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ハズレ召喚だと笑われた白いまんじゅう、実は《錬金釜》持ちの最強相棒でした  作者: ヨグー
第一章 ハズレ召喚? 白いまんじゅうが現れた日

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ぺたりと現れた白いまんじゅう

「リク・アルス」


 神官に名を呼ばれて、

 僕はびくっと肩を揺らした。


 ついに来た。


 そう思った瞬間、

 急に喉の奥が

 からからに乾いた気がした。


「リク」


 ミオが小さな声で呼ぶ。


 振り向くと、

 ミオは肩の上のルゥと一緒に

 やさしく笑っていた。


「大丈夫だよ」


「う、うん」


 ちゃんと返事をしたつもりだったけど、

 少し情けない声になった気がする。


 その隣で、

 ガルドが腕を組んだまま言った。


「ほら、行ってこいよ。

 どんなのが来るか、

 楽しみにしてるからな」


 その言葉が励ましなのか、

 ちょっと面白がってるのかは

 よく分からなかったけれど、

 少しだけ肩の力が抜けた。


 僕は小さく息を吸って、

 祭壇の前へ歩き出す。


 一歩進むごとに、

 石の床がやけに冷たく感じた。


 周りの視線が

 また一斉に集まってくる。


 ガルドのときは期待の目。


 ミオのときは感嘆の目。


 じゃあ、

 僕のときはどうなんだろう。


 そんなことを考えてしまって、

 余計に足が重くなる。


「召喚陣の中央へ」


 神官に言われて、

 僕は白い紋様の上に立った。


 足元に描かれた線が、

 うっすらと光を帯びる。


 祭壇の中は静かだった。


 さっきまで聞こえていた

 小さなざわめきすら、

 今はほとんどない。


 僕は無意識に

 手のひらを握ってしまっていて、

 慌てて指をひらいた。


「手を前へ」


 神官の声が落ちる。


 僕は言われた通り、

 そっと手を差し出した。


 どくん、と

 心臓が大きく鳴った。


 何が来るんだろう。


 強い召喚獣かな。


 それとも、

 家の手伝いに向いたような

 補助型だろうか。


 できれば、

 みんなに変な顔をされない子がいい。


 そんな願いを抱いた瞬間、

 召喚陣の光が一気に強くなった。


 白い光だった。


 ガルドのときのような

 重たく力強い光でもなく、

 ミオのときのような

 やさしく透き通る光でもない。


 ただ、

 まっしろで。


 目が開けていられないくらい

 まぶしい光だった。


 思わず僕は

 ぎゅっと目を細める。


 空気がふるえた気がした。


 次の瞬間。


 ぺたり。


 妙に気の抜けた音がした。


「……え?」


 思わず、

 僕の口から声が漏れた。


 光がすっと引いていく。


 そして、

 召喚陣の真ん中にいたものを見て、

 僕はしばらく動けなかった。


 小さい。


 とにかく小さい。


 しかも丸い。


 それは、

 手のひらに乗りそうなくらいの

 白い生き物だった。


 つやつやした白い体。


 ころんとした輪郭。


 ちょこんとついた短い足。


 丸くて黒い目。


 ふくらんだ体つきは、

 見ようによっては

 生き物というより、

 白いおまんじゅうみたいに見える。


 いや、

 どう見ても

 まんじゅうっぽかった。


「えっ……?」


 誰かが小さく声をもらす。


「何あれ」


「ちっさ……」


「まんじゅうみたい」


「え、召喚獣?」


 会場のあちこちから、

 困惑した声が上がった。


 子どもたちだけじゃない。


 見守っていた大人たちも、

 思わず顔を見合わせている。


 僕も同じ気持ちだった。


 何これ。


 いや、

 召喚獣なんだろうけど。


 でも、

 こんなの見たことない。


 少なくとも、

 村で見かけるどの召喚獣とも

 全然似ていなかった。


 狼みたいに強そうでもない。


 小鳥みたいにきれいでもない。


 白くて、丸くて、

 小さい。


 ただそれだけが

 やけにはっきりしていた。


 その生き物は、

 きょろ、と周りを見回した。


 それから、

 ゆっくりと僕の方を見る。


 まんまるの目が、

 まっすぐこっちを向いていた。


 その視線に、

 なぜか僕の方が

 どきっとしてしまう。


 するとその白い生き物は、

 小さな口を開いて鳴いた。


「ぷきゅ」


 また、

 なんとも言えない声だった。


 強そうでも、

 かっこよくもない。


 むしろちょっと、

 拍子抜けするくらい

 気の抜けた声だ。


 でもその声が、

 静まり返った召喚殿の中で

 妙にはっきり響いた。


 しん、と

 一瞬だけ沈黙が落ちる。


 僕はその白い生き物を見つめたまま、

 まだ何も言えなかった。


 頭の中が

 うまく追いついていない。


 これが、

 僕の召喚獣。


 本当に?


 目の前の白くて丸い子は、

 そんな僕を気にする様子もなく、

 もう一度ちいさく鳴いた。


「ぷきゅ」


 そして、

 ぺたぺたと短い足で

 召喚陣の上を少しだけ歩く。


 その動きまで、

 びっくりするくらい小さくて、

 会場の空気はますます

 変な沈黙に包まれていった。


 ガルドも、

 さっきまでの得意そうな顔を忘れて

 目を丸くしている。


「おい……。

 何だ、あれ……?」


 ミオも肩の上のルゥと一緒に、

 不思議そうに僕の召喚獣を見つめていた。


「初めて見るかも……」


 僕だって初めて見た。


 いや、

 きっとここにいる誰も

 見たことがないんじゃないかと思う。


 そんな空気だった。


 白い生き物は、

 またきょろきょろと

 周りを見回したあと、

 最後にもう一度だけ僕を見た。


 その目はまんまるで、

 怖がっているようにも見えない。


 むしろ、

 どこかのんびりしている。


 その様子を見ているうちに、

 不思議と少しだけ

 胸の奥の緊張がゆるんだ。


 強そうには見えない。


 立派にも見えない。


 だけど、

 なんだろう。


 この子はこの子で、

 妙に目が離せなかった。


 祭壇の前では、

 ベルナが慌てて

 記録札をめくっている。


 神官も少しだけ

 目を細めて、

 召喚陣の上を見つめていた。


 僕はまだ、

 その場から動けないまま

 白い生き物を見ている。


 するとその子は、

 いきなりぴょんと小さく跳ねた。


「わっ」


 びっくりして

 思わず声が出る。


 でも、

 跳ねた高さはほんの少しで、

 着地もぺたりと軽かった。


 やっぱり、

 強そうには見えない。


 それなのに、

 会場のみんなが

 こんなにざわついているのは、

 たぶん誰も

 正体が分からないからだ。


 召喚獣って、

 もっと見ただけで

 何となく雰囲気が分かるものだと思っていた。


 でもこの子は違う。


 白くて丸いことしか、

 本当に分からない。


 僕の胸が、

 今度は別の意味で

 どきどきしはじめる。


 これは、

 当たりなんだろうか。


 それとも、

 とんでもないハズレなんだろうか。


 答えはまだ出ない。


 ただ、

 次にベルナが何を読み上げるのか。


 それだけが

 やけに怖かった。


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