2話 本能
努力は報われるという魔法は本当に存在しているのか?
どれだけ努力しても、届かない人間がいる。
いっそ出会わない方が…。
俺も勇者ともっと早く出会っていれば…。
出会うのがあまりにも遅かった…。
勇者との出会いは17歳…。
その時はまだ遅くない、頑張れば俺だって勇者になれると本気で思っていた。
そう、努力さえすれば誰でも俺にだってトップになれるのだと…。
人生を賭け、燃やし続け、ただがむしゃらに誰よりも努力した。
しかし現実は残酷だった…。
いや、残酷にしたいだけか…。
あの子も…きっと…勇者が持つ過酷な側面を考えたら…。
あの子は11歳か…。
自分の人生を賭けて証明してしまった絶望が根底にあるのが分かっているのに…。
誰よりも分かっているはずなのに、あのキラキラを見てしまったら…。
自分が諦めた理由を、現実が残酷だったから、と環境のせいにしたい自分と、本当はもっとやれたのではないか?と、俺はまだ、夢から完全に逃げ切れてさえいないのかもしれない…。
逃げ切ることさえできていないのか…。
それらすべての、NOを、あの日、見たあの子の輝きが…遅すぎることはない。また、そう思ってしまう。
今さらあんな過酷な世界に、足を踏み入れさせていいのか…。
それでも…!
自分が出会えなかった本物の才能、あるいは自分にはなかった何か、を見てしまった─
叶
………
……
…
———
<森の公園>
ジョンは森の道をランニングしている。
水晶板の声「─連続誘拐のニュースでした。続きまして国土級巨石落としの魔王…」
ガサガサ…
ジョン「ヒィッ!」
森の茂みからミッケが飛び出した。
七匹の猫がミッケの後を追う。
学校での伏し目がちなミッケではない生き生きとした表情。
夢中で猫とじゃれ回っているミッケ。
ミッケの手には棒。
棒の先にヒラヒラを付け猫と追いかけっこしている。
その顔は笑顔で目が輝き、実に楽しそうに逃げている。
ミッケは人間なのに猫のようにしなやかで、掴みどころがなく、かつ誰よりも楽しそうに逃げ、森を飛び回っている。
ジョン「!!」
(あの子、あんな表情するんだ…それにあの表現…!あの時のキラキラ…!!俺はあのキラキラにやられその道に進もうと…!!)
ミッケ「ネコちゃーん♪猫ちゃーん♫ねこちゃーん♬…」
ミッケは自分を中心にグルグル回る。
ミッケの手に持っているヒラヒラを追いかけ猫はミッケの周りを回る。
ジョン(このスピン…!)
ミッケ「ニャンコ王国ばんじゃい♫」
片膝をつきヒラヒラ付いている棒を突き出しピタッと止まる。
ミッケとジョン目が合う。
青ざめるミッケ。
ミッケ
「……」
ジョン
「……」
ミッケはぎこちなく180度ターン。
ミッケ
「ぎにゃ~!!」
ミッケは顔を真っ赤にして飛ぶように逃げ去って行った。
ジョンは拳を握りその姿を見つめていた。
………
……
…
———
視界の上下に黒。
長く伸びた髪、いままでの戦いで負った幾多の傷がある、まだあどけなさ残っている少し成長したミッケの顔。
ミッケ
「ああ…この一太刀こんなギリギリで避けれた…あ、髪の毛切れちゃった…あんなに怖かった…のに…♪」
ミッケの目には敵の一閃がスローモーションのように見えている。
その表情は瞳孔が開き熱った表情。
その瞳孔は三毛猫の瞳とシンクロしている。
ギリギリで躱せば躱すほど脳内のある物質でリミットストッパーが外れる。
強心臓ではないので些細な事でドキドキがフルスロットルで止まらなくなり脳はもちろん全身全霊にその血が行き渡る。
いままでの戦いで負った幾多の顔の傷跡の一つ、頬の傷をかきながら歪な鎌を振るった。
その白い一閃の先、氷の中に─
———
パリィン…
———
続く
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