん!」


(……まだ何もしてないのに)

ラースは苦笑した。



食堂の隅で、ミーナが同室の子供たちを紹介してくれた。


「この子がトム。ちょっと乱暴だけど、悪い子じゃないよ」


トムは腕を組んでそっぽを向いた。


「ふん。泣き虫じゃなきゃいいけどな」

「こっちはレオ。無口だけど、優しいよ」

レオは静かに会釈した。その目はどこか大人びている。


「最後にエマ。私と同い年で、料理が得意なんだよ!」


エマは恥ずかしそうに笑った。


「よ、よろしくね……ラース君」


ラースは一人ひとりに丁寧に頭を下げた。


(……みんな、いろんな事情を抱えてるんだろうな)

その思考が、10歳の子供にしては少し大人びていることに、

ラース自身はまだ気づいていなかった。



昼食が配られた。

薄いスープと固いパン。それだけ。

子供たちは慣れた様子で食べ始めるが、

ラースはスープを口にした瞬間、眉をひそめた。


(……これじゃ、栄養が足りない)


その考えが浮かんだ瞬間、ラースは自分で驚いた。


(……なんで、そんなことを?俺は……10歳のはずなのに)


ミーナが心配そうに覗き込む。


「ラース君、口に合わなかった?」

「ううん……大丈夫。ただ……みんな、これだけで足りるの?」


ミーナは少し困った顔をした。


「うん……いつもこんな感じだよ。

 たまにお肉が出るけど、ほんとに“たまに”」

(……このままじゃ、みんな体を壊す)


胸の奥に、小さな焦りのようなものが生まれた。



食事が終わると、トムがラースの肩を軽く小突いた。


「おい、新入り。スープ残すなよ。もったいねぇだろ」

「残してないよ」

「ふん。お前、なんか変な顔してたからさ」


ミーナが割って入る。


「トム! いじめないでよ!」

「いじめてねぇよ!ただ……なんか、

 こいつ大人みたいでムカつくんだよ!」


ラースは少し驚いた。

(……大人みたい?)


自分では普通にしているつもりだった。

だが、周囲は敏感に感じ取っていた。

ミーナがラースの手を引いた。


「気にしないで。トムは口が悪いだけだから」


ラースは小さく頷いた。

(……俺、そんなに変だったのかな)

胸の奥の違和感が、少しだけ大きくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ