表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

7.エピローグ(1)

 私はごく普通の中学生として暮らしている。

 パパとママがいて、当たり前のように「おはよう」と言ってくれる。その当たり前が、泣きたくなるほど嬉しかった。

 土曜日の午後、私は友達と、駅前の図書館に来ていた。

「ねえメグ、探してる本、こっちにありそう」

「今行く」

 友人の声に返事をしながらも、私の目は、閲覧室のテーブルに座る一人の少女に釘付けになっていた。

 明るい栗毛のおかっぱで、前髪をぱつんとそろえている。ロングスカートをはいて、背筋をぴんと伸ばし、一冊の本に夢中になっていた。その姿から、なぜだか目が離せない。

「メグ? どうしたの?」

「ううん、なんでもない」

 その場を離れようとしたけれど、足が動かなかった。

 その瞬間、胸を締め付けるような懐かしさが私の心を貫いた。


 夕暮れの図書館。並木道を急ぐ

 門の先にいた、栗毛の少女……

 さらさら落ちる砂の瓶

 天を衝く無限の塔

 囚われた私の手を握る温かい手

 黄色い大地

 沼に沈んでいく彼女の恐怖に歪んだ顔

 必死で掴んだ、泥だらけの冷たい手

 崩壊する図書館……

 渦巻く無数の本の中で、私を最後まで抱きしめてくれた腕のぬくもり


 魂が叫んでいた。

 声を、かけなくちゃ。

 どうしてそう思うのか分からない。でも、今ここで声をかけなかったら、私はきっと、一生後悔する。そんな衝動が私の背中を押した。

 私は「先に行って」と友人に言うと、少女のテーブルへと向かった。一歩近づくごとに、心臓の音が大きくなる。

「あの……」

 少女が、ゆっくりと顔を上げた。いかにも賢そうな、くりくりした大きな瞳が、驚いたように私を見つめている。

「その本、面白いですか?」

 私の言葉に、彼女は一瞬きょとんとした後、ふわりと花が咲くように微笑んだ。

「ええ、すごく」

 その笑顔を見た瞬間、分かった気がした。私たちは、出会うべくして出会ったのだと。運命なんかじゃない。私のシリアルナンバーが、彼女を選んだのだと。

「私、メグミ。メグって呼んで」

「わたしはアシュリン。アッシュでいいわ」

 すっと差し出された手を私は固く握った。


 図書館からの帰り道、一羽の黒い鳥が私の目の前に降りてきた。口に手紙をくわえている。私は手を伸ばして手紙を受け取り、ゆっくりと開いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ