表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
8/16

⑧私の「家族」。パート1

なんて洗礼(せんれい)かしら?

202号室(ごうしつ)の中に入って思いました。


廊下(ろうか)を渡って直ぐのリビングルームの床には様々な物が散乱(さんらん)しています。


でも不思議(ふしぎ)と歩くのに不自由(ふじゆう)しません。


足の()み場が小さな水たまりのようにできています。

そこを渡って行くと大抵(たいてい)目的地(もくてきち)に着くことが出来ました。

手洗(てあら)いの前まで、各部屋(かくへや)のドアの前まで、キッチンのガスコンロやシンクの前まで。


人が行く(ところ)に道はできるのね。

私は変なところで感動(かんどう)してしまいました。


まずお(さら)を洗わなくちゃ。


人生は「食事(しょくじ)」から始まるのよ。


(あか)ちゃん見てみなさい。

()いてばかりじゃ生きて行かれないから

ミルクを()むわ。


それと同じ。


炊事場(すいじば)(ととの)()をおこし

(なか)を満たし、人は歩きだす。


()に行くにしろ

オフィスに行くにしろ。


それに(なに)かしていないと

緊張(きんちょう)でどうにかなりそうだわ。


私の買った「夫」はとても素敵(すてき)な人でした。

年甲斐(としがい)もなくドキドキしてしまいます。


()が合うと

何を話していいか(あたま)が真っ白になるので

左脳(さのう)ばかりが働きついついしゃべり過ぎてしまいました。


子どもたちも(もう)(ぶん)ありません。


利発(りはつ)そうな(いち)(かが)やく一輝(かずき)お兄ちゃん。

よく考え一歩(いっぽ)引いて私と関わって来る印象(いんしょう)でした。


シャイボーイなのね。


言葉数(ことばかず)が少なく、それがまた思慮深(しりょぶか)く感じさせていました。


お兄ちゃんの目は私によく()ています。


とても(うれ)しいわ。


そして(しゅん)くん。

キュートアグレッションを起こしてしまいそうです。


(しゅん)という漢字(かんじ)栄養士(えいようし)の私には好ましく感じられました。

(しゅん)」は人を元気にしてくれますから。


この世界は本来(ほんらい)よく出来ているんでしょう。


一生物(いちせいぶつ)である「ヒト」は「(しゅん)」の食物(しょくもつ)とともに生きているんだと思います。


(しゅん)くんは私をママではなくおばちゃんと呼びます。

そして自分のママは死んじゃったと教えてくれました。


私の買った「(おっと)」や「一輝(かずき)お兄ちゃん」は

きちんと私向けに調整(ちょうせい)されています。

(しゅん)くん」はまだ(おさな)いし調整(ちょうせい)(むずか)しかったのでしょう。


どこから連れてこられ

どのように商品(しょうひん)として調整(ちょうせい)されているとか

私が気に()むことじゃない。


1億円も出したのよ。

あれこれ詮索(せんさく)したら(そん)


(わずらわ)しいことは1億円で全て免除(めんじょ)されたわ。

買った「家族(かぞく)」を楽しまなくては。


(しゅん)君に何を言われても私は平気(へいき)

だって可愛(かわい)いもの。


こんなに大きな大福餅(だいふく)ほっぺの可愛(かわい)(しゅん)君。

お顔もお目目(めめ)もまん(まる)

出会ってしまったら手離(てばな)せないわ。


「家族」は昨日、檜洞丸(ひのきぼらまる)縦走(じゅううそう)したと銀縁(ぎんぶち)さんから聞いていました。


私は剱岳(つるぎだけ)をテーマにした山岳(さんがく)小説がきっかけで

山の本をよく読んでいた時期(じき)があります。

ですから山について多少(たしょう)知識(ちしき)がありました。


栄養士(えいようし)ですから当然(とうぜん)

行動食(こうどうしょく))や下山飯(げざんめし)について興味(きょうみ)がいきます。

どの本も楽しく()ませてもらいました。


そして実際(じっさい)に山を登ったりはしませんでしたが

小説に出て来る山の地図(ちず)(なが)めて色々と想像(そうぞう)したものです。


品のある(やつ)(たけ)、絵のような富士山(ふじ)()でる丹沢(たんざわ)、切り立ち雄々(おお)しい北アルプス、花咲(はなさ)(あで)やかな(みなみ)アルプス。


まるで山それぞれに人格(じんかく)存在(そんざい)するかのように感じときめきました。


下山飯(げざんめし)について聞いたついでに

好き(きら)いについても聞いてみました。


パパはインゲンが(きら)い。

野菜は食べるのにインゲンだけどうしても無理(むり)なんて。

食感(しょっかん)かしら。


お兄ちゃんはヨーグルトが苦手(にがて)

(にお)いダメなんですって。


(しゅん)君は野菜がぜーんぶイヤ。

断固(だんこ)として言っていたから

食べさせようとしたら手強(てごわ)そうね。


家を片付けた後、

私は生まれて初めてマックに行きました。


ハンバーガーのいい匂い、紙袋の音、

ハッピーセットについてくるおもちゃ。

パパとママが笑って

2人の子どもは目を輝かしている。


子どもの頃、テレビCMで見た(あこが)れの世界です。


パパとお兄ちゃんは二段重ねのバーガーとサラダ、飲み物はそれぞれアイスコーヒーとコーラ。


(しゅん)くんはハッピーセット。

私もハッピーセット。

おまけのミニカーがほしいと(しゅん)くんにせがまれたんです。


パパは健康アプリに食べたものを記録(きろく)していました。


ジムにも通っているみたいだからセルフコントロールはバッチリ。

やっぱり山に登る男は(ちが)うわね。


お兄ちゃんも野菜好き。

子どもが好きなフライドポテトではなくサラダを選択(せんたく)したとき感動を覚えてしまいました。


2人の食生活には問題がなさそう。


問題は(しゅん)くんね。


セットはサラダではなくフライドポテト。

自分のハンバーガーにレタスとトマトが(はさ)んでいないか確かめてから食べていました。


これは指導(しどう)してあげなくてはいけない。


でもバンズをそっとはずす仕草(しぐさ)があまりにも可愛(かわい)くて今回は許します。


(しゅん)くんが食べるものが気になって

私もセットはフライドポテトにしました。


塩味が()いていておいしい。


「ポテト時間が経つと不味(まず)くなるよ。」

お兄ちゃんが教えてくれました。


出来たてマジックね。


初めてきたマックは家族と楽しい時間を過ごせるお店でした。


昼食がすむと子どもたちは公園へ。

私とパパは買い出しへ。


パパがクレジットカードで支払い

パパが買い物袋を持ってくれました。


また年甲斐(としがい)もなくキュンときます。


「ありがとう。」

「うん、ああ。」

何でもないことのように返事が返ってきました。


幸せだわ。


やぁね。

人に何かをやってもらった瞬間(とき)に「幸せ」を感じるなんて。


でもいいの。

1億円も支払ったのだから

どこでどう「幸せ」を感じようと私の勝手(かって)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ