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転生したおじさん、いきなり放り込まれた戦場で生き延びたい  作者: なごやかたろう
山麓の秘湯と再会の余韻

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第3話 車軸の修理――ラースの手際と静かな集中

護衛たちが交代で足湯で疲れを癒し、

セシリアが雨除け小屋で休んでいる間、

ラースは山の斜面へ向かって歩き出した。


手には斧。

目当ては、車軸の代わりになる太い丸太だ。


(……この辺りなら、ちょうどいい木があるはず)


木の幹を叩き、 音で中身の詰まり具合を確かめる。


コン、コン……

「……これだな」


ラースは斧を振り下ろし、 木を切り倒す。

その動きは無駄がなく、 まるで何度も繰り返してきた作業のように滑らかだった。

切り出した丸太を肩に担ぎ、 秘湯へ戻る。

護衛の一人がその姿を見て、 思わず声を漏らした。


「……あの少年、すごいな。  あの太さを一人で……?」


別の護衛が頷く。


「戦いも強い上に、あれだけの手際…… 本当に冒険者なのか?」


ラースは聞こえていないふりをしながら、 丸太を地面に置き、加工を始めた。

斧で荒く形を整え、 ナイフで細部を削り、 馬車の車軸に合うように調整していく。

木屑が舞い、 ラースの指先は迷いなく動く。


(……こういう作業、嫌いじゃないんだよな)


集中している時のラースは、 戦場とは違う静かな鋭さを纏っていた。



加工の様子を見ていた護衛が、 感心したように声をかける。


「ラース殿……  見事な腕前だな。まるで職人のようだ」


ラースは肩をすくめて笑った。


「秘湯の小屋も自分で作ったからね。こういうの、慣れてるんだ」

「小屋まで……?  いやはや、恐れ入った」


護衛たちは互いに顔を見合わせ、 ラースへの評価をさらに高めていった。



雨除け小屋の中で足湯をしていたセシリアは、

湯気の向こうで丸太を削るラースの姿を見つめていた。

斧を振るう時の力強さ。

細部を削る時の繊細さ。

護衛たちの言葉に照れたように笑う横顔。


(……あの時より、ずっと……大人っぽくなってる)


胸の奥が、 ほんの少しだけ熱くなる。

エルナはその視線に気づき、 静かに微笑んだ。


(セシリア様……やはり、気になるのですね)



丸太の加工を終えると、 ラースは再び柵の外へ向かった。


「ラースさん、またどこへ?」 エルナが声をかける。

「鳴子の追加だよ。  念のため、もう少し範囲を広げておく」


ラースは木の枝と縄を使い、 手際よく鳴子を設置していく。

カラカラ…… 風に揺れる音が、静かな警戒の証となる。

護衛の一人が呟いた。


「……本当に、よく気が回る男だ」

「戦いもできて、器用で、気遣いもできる……  ああいうのを“頼れる”って言うんだろうな」


セシリアはその言葉に、 小さく頷いた。


(……本当に、そう思う)



ラースが加工した丸太を抱えて戻ると、 エルナが一歩前に出た。

その表情は、 侍女としての冷静さと、 主を守る者としての決意が混ざっていた。


「ラースさん。お願いがあります」


ラースは丸太を下ろし、 首を傾げる。


「何かな?」


エルナは深く頭を下げた。


「王都までの道中……  どうか、私たちの護衛に加わっていただけませんか」


護衛たちも疲弊しており、 馬車も壊れている。

仮面の者が再び現れる可能性もある。

その判断は、 侍女として当然のものだった。

ラースは少し驚いたが、 すぐに柔らかく笑った。


「いいよ。どうせ王都に戻るついでだし」


エルナは安堵の息をつき、 深く頭を下げた。


「……ありがとうございます。セリア様を……どうか、よろしくお願いします」


ラースは照れたように頭をかいた。


「任せて」


その言葉を聞いたセシリアは、 胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。


(……また、助けられてしまう)


湯気の中で、 彼女の表情はほんの少しだけ緩んだ。

転生したおじさん、いきなり放り込まれた戦場で生き延びたい、

本日5/7 04-07時更新で瞬間的にランクインしました。

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