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眩い日の初恋  作者: 松山 さくら


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エピローグ1

「一輝、ナイスストライク」

「まぁ、このくらいは、朝飯前さ。この調子じゃ、二百超えを狙えるかもな」

 雄大におだてられて、片手を頭の後ろに遣って照れ笑いをする一輝。

「次は、翔太の番だよ」

「おっ、翔太、ここは一発、底力を見せてやれ。俺が教えた通りに投げるんだぞ」

 一輝たちのプレッシャーを感じながら投げた一投目。ボールは一番ピンに真正面から当たってしまって、七番ピンと十番ピンを両端に残してスプリットを作った。通称『スネークアイ』……ピンが立っている様子が、蛇の目に見えることからそう名づけられた、スプリットの中でもスペアを取るのが最も難度の高いものだった。

「あぁ……」

「だから、いわんこっちゃない……」

 一輝たちが嘆いているのを聞き流しながら、僕は二投目のボールを放つ。狙うは、右側に残った十番ピン。二本倒すのは僕の力じゃ無理だし、今の僕にできることを考えたら、自然に身体が動いていた。そして、僕が投げたボールは見事、十番ピンに当たってこのフレームは合計九本。一輝が連続して出しているストライクのように華々しさはないけれど、僕にはできることをコツコツと積み重ねるのが合っていそう。

 ワンゲームが終わり、少し休憩する。両隣のレーンでは、家族連れやカップルが、仲睦まじそうに思い思いの時間を過ごしていた。

「それじゃあ、俺たちが翔太を肝試しに連れて行った甲斐があって、翔太はめでたく綾乃と付き合うことができたって訳か」

 どうせ、いつかバレてしまうだろうと思ったから、綾乃と付き合っていることを正直に話すことにしたのだったが、一輝は、綾乃から相談を受けて肝試しを思いついたことが間違っていなかったと、自信を深めた模様だった。でも実際は、雄大が間に入って綾乃の気持ちを僕に話してくれたからこそ、僕は勇気を振り絞って、自分の気持ちを伝えることにしたのだったが、その雄大と目が合って、雄大が「うん」と頷く素振りを見せたので、僕はあえてそのことには触れなかった。

「あぁ、あのときはびっくりしたけど、しばらく経って一輝に車で送ってもらったときに、一輝が僕に『思い出さないか?』って訊いてくれたでしょ。それで、僕、家に帰って中学校の卒業アルバムを見たんだよ。そしたら、綾乃のことを思い出したって訳」

 本当は、あまりの恐怖のあまり、朝まで気を失ってしまって、何かを思い出すどころではなかったのだが、とっさにそう言い繕う。後になってから、アルバムを開いて綾乃のことを思い出したのは本当のことだったが……。

「そうかぁ。それにしても、翔太よくやったな。俺たちの知っている翔太なんて、好きな女の子を目の前にしても、『おはよう』のひとことも言えないんだからさ。初デートには、もちろん翔太の方から誘ったんだよな」

「えっ、あぁ、まあね。道を歩いていたら、たまたま綾乃が向こうから歩いてきて、僕の方から話しかけたんだ。それから、公園のベンチに座って、中学時代の話で盛り上がったって訳」

 嘘だ。いきなり話しかけるのは、僕にはハードルが高すぎた。だから僕は、メッセージカードを書いた。それを綾乃の家のポストに届けた。返事が返ってくるまで、ドキドキしたけれど、返事は次の日の夜にポストに入っていた。「こんな私だけど、よろしくお願いします」という言葉とともに。

 メッセージカードのやりとりは、いつしか手紙のやりとりに代わり、やがて僕たちは再会した。今、僕がいるこのボウリング場で。いい齢した大人が、初デートに選ぶ場所としてはふさわしくないかも知れなないが、卒業してからの青春の時期を、綾乃と一緒に眩い色で染め直すには、ちょうどいい場所だと思った。ここで、他愛ない話をしたり、プリント機でツーショットの写真を撮ったりして、僕たちは学生の頃の二人に戻っていた。


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