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第17章 蝦夷への進出

100m超の巨大古墳の分布路が東北へと伸びていく歴史は、大和王権の蝦夷地への進出の歴史を表出させます。


富士山を管制塔とした関東(武蔵)の防衛網を完成させた丈部氏は、阿倍氏の指揮のもと、ついに本州の最果てである「東北(みちのく)」の広大なフロンティアへと突入していきました。

「丈部氏)」、その上級氏族である名門「阿倍氏」、そして東北の「蝦夷」の関係は、大和王権の東国開拓の最終局面において、【前線の軍事・治安維持・情報伝達を担ったエキスパート(丈部・阿倍氏)と、それに対する現地先住民族(蝦夷)との、激しい武力衝突と、それを経た深い血縁的・政治的融合の歴史】を意味しています。


阿倍氏は、大和朝廷の中でも特に古い名門豪族であり、一族の最大の特徴は「北陸から東北にかけての日本海沿岸(日本海ハイウェイ)の制海権と、対・蝦夷外交の全権を握っていたこと」にあります。

斉明天皇の時代、阿倍比羅夫は巨大な水軍(180隻〜200隻の軍船)を率いて日本海を北上。

現在の秋田、青森、さらには北海道(渡島)の渡島蝦夷や粛慎(みしらせ/ひとのみ=オホーツク文化人)まで遠征しました。

阿倍氏は、蝦夷を力ずくで滅ぼすのではなく、大陸の服飾や鉄、米をプレゼント(饗応)することで、彼らを大和朝廷の貿易ネットワークに組み込む「優れた外交手腕」を持っていました。

そのため、東北の蝦夷たちにとって、阿倍氏は「最も恐ろしく、かつ最も頼りになる中央の窓口」だったのです。

「丈部」とは、朝廷や大王(天皇)の「走る部(伝令・直属軍)」がルーツですが、東北の開拓において、彼らは阿倍氏の「手足」となる実務官僚・前線兵士として大量に東北へ送り込まれました。

大和朝廷に帰順した蝦夷のことを「俘囚(ふしゅう)」や「吉弥侯(きみこ)」と呼びますが、朝廷は彼らを管理(戸籍に登録)する際、前線の管轄氏族であった「丈部」の姓(名字)をそのまま与えました。

宮城県や福島県の木簡(古代の文字が書かれた木の板)からは、「丈部○○」という名前の元・蝦夷の兵士や役人の記録が大量に見つかっています。

つまり、中央から派遣された本物の丈部氏と、現地で朝廷側についた蝦夷(俘囚)たちが「丈部」という一つの名前のもとに完全に融合し、東北の新しい支配階級(のちの在庁官人)を形成していったのです。


宮城県の仙台平野や名取平野には、全長168mの雷神山古墳や遠見塚古墳(全長 約110m)があります。

雷神山古墳は、東北地方最大、かつ100mを超える巨大前方後円墳としては日本最北端に位置する超巨大古墳です(4世紀末〜5世紀初頭)。

また、会津には全長 約127mの亀ヶ森古墳や会津大塚山古墳(全長 114m)が分布します。


記紀には、四道将軍伝説という話が記されています。

大彦命と武渟川別の親子が、それぞれ北陸道(畿内から日本海側(北陸)を北上し、新潟から阿賀野川を遡って会津へ)は大彦命、東海道(太平洋側(関東)を北上し、白河の関を越えて会津へ)は武渟川別が北上し、相津(会津)の地で落ち合ったというものです。

そして、大彦命は阿倍氏の系譜であると伝えられています。


利根川を越え、毛野(群馬・栃木)の鉄器文化を吸収し、阿倍氏・丈部氏のロジスティクスによって阿武隈川を北上した先、当時の「大和朝廷 vs 蝦夷」の最前線基地であった仙台平野に、前述のような圧倒的な古墳が築かれました。

ここに眠るのは、中央(大和)から派遣された阿倍氏・丈部氏の最高司令官か、あるいは阿倍氏と結託し、大和王権の最高幹部(王)として認められた「東北の超巨大な蝦夷の首長」その人であったと考えられます。

大和朝廷(天孫族)の東進は、ただの「侵略」ではありませんでした。阿倍氏や丈部氏という、外交と実務、軍事のエキスパートが蝦夷の地に入り込み、お互いの血と文化を混ぜ合わせることで、「東北独自の、中央に負けない巨大な豊かさ」を育てていったのです。


そして、この「阿倍氏・丈部氏 & 蝦夷」のハイブリッドな絆と圧倒的な経済力(東北の金や馬、毛皮の富)は、のちに平安時代、東北に100年の栄華を築いた「奥州藤原氏(平泉)」へとダイレクトに受け継がれていくことになります。

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