第4話 集落への同行――回復魔法の手ほどきと、“縁”の再確認
仮面の集団を退けた後、ラースはレオン一行に声をかけた。
「とりあえず、近くの集落まで一緒に行くかい?」
レオンは深く頷いた。
「助かる。正直、心が折れかけていたところだ」
シャーリーはまだ緊張の色を残しながらも、ラースを見つめて小さく微笑んだ。
「……ありがとうございます、ラースさん」
その声は震えていた。だが、確かに“救われた”という感情が滲んでいた。
道中、ガルドが受けた傷が痛むのか、彼は時折顔をしかめていた。
「ガルド、大丈夫か?」
レオンが声をかけると、ガルドは無理に笑ってみせた。
「へっ、これくらいどうってことねぇよ」
だが、その言葉とは裏腹に、傷口からは血が滲んでいた。
シャーリーがそっと近づく。
「ガルドさん、動かないでくださいね」
彼女の手が傷口に触れた瞬間、淡い光がふわりと広がった。
温かく、柔らかく、まるで春の陽だまりのような光。
ガルドの表情が緩む。
「……お嬢、やっぱりすげぇな……」
ラースはその光景を見て、思わず息を呑んだ。
「それって……回復魔法かい?」
シャーリーは少し照れたように頷いた。
「ええ、少しだけですけど……傷くらいなら治せるのですよ」
ラースは迷わず口を開いた。
「……ダメもとでいい。俺にも教えてもらえないか?」
シャーリーは驚いたように目を瞬かせた。
「えっ……?でも、回復魔法は適性がないと……
ほとんどの人は使えないんですよ?」
「それでもいい。試してみたいんだ」
ラースの声は真剣だった。
シャーリーはしばらくラースを見つめ、やがて小さく頷いた。
「……分かりました。皇都に着くまでの間、少しだけ教えますね」
道中、シャーリーはラースに回復魔法の基礎を教えた。
魔力の流し方
温かさのイメージ
“癒す”という意志の持ち方
魔力の循環の感覚
ラースは何度も挑戦した。
だが、最初は何も起きなかった。
「……やっぱり、俺には向いてないのか?」
ラースが苦笑すると、シャーリーは首を横に振った。
「いえ……魔力の流れは感じます。ただ、方向が少し違うだけです」
シャーリーはラースの手をそっと包んだ。
その瞬間、ラースの胸の奥に、不思議な温かさが広がった。
「……こうです。“治したい”って気持ちを、魔力に乗せて……」
ラースは深く息を吸い、もう一度集中した。
指先に意識を向ける。魔力を流す。“癒す”という意志を乗せる。
すると――
ふわり、と。
指先に、淡い光が灯った。
「……っ!」
シャーリーが目を見開いた。
「す、すごい……!こんな短期間で光が出るなんて……
珍しいどころじゃありません……!」
ラースは驚きと同時に、胸の奥に奇妙な感覚を覚えた。
――なぜ、俺は回復魔法が使える?
――なぜ、シャーリーの教えがこんなにしっくりくる?
まるで、“前にも教わったことがある”そんな錯覚すら覚える。
シャーリーもまた、ラースを見つめながら呟いた。
「……やっぱり、ラースさんとは……何か、縁がある気がします」
その言葉に、ラースの胸がわずかに熱くなった。
皇都に到着すると、レオン一行は皇城へ向かう準備を始めた。
ラースは彼らに声をかけた。
「何かあったら声をかけてくれ」
レオンは力強く頷いた。
「もちろんだ。お前さんには借りができたからな」
ガルドは笑い、ミリアとエリスは軽く会釈した。
そして――シャーリーがラースの前に立った。
「……ありがとうございました、ラースさん。また……きっと会えますよね」
ラースは迷わず答えた。
「ああ。必ず」
シャーリーは嬉しそうに微笑み、皇城へ向かうレオンたちの後を追った。
その背中を見送りながら、ラースは胸の奥に静かな決意を宿した。
――次は、絶対に守る。




