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転生したおじさん、いきなり放り込まれた戦場で生き延びたい  作者: なごやかたろう
抗えぬ運命と戦略の岐路

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第1話 524年で目覚める。黒騎士の“異常性”に気づくラース

――胸を貫かれた瞬間。


焼けるような痛みと、肺の奥で何かが潰れるような感覚。

視界が赤く染まり、世界が遠ざかっていく。


「……っくはっ……!」


ラースは跳ね起きた。

喉が焼けるように痛い。

胸に手を当てると、そこには傷一つない。

息を荒げながら、ラースはしばらく空を見つめた。


「……また、戻ったのか……」


だが、今回は違う。

胸の奥に、これまでとは異なる“恐怖”が残っていた。

黒騎士の額に矢を撃ち込んだ。確かに刺さった。

だが――


倒れなかった。


「……あれは……人間じゃない……」


矢が刺さっても怯まない。血も流れない。痛みを感じている様子もない。

火球が効くかどうかは分からない。

だが、矢が効かないという事実だけで十分だった。


「……どうやって倒すんだ、あんな化け物……」


思考が暗い渦に引きずり込まれそうになる。

だが、ラースは頭を振った。


「……まずは現状把握だ」


いつものボロい服。

金はない。

腹は減っている。


路地裏から出て、日雇い仕事を探しながら今が何年かを確認する。


「王国歴524年だよ」

「……524年……」


前回より1年早い。つまり、ループは526 → 525 → 今回は524と遡っている。


ラースは歩きながら、これまでのループを整理した。

最初の5回は兵士になり、訓練し、戦場に立ち、カインが黒騎士に殺され、

王国軍が崩れ、グスマンが死に、ラースも死んだ。

兵士として強くなっても、結果は変わらなかった。


そして前回と前々回は冒険者ルート。

セシリア姫に抜擢され、カインと共に戦い、将軍としてのカインを支えた。


だが――


あの戦いでカインは黒騎士に突っ込み、

鉄仮面を弾き飛ばした瞬間、「アドル……」と呟いて動きを止め、胸を貫かれた。

ラースも同じく殺された。

「……2回続けて同じ結末……か」

胸の奥に重い絶望が沈む。



ラースは立ち止まり、空を見上げた。

矢が刺さっても倒れない。痛みを感じていない。血も流れない。


「……あれは、倒せる相手じゃない」


火球が効くかどうかは分からない。

だが、矢が効かないという事実だけで、黒騎士の“異常性”は十分すぎるほど理解できた。


「……なら、どうする……?」


ラースは拳を握った。


黒騎士を倒せないなら、カインを戦わせなければいい。


「……俺が将軍になるしかないのか」


カインの代わりに軍を率い、黒騎士とカインを接触させない。

それしか道がない。


腹が鳴った。


「……まずは、冒険者になって日銭を稼ぐか」


兵士になる気はない。冒険者として稼ぎながら、情報収集と鍛錬を進めるしかない。


ラースは冒険者ギルドへ向かった。

受付には、前回よりさらに若く見えるミーナがいた。


「ミーナか?」


ミーナは目を見開いた。


「本当にラースなのかい? 随分久しぶりだね。どこで何してたんだい?」


世間話になりそうだったので、ラースは手短に登録と装備の貸し出しを頼んだ。


こうして、ラースの“524年ループ”が始まった。

今回は、黒騎士を倒すのではなく、カインを戦わせないためのループ。

ラースは静かに拳を握った。


「……今度こそ、変えてみせる」

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