転落し続けるドラッグガンナー
その瞳は天使の様に濡れて、俺の心臓を脱線させやがるんだ。
鑑賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=XiMrrleH_hI
鑑賞BGM(アイカ VS マルファ):https://www.youtube.com/watch?v=hqk5l_VrzrM
~旭川市~
~クレポスト・アサヒカワ内部~
【殺し合いの女神が輝いてやがる……】
【攻撃がかつて無い程綺麗にキマっていくぜ……】
黒ずくめの男は青いネクタイの位置を直し、銃を蹴り上げてイチカへ渡す。
【ローマには最初男しか居なかった……】
【そんなローマがどう発展したか知っているか?】
『……他の集団から女を誘拐して来た』
【正解だ、レティツィア】
【誘拐された女達は、早々に男達へ靡いたらしいぜ】
『……何が言いたいの?』
男は黒い頭部装甲の間から、狂気に満ちた青い瞳を覗かせて言う。
【要は愛なんて現実的な生活の上に成り立つ代物、って事さ】
【そこを超えた感情は、クスリをキメてるよりヤバいってこった】
『……確かにそれは言えているかもしれないけど……』
『貴方と一緒にずっと居たら、貴方に靡くとでも思っている?』
【思っている】
【いや寧ろそうであるべきだ】
【じゃなきゃ、俺の中のヴィットーリオは報われねぇよ】
マルティーニは背後から襲い掛かって来た兵士の顔を、肩越しに蹴り叩く。
【さあ出ようぜ、レティツィア】
【ここのボスが戻ってくる前にな】
イチカは彼の前を通り過ぎ、出口を探し始めた。
【ダハハハッ!無視か!】
【こりゃ時間が掛かりそうだ!】
マルティーニは笑いながら彼女の後を追い掛けた。
~司令室~
『……なんたる不覚!!』
『まさかあの厄介者と会っていたとは……!』
ヴァヴィロフは兵士達に指示を飛ばしながら、床を踏み付けた。
『……どういたしましょうか、大佐』
『無論取り返す』
『パラチェフ達もいずれ戻ってくる』
『私はゲートでマルティーニを待ち伏せする』
『お前達は遠巻きにしてヤツを削れ』
『了解致しました!』
兵士が去った後、ヴァヴィロフはウォーハンマーを取る。
『逃げられると思うな、夢見る中毒者』
『お前は女帝の一番大切な宝を奪おうとしている……』
『その罪は死より重い!』
青い装甲がヴァヴィロフの全身を覆っていく。
【【エゴーリィの戦槌】第三段階起動】
【一体どんな罰が私を待っているのか……楽しみになって来たぞ!!】
~クレポスト・アサヒカワ~
~正門ゲート~
【ここまでだ、イタリアの悪党】
【クリスティナ候補生は女帝の宝だ】
【死んでも返して貰おう】
ウォーハンマーを持ったヴァヴィロフが、イチカとマルティーニの行く手に塞がる。
マルティーニは二挺のブレードガンを、踊るようにゆらりと構えた。
【なァ……お前……】
【上司に恋した事はあるか……?】
【──恋するなど……】
【そんな不敬、到底許されん】
【恋するには……死を賜う程の覚悟が必要な存在だ】
【ダハハハハッ!】
【お前……人生損しているぜ】
【確かに女上司ってのは強情で気が強くて、常にピリついていて……俺等の事を下僕の様に扱う……】
彼はゆっくりと頭を縦に振り始める。
彼の頭と身体がブレて行く。
【だがな……それは虚勢なんだ】
【相手は人間だ。女だ。弱味を見せる時は絶対にある】
【悲しみもすれば、泣きもする……そして……】
【……】
【その瞳は天使の様に濡れて、俺の心臓を脱線させやがるんだ】
マルティーニの姿が残像を伴い、前後左右に分裂していく。
【【ダークブレードガンナー】第三段階起動】
【《生れ付きの転落者》】
大量の彼が並び、同じようにヴァヴィロフへブレードガンを向ける。
【【【俺は絶賛転落中なんだ】】】
【【【12年前からずっと転がり落ち続けている】】】
【【【だが、これ程に気持ち良い事は無いぜ……】】】
そして彼等はイチカの方を振り返る。
【【【レティツィア】】】
【【【お前は一番強くて一番弱い】】】
【【【だから好きだ。だからハマっている】】】
ヴァヴィロフは動揺するイチカを見据える。
装甲の間から光るくすんだ水色の瞳は、まさに【戦槌】の名に相応しい威圧感を放っていた。
【犯罪者の戯れ言に耳を貸すな、クリスティナ候補生】
【栄光と転落……どちらを選べ良いかは自明の理だ】
イチカはシャツを脱ぎ、大きく息を吐く。
『皆……自分勝手な欲望ばかり押し付けて来て……』
『私の意思は何時も無視なんだ』
『だから私が欲しいのなら、私の命令に従って』
『マルティーニ。貴方の血を貰う。その何処までも増え続ける血を……』
【【【レティツィア……!信じてた……!信じていたぜ!!】】】
【【【是非俺の命を使ってくれ!!ダハハハハハハッ!!】】】
彼女はナイフで両腕を切り裂き、血が噴き出る。
歴戦のヴァヴィロフが動揺する。
【い、一体何を……!】
【私が欲しいのなら、その血で以て贖え】
【【防衛魔人の遺伝子】第三段階起動】
【《吸血領域拡大フェーズ1》】
噴き出た血が触手の様に伸び、マルティーニの分裂体を貫いて行く。
分裂体は血を吸われ、次々と倒れては消えて行く。
【【【ダハハハッ……!こりゃあすげぇ……!!】】】
【【【まるで脳が蕩ける様な気持ち良さだ……!!】】】
大量の血がイチカに集まり、服を切り裂き、赤いドレスを象って行く。
彼女の眼から赤い幾何学模様のラインが、身体全体へと走り抜けた。
彼女の真紅の唇が上下し、ヴァヴィロフへと語り掛ける。
【……マルファに伝えて】
【『私に母親は必要無い』と】
【……!!】
【貴方は忠実で有能……】
【それが故に私を逃す気は無いのは分かってる】
【《串刺し女公》】
イチカの足元から血の池が伸び、無数の紅い串がヴァヴィロフを貫こうとする。
【──いきなり串刺しプレイとは……!!】
【何たる素質!!】
ヴァヴィロフは転がって回避しようとしたが、右腕が血の串に貫かれてしまう。
彼は新たなる痛みに目を大きく見開く。
【何という容赦の無さ……!】
【何という美しさと禍々しさ……!】
【そして……何という鮮やかさ……!】
ヴァヴィロフとハンマーは忽ち巨大化し、彼はハンマーを振り回してマルティーニ達を吹き飛ばそうとする。
【《スカーレット・ヴィシェグラード》】
大量の血が空中に集まり、たちまち城壁と化してウォーハンマーを跳ね返した。
そこへ血の壁を内部から突き破り、血の槍を持ったイチカが飛び出して来る。
【──クリスティナ候補生!!】
【貴官はマルファ様が見込んだ以上の逸材だ!!】
ヴァヴィロフは跳んで回避しようとしたが、大量のマルティーニ達が彼の足腰に絡みついて動けなかった。
【《スカーレット・トライデント》】
血の槍が三つ叉に別れ、伸びながらヴァヴィロフの大腿部を貫いた。
彼は痺れる様な鋭く甘い痛みに、絶頂する。
【うおおおおお!!!】
【おおおお……!!!】
【【エゴーリィの戦槌】が泣いて喜んでいる!!!】
【私に欲望を押し付けるのなら……】
【私は対価にその血を奪う!!】
【《ワラキアの三日月》!!】
イチカの両手に血が集まり、巨大な三日月状の紅い刃になる。
二つの紅い刃は装甲ごとヴァヴィロフの身体を斬り上げ、血飛沫がイチカの全身を彩った。
【あ、新しい女帝の誕生に……】
【か、完敗……!】
ヴァヴィロフは歓喜の表情を浮かべ、地響きを上げながら倒れた。
~イチカハウス周辺~
赤い光弾が氷の壁を貫き、マルファは躱しながらハンドガンをアイカへ撃ち込む。
弾はアイカの肘を掠めるが、彼女は正確無比な射線を潜り抜けて行く。
【ほら……喉はここよ】
【噛みついてご覧なさい】
マルファは微笑みながら、自分の喉を指差す。
アイカのナイフが首元へ迫る。
【──所詮は駄犬ね】
アイカの手首が捻られ、彼女は回転させられてしまう。
だが、彼女は上手く着地してマルファの腕を振り払う。
続けてナイフで鋭く斬り掛かっていくが、全て避けられ足を払われた。
【(──飼育員に比べればまだ勝機はありますよ)】
【(アレに比べたら全然お優しいです)】
アイカは後ろ回転しながらナイフを投げ、【M99カリュドーンライフル】の引き金を引く。
弾がマルファの肩を掠めるが、彼女は構わず闇の壁に潜り込む。
【──!(壁に潜り込みやがりましたか)】
アイカは目を閉じ、五感を瞬時に研ぎ澄ます。
【(……下!)】
アイカは自分の喉元に迫る剣を、後ろ宙返りで回避する。
マルファはそのまま彼女へ追撃を掛ける。
【──甘いですよ、ババァ】
アイカは途中で机を踏んで更に大きく宙返りし、屋外に飛び出しながら引き金を引いた。
マルファは【魔勇剣グラデニェッツ】で銃撃を弾く。
【その動きだけは褒めてあげるわ……】
【でも私に噛みつくのであれば、害でしかない狂犬の芸……】
【芸ってのは飼い主の為にするモノですよ】
【不審者には噛みついて当然ですから】
【──Cука(この雌犬が)】
彼女の視界の端で、ロシア兵の一人がハンドサインを出す。
それを見た彼女は桃色の唇の間から、僅かに白い歯を軋らせる。
【……決着は預けてあげるわ】
【それはこちらのセリフですよ】
【イチカさんは誰よりも自由になりたい人なんです】
【魔女の牢獄は性に合わないんですよ】
アイカの琥珀色の瞳と、マルファの黄金色の瞳が交錯する。
一部の兵士達は仲間の死体を抱えて撤退し始めていた。
~イチカハウスの外~
『ぐぐぐ……やりますわね……!』
『まるで熊と格闘している気分だ……!!』
フェルゼンはパラチェフの逆十字を力づくで外しながら、固めから脱け出して行く。
そして足が完全に抜けると体を回転させ、即座に彼を抑え込む。
『……圧死なさい!!』
パラチェフは肺が押し潰されそうになりながらも、徐々に内側へ回転し、フェルゼンの腕を膝で挟む。
が、余りのパワーに締め付けよりも、筋肉の押し返す力の方が勝っていた。
『今の私相手に腕十字を取るには、パワー足りません事よ』
『……』
パラチェフの身体が水に入る様に地面へと沈み込み、地中を回転しながら彼女の腕を極めて行く。
『アイテム──!』
『アイテムは強さじゃない』
『如何に自分のスタイルや性格と合うかどうかだ』
『向こうが選んでいるのかもしれないがな』
しかし、フェルゼンは彼の言葉を聞いて、目の奥を殺意で光らせながら微笑む。
【うふふふ……それを聞いて安心致しましたわ】
【これからの展開も承知なさっている、という事で良いですわね?】
『何……?』
彼女は地面に沈み込んで行くパラチェフを、関節の僅かな部位で強引に引き上げて行く。
【【ブリュンヒルデの指輪】第三段階起動】
彼女の反対側の腕が金色に光り始める。
【カフカスの戦士……是非あの世で歓待させて頂きますわ】
【《ラグナロック・ストレート》】
【!!!】
地面の下のパラチェフに向かって、狂ヴァルキリーの隕石の様なパウンドが放たれる。
彼は即座に技を解く。
途轍もない衝撃波が地面と壁を揺らし、爆弾が落ちたかのような爆発があらゆる物を吹き飛ばして行く。
アイカは轟音と地響きに気付いて物陰に転がり込み、レナ達の位置からもその爆発と衝撃を観測した。
『い、一体何が起きているのよ……!』
『【ディープ・ダイブ】!敵のドローンをハック、視界を共有して!』
クリチカは茂みに頭を抱えて伏せた。
『航空攻撃……!?』
『マルファは爆撃機部隊まで連れて来てるの!?』
『……分からない……!』
『──ドローンと視界が繋がった!』
そこには土煙の中、仁王立ちする金髪の大女が映っていた。
『……まさかフェルゼンさんが……!?』
『……どんなアイテムかは知らないけど、人間に出せる威力なの!?』
『……状況的にそうとしか言いようが無いわ……』
『少なくともドローンに記録された映像は、それを視覚的に裏付けているもの……』
『や、やっぱりおっかない人だった……!』
『……やり合っていた敵の兵士が倒れているわ……』
『これで五体満足で生きているの……!?』
『頑丈過ぎるわね……』
映像ではパラチェフが、折れた左腕を抱えて倒れていた。
『……なんて女だ……!!』
『力任せの一撃で状況をひっくり返しやがった……!!』
フェルゼンは指を鳴らしながら、彼へ近づいて行く。
【ヴァルハラへの門は常に開かれていますわ……】
【私の役目は死んだ勇士の魂を、あの世へ連れて行く事……】
【でも死なないのなら、殺すしかありませんわ】
戦乙女からの有り難すぎて、全身から涙が出そうなサービス。
【遺言は聞きませんわ】
【言いたい事があるのなら、あの世でどうぞ仰って下さいまし】
しかしヴァルハラ行きの飛行機に、このダゲスタン戦士は乗る気が無い様だ。
『また会おう、戦乙女』
『この敗北は絶対に取り返す』
『アルハムドゥリッラー(すべての賛美と感謝はアッラーに)』
彼は閃光手榴弾を投げつけ、闇の壁へ撤退して行った。
これでヤク中の犯罪者じゃなきゃ、超カッコイイんだが……
もう充分すぎる程カッコは良いけども。
心臓どころか人生脱線してるけど、マルティーニ自身はこれが良いと思っている。
彼はある女の上司にハマり過ぎて、人生がとんでもない所まで行ってしまった。
女上司は気は強ければ強いほど良く、エラそうにしている程良い。
しかし、そんな女がふとした時に見せる弱味や涙に、彼は心底惹かれている。
ヴァヴィロフとは分かり合えそうで合えないですね。
彼は永遠のマゾ奴隷で居たい男なので。
今回の鑑賞用BGMですが、under wolrdの『Born Slippy .NUXX』です.。
内容は端的に言うと金・酒・ドラッグ・女に溺れた男の歌で、PVでもそれを再現しています。
頭を縦に振りまくっているのは、ドラッグキメた奴はあんな感じになるから。
この曲が使われた有名な映画、それが『Trainspotting』です。
Trainspottingの原義は電車を見つめ続ける人、という意味ですが、転じてドラッグ中毒者を表す隠語になった。
だからヤク中のマルティーニにはぴったりの曲でした。
で、イチカの戦闘に関してですが、シナジー効果はゲオルグとよりも高いかもしれない。
ゲオルグが無限のドリンクサーバーだとすれば、マルティーニは無限の予備タンクです。
そして他にシナジーが高いのはクラリスです。
彼女は磁力を操れるので、大量の血に含まれた鉄分を武器として利用出来る。
ヴァヴィロフも痛みで何処までも巨大化するので、互いにメリットがある。
これは他のアイテム使いには中々見られない特色です。
毒や病気を使う相手と組むと、途轍もない兵器と化すと思う。
逆に薬系のアイテム使いなら、途轍もない利益を人類にもたらす。
攻撃にも防御にも、サポートにも偵察にも治療にも暗殺にも、果ては捜査にも使える。
戦いにも生活にも使える。
ただ、使い手が凡庸だと宝の持ち腐れで終わってしまう。
人並み外れて頭が良くて向こう見ずなイチカだからこそ、このアイテムに眠っている無限の可能性を引き出せると思ってる。
他に応用幅が広いアイテムを持っているのがエスティア、ハルカ、マルファ、ベルトラン、クラリス、ラロシェル、四十万、服部です。
ヘイリーはワープっていうある種、とんでもなく制御が難しいアイテムを使いこなしているので、彼自身の応用力が高い気がする。
クライヴやミューゼは本人の才覚が極めて高い感じ。
イチカに比肩するのはアーデルハイドですね。
彼女は無意識レベルでトラップを仕込める上、情報媒体との相性が良すぎて怖い。
更に味方へ暗示を掛ける事で、潜在能力を引き出せたり士気を向上させられる。
敵に暗示を掛けて自殺や自傷に追い込んだり、敵を操って盾にしたり殺し合わせたりも出来る。
加えて【ベリアルナイン】みたいな精神力を動力としたロボットが強化出来たり、精神を融合したり分離出来たりもする。
加えて、まだ明らかになっていない予知能力みたいな力も眠っている。
ラロシェルが敵視する理由が分かるかと。
フリスちゃん様の優遇もかなり感じる。
彼がアーデルハイドの暗示に掛からないのは、いち早く脳神経回路を多重仮想化していたからです。
【堕天使原理】の侵襲を幾重もの防壁で防いでいる。
こっちはこっちで異常なんだ。お前の脳ミソは一体何処にあるんだよ。
そしてアイカ対マルファの決着は、二回戦以降に持ち越しとなりました。
どちらもデカい感情をイチカに抱いていますが、現状はアイカの方がイチカを理解してるんじゃないかなーと。
仲直りのキス?この二人に限っては出来ない気がする。
で、でかでかゔぁるきりーの本領発揮です。
技術で勝る相手には、圧倒的なパワーと破壊力を叩きつけてしまえば良い。
《ラグナロック・ストレート》にはミサイル以上の破壊力があります。
こんなのを連発されたら、建設途中の要塞都市が灰になってしまう。
遠い未来には、このストレートで出来たクレーターが観光名所になるかもです。
科学力は産出しません。
ここまでお読み下さりありがとうございました。
「面白かった」「女上司性癖極めすぎだろコイツ」「無限予備タンク扱いは草」
「無限状態のイチカ強すぎ」「安定の変態マゾ」「アイカカッコいいな……」
「最高の忠犬だろこんなの」「ただのストレートでミサイルみたいな威力出すな」
「生きてて凄い……」「フェルゼンお嬢様、マジでお強い」「当たり前のようにドローンハック」
「すべての賛美と感謝はフリスちゃん様に」「するワケねーだろ!」
と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。




