↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
103/106

第〇〇九七話 乳を吸わせる美少女/王都の宿にて

「それで、ロノウエさんは見つかったの?」

「それが、市民の噂話を聞く程度で得られる情報は少ないので‥‥」

 本日こちらでそのとりまとめについたのは、実働で特にお呼びのなかったナツミだという。

 そこでナツミや探索に当たった他の親衛隊員と話し合ったところ、せっかく人型になれるのだ。ラーゴの許可を得て人間の姿で街に出、人にそれとなく聞いて回ったほうが速いという結論に至る。


 そこで見た目十八位上の成人組ハナコ、ヤスコ、ナミ、ナツミ、ナオコ、クレナイと、どんな姿にも変身できるヤチヨ、幻影の使えるナズムにはその任に当たってもらうことになった。他にも、一時的な支配や記憶操作の能力を持つクミコ、ハッチ、クオレにはカマールの姿で後方支援の任務を与える。タオ側から連絡があったときのため、ミツと残った子供組は待機だ。

 出勤組には不要と固辞されたが、念のためにと盛場に入るのに必要かも知れない、ある程度の軍資金を与えておく。支配・隷属させない程度、魅了や誘導に必要なら軽い吸血も認めた。すでに今夜にも出動を開始するようで、しばしいままでの情報から王都内の盛場の担当会議が行なわれる。

「ところでミツ、その子はなあに?」

 居残りになるナミが訪ねたのは、ミツの連れてきたコウモリだ。

「ええ、実はね‥‥」

 帰り道、赤い色に産まれてくる両足蛇(ディポディーズ)の子を、海外に逃がしてやる計画もミツと煮詰めておいた。

 親衛隊たちから、どうしてそんな骨を折るのかという質問も想定し、いろいろと用意した言い訳はある。だがどうも、ラーゴの言うことには絶対服従らしく、だれからも異論は出ないようだ。彼女たちへ自分が、魔王城(ディアボリオン)で生まれる前から食べられる運命だったので、同類相哀れんだとは、さすがに告げ難い。

 そのついでと言っては失礼だが、タオの友人を救出する計画も話して聞かせた。そしてコウモリは地元を知っている唯一の、生き証人ならぬ、生き証コウモリだと説明する。こちらのほうは、裏社会の実力ある功労者タオとの関係強化につながり、王国の治安をおびやかす悪の組織に一矢報いる作戦だ。

 おそらく納得いってもらえるに違いない。

「クレイはいるかな?」

「あい、ここにいましゅ」

 クレイは幼女サイズで、かさばらないから人型に変わってもらう。

「実は、クレイに作っておいてほしいものがあるんだ。で、これを見てほしいんだけど」

 ラーゴは初めて、以前教わった他人の視界を奪取し、そこに自分の千里眼(プレビジオニス)映像を重ねて見せる、そんな大技を試みる。クレイに両足蛇(ディポディーズ)の一般的な幼体、兄弟の卵の中を見せるまで、しばらく時間を要した。

「この蛇を、作ればいいんしゅか?」

「一緒に、卵の殻もできるかな?」

 粘土で作ったものは、クレイが術をかけると固くなるらしい。もちろん釜で焼いても固くはなるが、卵の中の両足蛇(ディポディーズ)の幼体は半生で、とお願いした。

「もちろんでしゅ。絶対作り物だと気づかれないものを、作っておきましゅね」

「頼むよ。よろしくね」

 一方ミツたちは、コウモリと情報を交換する。さすがに吸血鬼(サングィスガ)なので、なんの問題もなく会話は成立するみたいだが、ラーゴはコウモリのキーキーという鳴き声にしか聞こえない。両足蛇(ディポディーズ)同様、ナオコに吸血してもらう必要があるのだ。

 しかし、さきほどクレイの視界を奪取した瞬間は、人の話す声として聞こえていたはずと思う。ということは、ウイプリーの視界を利用すれば、彼女たちの眷族なみに意思が疎通可能なコウモリの言葉を、理解できるかも知れない。そう思って今度は、ミツの視界を借りる形で見てみる。

「 ── そんなことで、町の偉い人が集まったところへ賊が進入、飼い主オートンさまも、アッシを逃がすのが精一杯でした。アッシはなにもなく放された場合は、自宅へ帰るようしつけられていたのです。しかし自宅も同様に賊の押し入ったけはいが認められ、家族のみなさんも軟禁状態。とても家には入れません。そこで緊急連絡先のタオさまのところへ、はるばる飛んできたのです」

 なるほど。遠隔地を透視したとき、透視先の場所の音が聞こえるように、他人の視界を通じて見れば、当人が認識している音を拾ってくれるらしい。

「じゃあ、あちらへ行けば案内はできる?」

 ミツが、コウモリに尋ねる。

「もちろんでございます、アッシの飼い主オートンさまの自宅、勤め先ほか、よく行かれる場所はだいたい把握しております」

 これで、だいたいの道案内にはこと欠かないとはいえ、現在オートンがどうしているかはわからない。行ったことも無い地の、一面識もない人はさすがに、千里眼(プレビジオニス)でも探せないようだ。

「ワラワがひとっ走り飛んで行って、調べて来ましょうか?」

 ハヤミが言う。たしかに彼女の高速移動なら、今晩中に調べて帰って来られるだろうが、単機能のウイプリーを単身、敵地に送り込むのは不安だ。遠すぎて、何か起こったときに対応に時間がかかり、万が一手遅れになってもいけない。

「どちらにしても、あちらで両足蛇(ディポディーズ)の卵を、信頼できる人に預ける必要があるしね」

 そこでラゴンが共和国へ行くこと。そして、今のミリンの様子では、十中八九ボコボの港町や魔王島(ディアボライル)跡、少なくともハーンナン公領へ動く可能性が大きい。そこであらゆるパターンを想定し、三班に編成を分けておき、いざというときに備えて準備してもらうよう指示をする。


 まず王都に残る居残り組は、タオに話したラゴンたちの、郷土から連れてきた知り合いという設定で、借りる事務所跡に住まわせよう。働ける年齢(とし)の者はキャディの手伝いをして、身分証を獲得すればよい。子供は ── まあ別に問題ないと考えた。強靭のヤスコ(二十三)、テレパスのナオコ(十九)、一時支配のクミコ(十七)、偽りの命(アスフェクシア)のナミ(二十二)、眷族償還(けんぞくしょうかん)のヤヨイ(九)、短時間復帰のハツナ(十四)、そして王城にいる聖耐性能力のクロス(十三)といったところか。現状はまとめ役になっているテレパスのナオコを中心の体制にした。ただ今は元気がないようだが、そもそもリーダーシップのあったというヤスコには、本来の力の出せる体制を構築しておいたつもりだ。頭脳派らしいクロスが、後方支援にあたってくれるだろう。


 そしてクラサビ組は、ラーゴが動いたときについて行くメンバーだ。場合によっては殿下を守り、行く先々の諜報活動などが、メインになるに違いない。なにしろストーカーのごとく、いつも君を見ている宣言までしてしまったのだから。血潜りのクレナイ(十八)、強壮のナツミ(二十)、不屈の精神のナナコ(十四)、変身のヤチヨ(十二)、幻影のナズム(十五)、血液治癒のナオミ(四)、鎮静・(こわ)(いろ)のナゴミ(零)

 最後はミツ組、ラゴンやコウモリと、共和国へ乗り込む面々だ。苦手だろうが、待っているのは修羅場(しゅらば)であろうと思われる。動物操作のハイジ(六)、隷属のハッチ(十)、高速移動のハヤミ(八)、粘土細工のクレイ(五)、時間遅延のヤヤ(十一)、記憶操作のクオレ(十六)、剛力のハナコ(二十一)

 班分けが決まると、まずミツのキャディ教室が居残り組に対して始まった。とくにやることのないクラサビ組も、対人接待の後学に一緒に聞き入るなど勉強に余念がない。ミツ組メンバーは、コウモリから共和国の様子を聴いていた。

 すでに日が暮れてしまったが、盛り場などに人の出てくる時間まで少しある。ラゴンの中では、まだ血液の排泄システムを稼働させていないため、そろそろ血液があふれそうな状態だ。すぐにもカマールのまま血液補給タイムにしようと思ったが、それはダメだと断られ、ミツはその理由を説明する。

「人間姿のときの針でないと、肺からの太い血管を吸い上げられないんです。そうですねぇ、できるのはクラサビくらいでしょうか」

 液体として吸収できる量限界もあるが、ミツからなら即魔力の形でもらえるので、そのあたりは問題ないらしい。

 ではミツの傷に垂らしたとき同様、口の中まであふれさせるかと思う。だが効率やスピードを考えると、魔力はミツに与えた血液から、変換されたもので提供することにした。また、キス待ちの行列を作るのはよろしくない。ミツの血液から魔力への変換速度は、クラサビと違って一瞬なので、魔力供給しながら減って行く分を吸血すれば補えるだろう。

 ミツの百里眼(スーパーボヤンス)で肺中の血液残量を見ながら、同時に全員に魔力補給することに落ち着く。その打ち合わせの中でつい、おっぱいから魔力を吸い出すと知ったのがバレてミツには怒られるが、それはまあとごまかせた。それほど徹底して隠す気もなかったようで、さっそく寒いのにトップスを脱ぎ始めるミツ。

 具体的にはこれから、二十匹のカマールに丸出しのおっぱいを吸わせつつ、長時間ベロキスを継続するディープな光景になるだろう。ラーゴは、しばらく退席するのでと告げ、ラゴンの自律モードに後を任せることにした。

 しかし透視能力持ちばかりの中、無駄な話ながらカーテンは閉め、明かりも消してやったほうが、と思うのはラーゴだけだろうか。



 ラゴンとは意識を切断し、ラーゴの視界は飼育小屋に帰ってきた。


 カマールだらけのワイワイ・ハーレムから一転、クラサビとの静かな時間に変わる。退屈そうかと思ったが、今日も種族間感応通信(ウィップライン)は、終日だれかとつながっており、ラゴン側の様子も聞こえたらしい。とはいえ、盛り場検索のほうはいささか(うらや)ましいという。

 公平を期して、クラサビにも吸血してもらったが、キャパの少ないクラサビはすぐお腹いっぱいになった。


 あまり活躍できてないのでお腹はすいていない、と不満そうだ。

「そんなことはないよ、ナナコの起用を提案してもらったのは助かった」

「エヘ、そう? あたいってできる子?」

「もちろん、劣等ウイプリーなんて嘘みたいだよ」

 機嫌がいいので持ち上げておこう。相続者(インヘリター)の智慧で、ほめて育てろという言葉が思い起こされる。そうこうしているとき、クロスから呼び出しがあった。

(─ ナイスタイム)

 飼育小屋内の聖泉(ホリフォンズ)密度は低い。それでもクラサビに頼んで変身して窓を開けてもらい、情報隠蔽で身を隠したまま、聖泉(ホリフォンズ)へ飛び込めば転移できる。さすがに、聖泉(ホリフォンズ)の恵み豊かな坑道(ジェノモケイヴ)には、クラサビを連れて行きにくいし、彼女の魔性に反応する聖霊もいるかも知れない。ラーゴは自分の部屋全体に結界(オービチェ)を張っておき、お留守番をお願いして出かけて行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。