第2話 冒険者再スタート・将軍になる準備
冒険者ギルドの扉を押し開けると、前回よりさらに若い顔ぶれが目に入った。
依頼書の貼られた掲示板、武具を磨く冒険者、受付で談笑する人々。
だが、ラースの胸にあるのは、前回までとは違う“焦り”だった。
――黒騎士は矢では死なない。
――火球が効くかどうかも分からない。
――倒すのではなく、カインを戦わせないしかない。
「……時間がない」
受付に向かうと、そこにはやはりミーナがいた。
前回よりさらに幼く見える。1年早い世界だからだ。
「ミーナか?」
ミーナは目を見開いた。
「本当にラースなのかい? 随分久しぶりだね。どこで何してたんだい?」
世間話になりそうだったので、ラースは手短に登録と装備の貸し出しを頼んだ。
「はいはい、ナイフと採取籠ね。あんた、また冒険者になるのかい?」
「……ああ。色々あってな」
こうして、ラースの“524年ループ”が再び始まった。
薬草採取、小型魔物の討伐、村への護衛。
前回までの経験が身体に残っているため、ラースは驚くほどスムーズに依頼をこなした。
1ヶ月もすると、ギルドの掲示板にラースの名前が載る。
【昇格:Cランク】
「おめでとう、ラース。早いねぇ」
ミーナが笑う。
だが、ラースの胸は晴れなかった。
――将軍になるには、セシリア姫の信頼が必要だ。
――そのためには、早く姫と接触しなければならない。
「……どうやって姫に会う……?」
ラースは南方へ向かった。
セシリア姫は南の国境付近で視察や指揮を行うことが多い。
前回もその流れで護衛依頼に遭遇した。
ならば――
南方で活動し続ければ、姫と早く接触できるかもしれない。
そう考えたラースは、南方の村々を拠点に依頼をこなしながら、姫の動向を探った。
だが――
「姫様? 最近は王都に戻られてるって話だよ」
「南方にはしばらく来てないらしいぞ」
「視察は延期になったって聞いたが……」
どれだけ探しても、セシリア姫の姿は見つからなかった。
「……運命は、そう簡単には変わらないか」
焦りが胸を締め付ける。
季節が巡り、ラースは南方での活動を続けた。
魔法の鍛錬も怠らない。
アイスランス、火球、マナ放出の威力と精度は上がり、
冒険者としての実力は確実に伸びていた。
だが――セシリア姫とは一度も会えなかった。
2年半。長い時間が過ぎた。
「……結局、同じ流れに戻るのか」
ラースは苦笑した。
努力しても、運命の流れは強固で、簡単には変わらない。
結局、ラースは前回と同じ護衛依頼を受けることになった。
【神聖皇国との国境近くの村までの護衛】
依頼主を無事に送り届け、帰路につく。
森の馬車道。木々の間から差し込む光。風が草を揺らす音。
そして――
後方から砂埃が舞い上がる。
豪華な馬車。護衛の騎馬隊。黒づくめの部隊。
「……来たな」
ラースは馬を走らせながら、指先にマナを集めた。
「今回は……絶対に逃さない」
セシリア姫に会うために。
将軍になるために。
カインを黒騎士と戦わせないために。
ラースは馬を加速させた。




