アイアンマーチ(前編)
ちょっと音がしますねー
シャツを上げて頂けますか?
鑑賞用BGM (成田空港から):https://www.youtube.com/watch?v=Rh_fkkHtqG8
鑑賞用BGM (十勝川沿い):https://www.youtube.com/watch?v=MhWQmnVQi78
鑑賞BGM (地雷原から):https://www.youtube.com/watch?v=PuoSUVl2bj4&list=PLmnFad50bvd7DRXCK3O270JPjccX7MheO&index=19
~5日後~
~成田空港・専用出国通路~
紺色のビジネススーツに身を包んだスレンダーで背の高い女が、大きなキャリーケースを引いて来る。
そして、その後ろにはデカい楽器ケースを担いだマッチョな男が付いていた。
良いよ!肩にデカい楽器ケース乗ってる!
「レ、レイカさん……!」
「ストッキングが似合いすぎてます……!」
褐色白髪の少女が、女達に向かって手を振る。
なんか目の付け所が微妙にいかがわしいぞ、この子。
「ほうか?」
「それよりも驚く事あるやろ」
「……剃町さんが服を着ている事ですよね……」
「でもイスラエル大使館付きのジャズ音楽家、ってのは幾ら何でも無理があるような……」
「金属探知機にはまずひっかからないとは思うんですけど……」
「いつもはパンツ一丁やからな」
「専用機乗った瞬間、ポージングで服が弾け飛ぶで」
「だからキャリーケースには替えの服も入っているんですね」
「出る時に必要だから……」
検査場の後ろで、サングランスを掛けたミニスカートの女がラウンジを背景に自撮りしていた。
「あの人、本当に陰陽師ですか……?」
「……夜の街での生活が長すぎて、ファッションもあっち系になっとるんや」
「しかも最近妙にテンションが高いんやアイツ……」
「またヤな予感して来たで……」
そして彼女達の後ろから、栗色の髪を纏めたスーツ姿の女性がやって来る。
女性は眼鏡の位置を直して言う。
「ふふ……似合っているな、ケンザキ」
「見ろ、検査員共もお前に釘付けだ」
「私より美人なんて仰山おるやろ……」
「おっと!眼の前におったわ!」
「わざとらしすぎるぞ、ケンザキ」
「今回の目的……忘れていないだろうな?」
「私はな」
「ラウンジに居るあの道化学者、良く見てみぃや」
「ハネムーン気分やで」
レイカの指差す先には金髪の男へ一方的にイチャつく、アラサー学者の姿があった。
「……燃料と金のムダ遣いな気がして来た……」
「同感や」
「ジェットをラブワゴンにされたら堪らんわ」
「自分のアイテムで飛んで行けと思うたわ」
「しかし、私らの身分はホンマにこれでええんか」
レイカはポケットから身分証を取り出す。
そこにはヘブライ語で『大使館付き三等書記官』と書かれていた。
「問題無い」
「形式上貴女達は二等書記官である私の部下だ」
「エスティアは大使館の嘱託職員、クエイドはIDFの武官という事になっている」
「ミレイアは特別プログラムの留学生、葵は企業役員の身分だ」
「何より見た目でのバランスが疑われにくい、か?」
「そうだ」
「ムラートからアイルランド系、日系人まで居る」
「これ以上に入国審査の眼を眩ます組み合わせも無い」
「移民国家だからこそ使える手やな」
「オマエに取っても、私達の存在は好都合やった」
「ふふ。そういう事だ」
エリシェバは微笑みながら、ベルトコンベアに荷物を預けていく。
レイカは神妙な面持ちで彼女へ言う。
「……ヘイリーと連絡が取れん」
「ユンユン達に聞いても見当たらんそうや」
「無意味にリヴァを放っておくような男じゃあらへんが……」
「……死亡の可能性は?」
「……縁起でも無いハナシや」
「アイツは多分生きとる」
「明日にでもひょっこり帰ってくる、そんな感じがするわ」
「……彼は途轍もない功労者だ」
「私も部下達に彼を探させて居る」
「見つけたら直ぐに知らせよう」
「ありがとな」
「今回は金以上の働きをしてくれたからな」
「直に礼が言いたいのもあるんや」
ミレイアは荷物をコンベアに降ろしながら言う。
「普通ならそんな仕事急には受けませんよ……」
「レイカさんって女性にも男性にも慕われてますよね、絶対……」
「私はいっちゃん一筋LOVEや」
「ヘタな誘惑には負けへんで!」
「レイカさんにそこまで言わせるなんて……」
「一体どんな人なんですか?」
レイカはアイカの三角ゾーンに顔を埋めるイチカの画像を、ミレイアに見せる。
覗き見たエリシェバは笑いを堪え切れず、吹き出してしまった。
彼女は柱に顔を向け、震える程笑っていた。
「う、ウケすぎやろ……」
ミレイアはレイカへ言う。
「この茶髪の方は?」
「狂犬世界ランキング一位や」
「老若男女問わず噛みに行く」
「この犬顔の可愛さに騙されたその瞬間、地獄の門をくぐる羽目になる」
「こわい……」
「そうや」
「怖い女多いで、探索者業界は」
レイカはゲートを通過する為、ベルトや時計を外して行く。
女性検査員の熱い視線が、彼女の腹部へと注がれ始める。
「空港も怖いわもう」
「(ふ、不安になってきた……)」
女性検査員は、探知機をレイカの腹部へ当てながら言う。
「ちょっと音がしますねー」
「シャツを上げて頂けますか?」
「無音やろ!」
レイカは仕方なくシャツを出してあげ、引き締まった細い腹部と鼠径部が露わになる。
検査員は鼻を抑えながら、探知機を下腹部へとズラして行く。
「鳴ってます!鳴ってます!」
「超鳴ってます!」
「ここに何か隠してますね!?」
「オマエ……セクハラで訴えてもええか??」
女性検査員は上司に拳骨を食らい、引きずられて行った。
レイカはシャツを仕舞いながら言う。
「ホントになんなんやもう……」
「……!?」
彼女が振り向いた先には、頬を僅かに赤く染めたミレイアが居た。
「だ、大丈夫です」
「み、見てませんから……」
「(き、危険はいつもすぐ側や……!)」
そしてミレイアの検査が終わり、例の男の番となった。
「検査!お願いします!」
「ヤー!!」
高っちゃんは誰に言われるでもなく服を脱ぎ始めた。
そして検査員達の前でポージングを始める。
「し、身体検査の方はだ、大丈夫です!」
「お荷物の方を……」
高っちゃんはクソデカいケースを専用ゲートの前に置いた。
「外交専用!ヤー!」
エリシェバは書類を検査員に見せる。
検査員はPCで書類と申請データを突き合わせ始める。
「……確かにイスラエル大使館から申請を承っております」
「中身は楽器、という事で宜しいですね?」
「ああ」
「手早く頼む」
「明日の18時には要人達の接待がある」
「その時に使うモノだ」
「承知いたしました」
ケースは検査を受ける事なく通過(※1)し、貨物として運び込まれて行く。
「(刀とか銃とかエラいあるからな……)」
「(外交職員に偽装出来て良かったわ)」
そしてレイカ達はエスティア達と合流する。
エスティアは、レイカを指さして言う。
『マフィアが居るぞ』
『スラムでも良く見る連中だ』
『それは似合っている、って事でええんか?』
『いやースマンな!スーツしか無くてな!』
『まぁ、スーツはそれなりのスタイルが無いと似合わんのやけどもな』
『フフッ』
『このっ……!』
「い、いきなり嫌味の応酬……!」
クエイドは《シュガーバターの木(※2)》の空袋を纏めて言う。
『……エスティア』
『お前が選んでくれたこの菓子……美味いな……』
エスティアは頬を膨らませてレイカを睨みつけていたが、彼の言葉で即座に機嫌が治った。
サンキュークエイド。
彼は立ち上がり、歩きながらエリシェバへ言う。
『……カウフマン』
『今ステイツは内戦寸前だ』
『特にNYでは大統領指揮下の部隊と、リベラル派のPMCと民兵……そして警察が対立している』
『慎重に行動しなければ、帰還そのものが危うくなる』
『不測の場合に備えIDFとモサドの特殊部隊は24時間態勢で、自国民保護の為に待機している』
『手が足りなくなれば、お前達にも協力を求めるかもしれない』
『……脱出ルートは?』
『一旦大使館へ避難し、そこからヘリで空港に向かう』
『場合によっては一時的な機場の占拠も行う想定だ』
『それが不可能なら輸送船を用意している』
一行は搭乗ゲートへと向かい始める。
『元デルタの知人から連絡があった』
『……ハワイの駐留艦隊が北海道へ向かっていると』
『それと……この記事だ』
クエイドはある画像をエリシェバに見せる。
エリシェバは眼鏡の位置を直す。
『アーデルハイドが大統領特別広報官に任命された件か……』
『だが当然、この女には裏の仕事が幾つかある』
『ダンジョン攻略やロシア軍との戦いもあの女の仕事だが、それ以外でも活発だ』
『【アイアンマーチ】』
『──!』
『何処で知った、オースティン』
『……かつての同僚が使っていた』
彼女はタブレットを取り出す。
『ネットでは極右の準軍事・民間・有志グループ及び個人が活発にやり取りをしている……』
『サイトの利用者が偶に事件を起こして明るみに出るが、普段の実態は闇の中だ』
『そして、そのプラットフォーム管理は【降下機甲猟兵大隊】が引き継いだと言われている』
『管理者は掴めているのか?』
『……確証は無いが……』
『元アメリカ海軍大尉ヴェルチカ・ジェルジンスキの可能性が高い』
『……この女は頭が良すぎる。野に放ってはいけない類の人間だ』
『軍は何としてでも、彼女を飼い殺しにしておくべきだった……』
『……他に生きる場所が無いならば?』
『だが追い出された……』
『……カウフマン。お前はそこに何かを感じるか?』
『ユダヤ人のお前なら……何か感じると……』
エリシェバは一瞬だけ下を向き、申し訳なさそうに答える。
『……済まない』
『私はその質問には答えられない……』
『(……その言葉こそが、もう答えの様な物だ)』
クエイドは茶髪の女性が映ったペンダントを一瞬だけ開いて閉じ、専用機に乗り込んで行った。
~30分後~
~機内~
「ツマミ食い放題!」
「酒飲み放題や!」
レイカはチーズクラッカーを頬張り、ワインで流し込んで行く。
高っちゃんはスクワットを続けていた。
「レ、レイカさん……!」
「こういう時こそ目一杯楽しまなアカンやろ」
「何時かチビ達と旅行した時、機内で飲むワインの美味しさを語れんで……人として人生を全うしたと言えるか?」
「そ、それは……」
レイカはワインボトルをミレイアの前にチラ付かせた。
「──!」
「い、いや騙されませんよ!?」
「私は未成年ですから!お酒は飲みません!」
「ワハハハ!」
「引っ掛からんかったかー!」
葵はローストビーフを摘まみ、レイカの耳元で囁く。
「レイカレイカ」
「ん?」
「エリちは絶対私達に隠してる事あるよ」
「こんな厚遇してくれるなんて、ウラあると思うのが普通じゃん?」
「さっきさっと調べたんだけど、ニューヨークは相当ヤバい事になってる話だし」
「とは言うても、お前の借金返すにはアイテムゲットして、現地でドルを得るのが一番効率ええし……」
「円は物凄い勢いで下落しとるから今はダメや」
「あのクレイエルってヤバい傭兵隊長が起こしたあの事件、まだ市場に響いとるわ」
「そしてアラスカを経由して、ドイツのラムシュタイン空軍基地まで平然と帰還したと」
「ええ~……!?」
「普通途中で捕まるでしょ、そんなの……」
「ところがな、ラムシュタインでは宿舎へ向けて行軍する連中に歓声まで沸き上がったらしいで」
「向こうさんの日本やアメリカに対する本音が透けて見えるわ」
「というか、向こうでは最早何をやらかそうが、絶対的な英雄なんやろうな……」
「この世界マジ狂い!」
レイカはふとクエイドと目が合う。
彼女は笑顔で手を振る。
『スナイパーさん!』
『こっちに来て女の子達と楽しいお話せんか!?』
アラサーは女の子なのだろうか。
『……エスティアが寝ている間なら』
クエイドはイビキをかいている駄女神に毛布を掛け、レイカ達の近くに座った。
レイカはチーズとナッツの皿を彼に差し出して言う。
『アンタは飲まんのか?』
『……昔は飲んだが、今は避けている』
『それだけ貰おう』
彼はチーズとナッツを掴み、少しずつ食べ始める。
レイカは彼へ言う。
『ヘイリーとは付き合い長いんか?』
『ここ4~5か月だ』
『俺は元上官の斡旋で、ヘイリーはCIAの命令で北海道に来てた』
『アイツCIAやったんか!?』
『……ヘイリーの名誉の為に言っておくが、奴はCIAに人質を取られて止む無く戦場へ戻っただけだ』
『……』
『その人質ってまさか……!』
『リヴァだ』
『【アヴァロンカリバー】の適合者にして、アメリカ最強のアイテム使いだ』
『ヘイリーに会う前は何をしていたか、彼女自身にも分かっていない』
『腹を空かせて、橋の下でうずくまっていた所を助けたと聞いている』
『……壮絶やな』
『……俺の故郷にもそういう人間達は居た』
『いや、一歩間違えれば皆がそうなる』
『アメリカはそういう社会だ』
レイカはサラミを抓み、口の中に放る。
『王道楽土は遥か遠き理想郷、やな……』
『でも……この世に生まれたからには、足掻き抜くしかないんや』
『だから……』
彼女はクエイドに笑いかける。
『楽しくやろうや』
『この世はナニワの夢また夢』
『どうせ夢なら楽しくや』
『夢……』
『せや』
『この世界は誰かが見ている夢かもしれへん』
『実際に【創造主】なんてのも出よったし』
『……ケンザキの夢は何だ?』
『無いんやな、それが』
『それっぽい事は言えるけど、そんな事言っても意味が無いしな』
『強いて言えばお好み焼き屋かな』
クエイドは真面目な顔で考え込み始める。
『オコノミヤキヤ……』
『一体どんな店なんだ……』
『あ、あんまり真剣に考えんでもええで……』
『NYにもあると思うから、連れて行ったるわ』
『……頼む』
『このままでは気になって眠れない』
『(結構オモロイな、コイツ)』
レイカ達の後ろではエリシェバがタブレットを置き、アイマスクを付けた。
~豊頃町~
~十勝川沿い~
レオパルド3とエイブラムスM1E3の隊列が、川沿いの道路を踏み潰して行く。
震動と行軍音に気付いた周辺住民達が、カーテンの隙間から彼等を恐る恐る覗き込んでいた。
『俺等はテメェらの見せモンじゃねーぞ!ジャップ!!』
戦車兵の一人が機関銃を家に向け、威嚇射撃の体勢を取る。
操縦手は言う。
『命令無しでの射撃は懲罰房送りだぜ』
『それかモーンケの野郎が飛んで来て、ベーコンスライスにされるぞ』
どうやらモーンケはベーコン担当になったらしい。
『ハッ!』
『ドローンも飛んでねぇんだ!今は誰も見てねぇよ!』
戦車兵は照準の先に民家を捉える。
彼が発射ボタンを押そうとした、その時だった。
赤い悪魔が照準器越しに、兵士の顔へガンを飛ばしていた。
『誰が見てねぇって?あ??』
『イワン共に付け入る隙を与えてぇのか??』
『ヴェ、ヴェルミーナ……隊長……!!』
『私かヴィットマンの命令無しには、お前はクソも出来ないんだよ』
『ここでブチ撒けてぇのなら止めないけどな』
『それでもまだ観光射撃がしたいか?』
『さ、サー!ノー!!サー!!』
『じゃあ前向いておっ勃ててろ!』
『操縦手!コイツが行軍終わるまで勃起してたか、後で私に教えろ!』
『サー!イエッサー!』
操縦手は笑いながら敬礼した。
ヴェルミーナは戦車から戦車へ跳び移って行き、指揮戦車で双眼鏡を構えようとしていた碧眼の男へ言う。
『戦車兵は全くどうしようもねェ連中ばかりだ!』
『ちゃんと部下を見てろよ!ヴィットマン!』
『お行儀の良い戦車兵なんて、白いカラスぐらいの確率だぜミーナ』
『俺達はいつ死ぬか分からないんだ、キスでも酒盛りでもしたいがままにさせてくれよ(※3)』
『私達は18世紀の軍隊じゃねーぞ!』
『先祖帰りしやがったのか!?ヴィットマン!』
ヴェルミーナはヴィットマンの胸倉を掴んで揺さぶった。
『はははは』
『そうやって直ぐマジになるトコは可愛いな、ミーナ』
『ドイツ流のジョークだ、ジョーク』
『なっ……!』
ヴェルミーナは別の意味で顔が真っ赤になる。
後ろからそれを見ていたクラリスが爆笑する。
『キャハハハハハ!!』
『アンタも混ざってキスして貰ったら!?』
『ちゅっちゅっちゅっ~!❤️』
『ファック!ビッチ!』
『今日の犠牲者1号と2号はお前らだ!!』
ヴェルミーナは【赤い重機関銃】を構え始める。
戦車兵達もビックリな血の気の多さである。
その時、ヴェルチカから全員に通信が入る。
《ミーナ。ヴィットマン。クラリス。モーンケ》
《【スカルレーダー】が敵砲兵部隊の動きをキャッチしました》
《戦闘準備を》
ヴィットマンはニヤつきながら無線機を取り出し、戦車隊に向かって叫ぶ。
《全車散開して、三方から北へ向かって全速前進!!》
レオパルド3戦車の群れが住宅地や畑に雪崩込み、丘陵の向こうへ砲を向け始める。
《斉射!!》
最新鋭戦車部隊の猛烈な火力が、稜線を吹き飛ばした。
《着弾良し!!》
《全車突撃!!遅れた奴は俺のケツを舐めさせるぞ!!》
《対ドローン砲起動!!》
巨大な鋼鉄の猛獣達が、民家や畑を飲み込んで行く。
自爆ドローンやロケット弾が、戦車隊へ襲い掛かり始める。
《ヒャーホーッ!!》
《野郎共!!今日の天気は嵐だ!!》
しかし、精鋭戦車隊の対空装備はドローンを容易に撃ち落とし、その操縦技術はロケット弾の雨を悠々と躱して行く。
《Schneller!! Schneller!!(速く!!より速く!!)》
《Genau wie General Rommel!!(ロンメル将軍の如く!!)》
ヴィットマンはヘルメットの位置を直し、笑いながら機関銃を構えた。
~ロシア軍陣地~
『……連中は狂ってる……』
『たった2個大隊の陣地に対して、60台もの戦車……2万5000人もの兵隊をブチ込んで来た……!』
『……撤退しますか?』
『同時に帯広も捨てる事になりますが……』
『……撤収を始めろ』
『マルファ様からも指示は事前にあった』
『『平野でナチの大軍と戦いそうになったら、旭川へ撤退しろ』と……』
その時、偵察兵から連隊司令部へ連絡が入る。
『て、敵が……!』
『せ、戦車ではありません!バイクに乗った二人組の女が地雷原を……!!』
『何だと!?』
『まさかその女達は……!!』
『今直ぐに逃げるんだ!!』
~地雷原~
『ヒャハハハハハハァ!!!』
『逃がすワケねェだろうが!!!』
『クソイワン共!!』
ゴーグルを下ろしたヴェルミーナは、土煙と硝煙の中を赤いバイクで爆走していく。
『やっぱコレだわ!!』
『私が一番楽しめるのはミーナの背中よ!!』
彼女の後ろから抱き着いていたクラリスも、ゴーグルを着けながら微笑む。
そして対戦車陣地を見て叫ぶ。
『陣地よ!!ミーナ!!』
『ハッ!!』
『この程度、超えられねェワケ無ェだろ!!』
ヴェルミーナは更にアクセルを踏み込み、バイクのマフラーは地獄の悪魔の様な叫び声を上げる。
『用意しろ!クラリス!!』
『キャハハッ!了解よ!』
バイクは盛り土へ向かって加速する。
そして空に向かって飛び上がり、影の下のロシア兵達は呆気に取られていた。
『ミーナ、ミーナ』
『あ?』
振り向いたヴェルミーナの唇に、クラリスは自分の唇を重ね合わせた。
『──!』
『お姉ちゃんの唇セットご馳走さまでした』
『そしてロシア兵の命を頂きよ!』
彼女はバイクから宙返りしながら飛び降りて行く。
『【ルキフグス・レール】二段階起動!!』
『《アイアン・シェイバー》!!』
陣地の中の金属が破裂し、破片となり、遂には巨大な刃となった。
刃は兵士達の身体を容赦なく熱く切り刻んでゆく。
『キャハハハハハ!!』
『お礼に一番オイシイ所はお姉ちゃんにあげるわ!!』
『勝手にキスしやがって……テメェ覚えてろよ!!』
バイクは着地し、十字砲火の中を駆け抜ける。
そしてヴェルミーナはバイクでターンを決めながら、【赤い重機関銃】を構えた。
『ハロー!!そして死にやがれ!!』
赤い曳光弾が鮮烈に、そして苛烈に敵兵と車両を抉って行った。
※1 カルロス・ゴーンの逃亡事件を参照。
※2 ショコラかけサンドもある。取り敢えず食ってみろ。トぶぞ。
※3 フリードリヒ大王はこうおっしゃたらしい。
いつ死ぬか分からない兵隊には好きにさせろ、という意味で。
因みに軍隊からの脱走はガントレット刑か死刑です。
レイカはもうグループの中心人物になりかけてますね。
イチカがヤバいフェロモン放っているだけで、彼女も十分過ぎる程に魅力的なので。
クエイドが信用し掛けているのは凄い事だと思う。
この男は基本的に、あまり人を信用するタイプでは無いので。
スーツがメチャクチャ似合うのは確かだと思ってる。
ストッキングに着目するミレイアはむっつりスケベさんですね。
レイカが危険を感じる程だから、多分ガン見してるかと。
気付かれてないと思って居るのは本人だけだ。
女性検査員の気持ちは痛い程分かる。
退屈な日常に180cmのモデル体型美女が、ビシッとスーツキメてやって来るんだぜ?
しかも顔の火傷とかがアブない雰囲気を放っている癖に、ある種のインテリっぽさもある。
そりゃそのまま一緒にゴートゥーハワイしたくなるって。
行ったのはお説教部屋だけど。
で、検査場では高っちゃん以上に信用出来る存在も居ないと思う。
何も身に付けずとも全く平気な漢なので。
楽器ケースに武器やアイテムを入れたのは、カルロス・ゴーンの脱出オマージュです。
別に方法は幾らでも他にあるんだけども、高っちゃんはジャズ演奏が似合いそうなので。
エリシェバの愛称は『エリち』になりました。
葵のこういうフランクな所は好き。
まぁ、借金返済地獄まで楽しんでおけよ。
閑話休題。
デルタやシールズにもネオナチは浸透しています。
無論政府機関にもです。
アーデルハイドの号令一つで、彼等は動くようになっている。
彼女がトランク大統領の機嫌を取っているのではなく、大統領が彼女の機嫌を取っている状態なんだ。
【降下機甲猟兵大隊】の隊規自体はヴェルミーナの軍時代の部下達が作っているので、かなり統制が効いています。
ヴェルミーナに睨まれて従わない隊員自体、居ないんだけども。
だた、トップと参謀が狂っているので、全体として狂った行動をするだけです。
クラリスのこの狡猾さ、ある意味見習いたい。
どさくさに紛れてキスとか、ヴェルミーナの隙を熟知してないと出来ないけども。
良くやってくれた!
ヴェルミーナは金田ターン出来ます。
アーデルハイドやクラリス達の頼みなら幾らでもやりますが、基本は金を積まれてもやらない。
バイクの腕は一流スタントマン並です。
ここまでお読み下さりありがとうございました。
「面白かった」「カルロス・ゴーン懐かしい」
「エリちの準備がガチすぎる」「サンキュークエイド」「空港検査でも無敵な漢、剃町」
「ミレイアの血が混ざり過ぎてて、ブラジル凄い」「生きててくれヘイリー」
「なんだこのセクハラ検査員」「ここに何か隠してますね!?」「エリち何考えてんだろ」
「騙されませんよ!?」「この世界マジ狂い!」「リヴァの生い立ちが想像以上に壮絶」
「オコノミヤキヤ……」
「いきなりトバしてるな、アーデルハイドの部下達は……」「ベーコン担当は草」
「笑えねぇジョーク」「戦車兵達のガラが悪すぎる」「ちゅっちゅっちゅっ~!❤️」
「生き生きとしてやがるな、ヴィットマン」
「お母さん将軍の読みは流石」「バイク最高!!」「ヴェルミーナカッコ良い」
「クラリスの楽しさが伝わって来る」「相変わらずブッ飛んでるなぁ、この二人は」
「この二人が戦場をバイクで駆け抜けてるの、最高の絵だ」「キス単品、頂きました!」
と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。




