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ハズレ召喚だと笑われた白いまんじゅう、実は《錬金釜》持ちの最強相棒でした  作者: ヨグー
第二章 肩の上の白い相棒は、今日も笑われる

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先生にもよく分からない能力 1

 ここまでが序盤の導入部分になります。


 少しゆっくりめの立ち上がりでしたが、ここから少しずつ話が動いていきます。

 引き続き見守っていただけたら嬉しいです。


 次の日の朝、僕はポコを肩に乗せて、

 フェルム先生の家へ向かっていた。


 昨日、父さんに言われた言葉が、

 まだ頭の中に残っている。


 何も分からないなら、

 分かるところから。


 それはたぶん、今の僕に

 いちばん必要な考え方だった。


 村の外れにある先生の家は、

 訓練場も兼ねている。


 朝の空気の中に、木剣がぶつかる

 乾いた音が響いていた。


 庭では年上の見習いたちが、

 汗を流しながら動いている。


 木剣を打ち合っている子もいれば、

 土の上に簡単な魔法陣を描いて、

 小さな火を灯す練習をしている子も

 いた。


 火はまだ頼りなくて、ちろちろと

 揺れるだけだ。でも、そういうのも

 ちゃんと訓練なんだろう。


 その横では、水の玉を浮かべようと

 して失敗した子が、靴をぬらして

 慌てていた。


 先生のところは、剣だけじゃなくて

 基礎の魔法も少し教えている。


 戦えるようになるため、というより、

 村で生きていくための力として。


 広い庭の端を通ると、

 何人かの見習いたちが僕の肩を見た。


「あ、あれが昨日の……」

「白いやつだろ」

「ちっちゃいな」


 ひそひそ声は小さかったけれど、

 聞こえないほどではなかった。


 僕は少しだけ背中を縮めそうになる。


 でもその前に、肩の上で

 ポコが小さく鳴いた。


「ぷきゅ」


 大丈夫、と言われたみたいで、

 僕は小さく息をついた。


「うん。行こう、ポコ」


 先生の家の扉を叩く。


「失礼します。

 フェルム先生、いますか」


 中から、すぐに低い声が返ってきた。


「開いてるぞ」


 扉を開けると、部屋の中は

 紙と木の匂いがした。


 壁際には訓練用の木剣や槍。

 棚には村の地図や古い本。

 机の上には、開かれたままの記録帳と、

 魔力灯の小さなランプが置かれている。


 昼間だから灯りはついていないけれど、

 透明な石の芯がかすかに青く見えた。


 机に向かっていたフェルム先生は、

 顔を上げると、僕とポコを見て

 目を細めた。


「来ると思っていた」


「え?」


「昨日の顔を見れば分かる。

 聞きたいことが山ほどある顔だった」


 そう言われて、僕は少しだけ

 気まずくなる。


「……そんなに分かりやすかった

 ですか」


「分かりやすいほうが、

 子どもらしくていい」


 先生は椅子から立ち上がって、

 僕の前まで来た。


 それから、改めてポコを見る。


「この子が《錬金釜》か」


「はい」


「相変わらず、珍しいものを

 引いたな」


 先生はそう言ったけれど、

 笑うような口調ではなかった。


 興味はある。

 けれど、確信はない。


 そんな顔だった。


 僕は思いきって尋ねる。


「先生は、《錬金釜》のこと、

 知っていますか」


 先生は腕を組んで、

 少しだけ考え込んだ。


「正直に言えば、詳しくは知らん」


 その答えは、どこか予想していた

 ものだった。


 それでも胸の奥が、

 ほんの少しだけ沈む。


「やっぱり、そうですよね」


「ただ、名前だけなら

 聞いたことはある」


 先生は棚のほうへ歩いて、

 古い紙束をひとつ引き抜いた。


「昔の記録や、古い職人の話の端に、

 たまに出てくる程度だ」


「どんなふうに、ですか」


「錬金術に関わる力だ、とかな。

 素材を扱う、とかな。

 そのくらいだ」


 先生は紙束をめくる。


 紙は古く、ところどころ端が

 擦り切れている。


「今の時代じゃ、錬金術そのものが

 ほとんど残っていない。

 だから、能力名だけ聞いても

 分かる者は少ないだろうな」


 はっきり言われると、

 かえって変な安心があった。


 知らないのに知ったふりを

 されるより、ずっとよかった。


「……そっか」


 僕が小さくうなずくと、

 先生は少しだけ声をやわらげた。


「落ち込むな。

 分からないことは、試して

 確かめるしかない」


「試す、ですか」


「召喚獣の能力は、最初から全部が

 言葉で分かるわけじゃない。

 使ってみて初めて分かることも多い」


 そう言って、先生は机の引き出しから

 古びた小箱を取り出した。


 ふたを開けると、中には

 小石、乾いた薬草、錆びた釘、

 欠けた鉱石、それから小さな

 火石の欠片まで入っていた。


「授業や訓練で余った端材だ。

 高いものじゃないが、

 試すにはちょうどいい」


 僕は思わず箱の中をのぞきこむ。


「こんなに、いいんですか」


「全部持っていけとは言わん。

 ここで反応を見てみろ」


 先生はそう言って、

 庭へ出るよううながした。


 外へ出ると、見習いたちの視線が

 また集まってくる。


 でも今度は、からかう感じより

 興味のほうが強そうだった。


 先生は庭の片隅、訓練用の丸太台の

 そばにしゃがみこんだ。


「まずは単純な素材からだ。

 石、薬草、金属。

 反応が違うかもしれん」


 僕もその前にしゃがみこみ、

 ポコをそっと地面へ下ろす。


 ポコは土の上にちょこんと座って、

 箱の中身をじっと見た。


「ポコ」


「ぷきゅ」


「一緒に試してみようか」


 ポコは小さく鳴いて、

 いちばん手前にあった灰色の石へ

 とことこと近づいていく。


 そして、前足をちょこんと

 石に触れた。


 その瞬間、白い体の内側に、

 ごく薄い青い線がふわりと走る。


「……っ」


 僕は息をのむ。


 光は強くない。

 けれど確かに、石に触れたところから

 ポコのお腹のあたりへ向かって、

 青い色が流れていった。


 ぽう、と。


 小さな灯がともるみたいに、

 丸いお腹の中心が淡く明るくなる。


「先生、これ……」


「騒ぐな。続きがあるかもしれん」


 低い声に、僕はあわてて口を閉じた。


 ポコは石から前足を離さないまま、

 じっと動かない。


 まるで、何かを確かめている

 みたいだった。


 やがて、こくり、と

 小さく体が揺れる。


 すると石の表面が、ぽろりと

 薄く剥がれ落ちた。


 下から現れたのは、さっきより

 なめらかで、ほんの少しだけ

 青みを帯びた小さな欠片だった。


「不純物を弾いたのか……?」


 先生が驚いたように呟く。


 見習いたちのざわめきが、

 少しだけ大きくなった。


「今、石が変わったぞ」

「ただ触っただけじゃないのか?」

「青く光ったよな……?」


 ポコは「ぷきゅ」とひとつ鳴いて、

 その青い欠片を僕の前へ押し出した。


 ただ石を食べたわけじゃない。

 壊したわけでもない。


 石の中から、使える部分だけを

 選り分けたみたいだった。


 僕は足元の小さな欠片を見つめたまま、

 しばらく言葉を失う。


 《錬金釜》。


 それは本当に、ただ古いだけの

 ハズレ能力なんだろうか。


 先生は腕を組んだまま、

 ポコをじっと見ていた。


「……面白いな」


 その言葉は、独り言みたいに

 小さかった。


 でも僕には、はっきり聞こえた。


「先生」


「まだ決めつけるのは早い。

 だが少なくとも、この子は

 素材の質を見ている」


 先生は足元の欠片を拾い上げ、

 光にかざした。


「普通の子どもが触っても

 こうはならん。魔道具でもない。

 召喚獣自身の力だ」


 その言い方には、昨日よりずっと

 はっきりしたものがあった。


 僕の胸が、少しだけ熱くなる。


 するとポコは、次に

 乾いた薬草のほうを見た。


 石のときとは違って、

 今度はすぐには触れない。


 少しだけ首をかしげて、

 じっと見つめている。


「反応が違う……?」


 僕が呟くと、先生はうなずいた。


「素材ごとに見え方が違うんだろう。

 続けてみろ」


 ポコが、そっと前足を伸ばす。


 その白い体の内側で、

 また青い線が淡く揺れた。


 今度は、何が起きるんだろう。


 僕は思わず、息を止めた。


 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


 今回は、リクがフェルム先生のもとでポコの力に初めてしっかり向き合う場面でした。

 少しずつですが、物語も動きはじめてきたかなと思います。


 次回からは毎日21時に投稿予定です。

 続きが気になる方は、ブックマーク登録していただけたら嬉しいです。


 良ければ評価、感想などもよろしくお願いします。


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