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現代日本プレッパーズ~北海道各地に現れたダンジョンを利用して終末に備えろ~  作者: 256進法
第三部:駆け抜けろ 燃え尽きたろか シンデレラ

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135/156

番外編:女ランボーの日記①【シャバじゃ1ドルも稼げない私(前編)】

年始スペシャルは二本立てです。

鑑賞用BGM (マクドナルド):https://www.youtube.com/watch?v=wsHbHR3Os6U

鑑賞用BGM(過去編):https://www.youtube.com/watch?v=jQ85eEZw9Fk


~北海道~

~苫小牧市内のあるマクドナルド~


『……薄い。小さい。量が少ない。ペラペラだ』

『こんなんで腹膨れるとか、この国の連中は胃の病気にでも罹ってるのか??』


赤毛の大女は濃い緑色の瞳で、倍ダブルチーズバーガーを睨む。

車椅子に座った緑髪の女は、不機嫌そうにポテトを摘まんで言う。


『精神の病気かもしれませんね』

『ったく、なんで【悪魔姉妹】と一緒にマクドなんか……』


クラリスは足を組み替えながら、シェイク(バニラ味)を啜る。


『エビル・ゲイツ(※1)だってマックに並んで食ってるでしょ、ヴェルチカ』


『だから、あんな試作品みたいなクソOSを売り出せたんですかね』

『所詮オタク野郎なんだから、お上品な上流階級気取るのは止めろよって感じです』

『ああいうのが居るから、勘違いしたグローバリスト共が増殖するんだ……!』


ブツブツ言い始めたヴェルチカを余所に、ヴェルミーナは背伸びをし、欠伸をして叫び出す。


『ヨコスカだ!ヨコスカに行きてぇよ!!』

『カールスジュニアとバーガーキングもあるし、デケェバーガー食わせてくれる店も沢山あるし……!』

『ワンパウンドバーガー!ワンパウンドバーガーが食いてェ!』


『まるでデカい子供ね、ミーナ(こんなお従姉ちゃんもかわいい❤️)』

『でも今ヨコスカに行ったら、中将が疑われるでしょうね』


『もうとっくに目を付けられてそうです』

『あの日本人形、タダモノじゃありませんし』


ヴェルチカはポテトをバーベキューソースに付けた。

ヴェルミーナはそのソースを指差して言う。


『そのバーベキューソースは私のだぜ、ヴェルチカ』


『私のですよ、ヴェルミーナ』

『ナゲット15ピースを注文したら3つソースが付いて来て、3人で一つずつ取ったでしょうが』

『算数出来ないんですか??』


『ファック、このクソ片眼鏡』

『ネットばかりやってるテメェはミシュランマン一直線だぜ』


クラリスはストローから口を離して言う。

念の為言っておくが、紙製じゃないぞ。


『……もう使い切ったの?ミーナ』


『知らねぇよ』

『私のって言ったら私のなんだよ』


『ポテトLサイズを3つも頼んでおいてコレですからね』

『そりゃ一つだけじゃ足りないに決まってます』

『カウンターでソースだけ買ってくれば良いじゃないですか』

『このソースは私のです』


極めて正論だが、目の前の赤毛女はこの世で一番正論が通用しない存在だった。


『イチイチうるせぇな』

『貰うぞ(ヒョイッ)』


しかし、ヴェルミーナの手首をヴェルチカの生白い手が掴む。


『返しなさい、レッドファック』


『何の積りだファッキン片眼鏡』


ここ飲食店なんで、ファックって言葉を連発するの止めて貰って良いですか?

いい歳こいたアラサー女二人が、バーベキューソースを巡って争おうとしている。


『……私は相手が車椅子だからって容赦しねェぞ』


『あんまり慣れない気を使うと、脳が筋肉痛になりますよ』


クラリスはスマホで動画を観始める。


『ケンカしても良いけど、程々にね~~』


ヴェルミーナの緑眼が鋭く光り、彼女は手を振り払ってヴェルチカを投げ飛ばそうとした。

ヴェルチカは左手で車椅子を掴み、彼女は車椅子ごと宙に投げられた。


『出方が分かっていれば、後はプリセット(※2)を使うだけです』


彼女は片方の手でスプリンクラーを掴み、もう片方の手で自分の身体を車椅子に固定した。

クラリスはポテトを食べながら言う。


『相変わらずイカレた握力と体幹ね、ヴェルチカ』

『今握力は何kgぐらい?』


『2400kgぐらいです』

『【血魂】のお陰ですけどね』


『もうワニやサメのかみつきより強そうね』


『……それでもヴェルミーナの骨は砕ける気がしませんがね』

『なのにモントヴァンはアバラにヒビまで入れて来た……』

『磨き抜かれた技術とフィジカル無しにはあり得ない事です』


ヴェルチカは車椅子ごと回転しながら、元の位置に着地する。

クラリスは不敵な笑みを浮かべて言う。


『そりゃ世界最高の格闘王だもの』

『強くなくちゃあ、男の基準自体が下がるわ』


ヴェルミーナは立ち上がり、コーラを流し込みながら言う。


『……男の話をしにマックに寄ったのか?』

『なら、私は先に車へ戻ってるぞ』


『なんか顔と耳が赤くなってるケド』


彼女は窓ガラスで自分の顔を確認するが、どこも赤くはなっていなかった。


『こ、このクソビッチ……!』


『あ。ゴメン』

『ウソだった(こういうトコロマジかわいい❤️)』


クラリスはニヤニヤしながらナゲットを頬張る。


『実際最高の遺伝子じゃない?彼』

『目は明るい青だし、マッチョで背はデカくてケンカは強い』

『頭の方は分からないケド、UFCでやって行けたんだからアンタよりは良いでしょ』

『どーせおカネを稼ぐ力が皆無に近いんだから……この際、経済力のある男に養ってもらう戦略を立てた方が賢明よ』


『ザケンな』

『Vber(※3)やバイトくらいはやって稼げる』

『何だったらトラックやローリーの運転手で稼いでも行ける』


『Vberは食事を届けた先で、客を殴って一発アウトだったでしょ』


『アレはクソ寒い中バイクを飛ばしたのに、遅いだの泥棒だのイチャモン付けやがったからな』

『つい堪忍袋の緒が破裂しちまった』


ヴェルチカは眼鏡の位置を直し、鼻で笑う。


『……フッ』


『おいテメェ』

『第二ラウンド行くか??』


そこへ帽子を被った銀髪の店員が現れる。


『あのぉ~』

『お客様ぁ~~?』

『あまり騒がれると困るんですけどぉ~~』


『忙しいから後にしろ』

『あとバーベキューソースをタダでもって来い』


『もうもって来てまぁ~す』

『チュッ❤️』


店員はヴェルミーナ達へ向かってキスを投げる。


『(──!)』

『(この脳が蕩ける様な匂いは……!)』


ヴェルチカは店員の正体へ即座に気付く。

店員はバーベキューソースのフタを剥がし、手に取って指でしゃぶり始めた。


『ソースが手と口の周りについちゃった❤️』

『誰か舐めてキレイにしてくれる人居ませんかぁ?』


クラリスはスッと立ち上がり、前髪をかき上げて言う。


『ホ、ホンットしょうがないわねぇ~~』

『これはしょうがないわねぇ~~』

『店員の為だからねぇ~~』


直後、クラリスは肩と腕を別々の人物に掴まれる。


『おいテメー……』

『何どさくさに紛れてオイシイ所持ってこうとしてんだ』


『油断なりませんね、このサキュバスデビルは』

『ペロペロハッピーセットを先に買ったのは私です』


由緒正しきハッピーセットに対する冒涜だろ、ソレは。

揉め始めた三馬鹿を見て、銀髪の店員は彼女達の口元と頬にソースを付けて行く。


『お待たせ致しました❤️』

『《アーデルハイドのキスセットBBQ味》です❤️』


銀髪の店員は3人の頬と口に次々にキスをし、頬のソースを温かい舌で舐めとった。

三馬鹿は半ば昇天し、呟く。


『ほぼイキかけました』


店の中だぞ。


『悔しいけど同感……!』


満更でもなさそうだ。


『……バカヤロ』


なんだなんだお前ら。

店員はスカートをヒラつかせる。


『またのご利用お待ちしております❤️』


店員の笑みに対し、2人は答えるかのように言う。


『ご馳走様でした』


『ねぇ?幾ら??』


こりゃヒデェや。

銀髪の店員……もといアーデルハイドは帽子を脱ぎ、髪の結び目を解く。

髪が広がるのと同時に、脳髄を痺れさせるような香りが広がった。


『……何でその服を今……』


ヴェルミーナの問いに、アーデルハイドは彼女へ微笑み掛けながら答える。


『3周年だからよ❤️』


『あのな……』


彼女は頭を掻き、溜息を付いた。

そして、彼女はアーデルハイドと会った前後の事を思い出し始めた。



~3年2か月前~

~アメリカ合衆国・ピッツバーグ~


『……』


1人の女兵士が、Vberで手配した車の窓から街並みを眺めていた。


『お客さん、この街が懐かしいか?』


『……さぁな』

『他に帰る所が無いから帰って来ただけだ』


『……そうかい』

『でも生きて帰って来ただけで儲けモノさ』

『俺の息子は……帰って来れなかった』


『……アンタの息子は何処に行ってた?』


『アフガンだよ』

『タリバンの攻撃を受けて死んじまった』

『そういうアンタは何処に?』


『イラク、アフガン、シリア、パキスタン、湾岸(ガルフ)

『日本やドイツに行った事もある』


運転手はバックミラーで、疲れ切った女の顔を見て言う。


『──アンタの奉仕に感謝を』


『……私は感謝される程上等な人間じゃない』

『ただの敗残兵だ』

『いや、歴戦の戦士を気取っていたタダの小娘だった』


『……あんま自分を卑下するなよ』

『暫くこの街で休みな』

『きっとアンタは疲れてるんだ』


『……かもな』


車は住宅街に入り、女兵士は降りる準備をし始める。

運転手はダッシュボードからチョコレート菓子を差し出し、彼女へ言う。


『代金は要らないよ』

『息子の代わりに生きてくれ』

『……そういやアンタの名前は?』


『ヴェルミーナ』


『ミーナ、余り気負うなよ』

『潰れちまうぞ』


『……ありがとう』


ヴェルミーナは菓子を受け取り、車は典型的な中産階級の家の前で止まった。

そしてドアを開け、トランクから荷物を取る。

運転手の男は彼女に対して、敬礼しながら言う。


『God bless you(貴女に神のご加護がありますように)』


ヴェルミーナは言葉に敬礼で返し、車は去って行った。

彼女は家に向かいながら呟く。


『……神なんてクソだ』

『神は親父を救わなかった……』


ドアを開けて家に入ると、そこには誰も居なかった。


『……』


ヴェルミーナは父親の現役時の写真を一瞥すると荷物を放り出し、服を脱ぎながらシャワーへ向かった。

突如何かが落ちる音がし、彼女はナイフを抜いた。

部屋を一つ一つクリアリングしながら、キッチンへ向かう。


『……クソ……!』


単にドアを閉めた時の振動で、小物が落ちただけだった。

ヴェルミーナはナイフを床に投げつけ、キッチンにもたれ掛かるように座り込む。

外は暗くなり始め、閑静な住宅街に春の夜が訪れようとしていた。


『これから私はどうやって生きていけば良いんだ……!』

『大学へ行くカネのアテは無いし、手に職があるワケじゃねぇ……!』

『あのクソ共、一般除隊なんかにしやがって……!』


ヴェルミーナは背後の棚からジンのボトルを取り出し、がぶ飲みする。

酒の影響か、彼女の涙腺が緩み始める。


『……ちくしょう……!』

『私は誰よりも功績を上げて、誰よりも身を捧げたんだ……!』

『休日だって勉強やトレーニングに……!』

『なのに……なのに……!』


彼女はスマホを開き、死んだ戦友達の画像を泣きながら眺める。


『ここは……戦場や戦地より酷いぜお前ら……』

『ここには……何も無い……!』

『私はお前らと一緒に死にたかった……』


ヴェルミーナはジンのボトルを呷って放り投げると、フラフラと立ち上がってシャワーを浴びに行った。


『……親父……『お前は軍なんかには行かず早く結婚しろ』って良く言ってたよな』

『私には……男とどう付き合ったら良いかすら分からない……』

『済まねぇ……親父……!アンタは正しかった……』


彼女は嗚咽しながら、シャワーのバルブを捻る。

彼女の赤い髪が、筋肉質な肩や大きな胸に貼り付いて行く。


『……ダメだ……このままだとダメだ……』

『寝て明日は街に出よう』

『求人があるかもしれない……』


ヴェルミーナはシャワー止め、タオルで顔を隠しながらリビングへ向かう。

その時、スマホが振動している事に気付いた。

相手はクラリスだった。


『……出るか』


彼女はスマホを取って電話に出る。


『何の用だ、クソガキ』

『私は今休暇中(・・・)だ』


《休暇中??》

《自主退職に追い込まれて無職になった、の間違いじゃないの?》


『……何で知ってんだよ』


《部下だった人に聞いたから》

《勲章量産機のアンタを追い出すなんて、今の軍上層部は本当にどうかしてるわ》

《その癖、ローカルニュースじゃ手品やる為に軍に居た男が、お別れ会まで開かれて名誉除隊したって記事があったのよ!》

《おかしくない!?一兵卒から将校まで成り上がったアンタがダメで、腰掛け下士官の男がそんな厚遇を受けるなんて……!》


『──クラリス』

『上が決めた事は例えどんなにクソでも、どんなに理不尽でも逆らえない』

『それが入隊契約にサインする、という事だからな……』

『私は嫌われた、その男は好かれた』

『本当に……本当にそれだけだ』


クラリスの鼻水を啜る音が、電話越しに聞こえ始める。


《酷い……本当に酷いわ》

《ミーナお姉ちゃん、4日後そっちへ行って良い?》

《二人だけでもお疲れ会をやってあげるわ》


『……別に構わないが学校は大丈夫なのか』


《……構わないわ》

《取り巻き達の下らない話を聞くのにもウンザリして来たし》

《沢山食べるでしょ?ケーキやチキンも買って来るわ》


『……クラリス』

『ありがとう。今の私にはお前だけが頼りだ』


《なっ……!》

《かっ、勘違いしないでよね!》

《あっ、アンタには早く立ち直って社会復帰して貰わないと困っちゃうのよ!》


ヴェルミーナはクラリスのテンプレみたいなツンデレへ、僅かに微笑んだ。

4日後──


『……なんだこの飾りつけは』


『パーティーなんだから当たり前でしょ??』


『恥ずかしいから止めてくれ』

『もう27だぞ私』


しかし、クラリスは構わず飾りつけを続けて行く。


『求職活動はどう?』

『上手く行ってる??』


『ジョブセンターの職員が幾つか面接先を紹介してくれた』

『Webテストを受けて、来週面接へ行く積りだ』


『幸先良いじゃない!』

『今日は楽しくなりそうね!』


そこへインターホンが鳴る。

ヴェルミーナの目つきが即座に豹変し、ホルスターから銃を取り出して庭に向けて構える。


『お、お姉ちゃん!』

『お客さんよ!お客さん!!』

『襲撃じゃないわ!私が呼んだのよ!』


『……』


射撃姿勢のまま固まった彼女を見て、クラリスは慌てて玄関に向かって行く。

クラリスはドアを開ける。


『これはクラリスお嬢さん』

『大尉は今ここに?』


『居るけど……』

『ちょっと待って貰ってからの方が良いかも……』


元部下達はリビングの方を見る。

そこには銃を構えたままのヴェルミーナが居た。

緑色の瞳は屋外に向けられ、微動だにしなかった。


『──これは』


『PTSDの症状が急速に進んでる……』

『大尉……』


『大尉!!』

『もう戦闘は終わりです!!』

『A0(※4)が発令されました!!』


彼女はハッとして銃を降ろし、ホルスターへ銃を仕舞った。


『な、なんだお前ら……』

『遅かったじゃねぇか……』


『大尉、今日はパーティーです』

『全てを忘れて気楽に行きましょう』


『……そうだな』


彼女はソファーに座り込み、ケーキを取り始める。


『お姉ちゃん……』


元部下の一人はクラリスへ言う。


『リュドヴィッツ大尉はずっとこんな感じなんですか……?』


『……いえ』

『私も初めて……』


クラリスの物憂げな可愛い少女モード発動。

元部下達は騙された。


『大尉、シャバはどうですか?』


『……慣れないな』

『まるで映画の中で生活している気分だ』

『私の役は無いけどな……』


『……俺の家のパーティーにも来て下さい』

『今度子供が生まれるんです』

『その時は上官役をやって下さいよ』


元部下の励ましにヴェルミーナは優しく笑う。


『そん時は……誰かの嫁役も兼ねてるかもな』


元部下達は彼女の冗談にドッと沸いた。


『(良かった……元気そう……)』


クラリスは彼女を見て胸を撫で下ろした。

そしてその日の夜──


『パーティは終ったぞ、クラリス』

『お前もさっさと帰れ』


『イヤよ』

『今のアンタは見るからにアブないわ』

『あと飲み過ぎよ』


クラリスは、ヴェルミーナの周りに転がるボトルや瓶へ顔を向ける。


『……分かった』

『これから飲酒は抑える積りだ……』


彼女はフラフラと立ち上がり、二階の寝室へと向かって行く。


『(こんな素直なミーナお姉ちゃん見るの、初めてかもしれない……)』


クラリスは毛布を引っ張り出し、ソファーの上で眠り出す。

更に数時間後──


『うおぉぉあああぁぁっ!!!』

『死ね!!死にやがれ!!このクソ共!!!』

『ティムの仇だ!!!脳ミソブチ撒けてやる!!!』


クラリスはヴェルミーナの怒声に近い叫びを聞いて跳び起き、二階の寝室へ走って行く。

彼女は寝室の扉を開く。


『ど、どうしたの!?ミーナお姉ちゃん!!』


『ちくしょう……!ティムの肉片が私の顔に……!!』

『衛生兵……いや軍医を呼んでくれ!!』

『アイツには病気の母親が……!!』


クラリスは藻掻くヴェルミーナの肩を揺さぶり、声を掛ける。


『ここはピッツバーグよ!!』

『アフガンでもイラクでもないわ!!』


ヴェルミーナの目がクラリスを捉える。


『ク……ラ……リス?』


『そうよ!クラリスよ!』

『アンタの叫び声を聞いて起きたのよ……!』


『……うなされていたのか、私は……』


ヴェルミーナは頭を抱える。

クラリスは水を持って来て、汗だくの彼女に飲ませた。


『明日、一緒に精神科へ行くわよ』

『どう考えても何処かがおかしくなってるわ……』


『精神科に行った履歴がバレれば、まともなトコへ再就職出来なくなる……』


『……このまま放置していると、きっとアンタは街で人を殺すわ』

『いえ、最悪の場合は……』


『……クラリス』

『私が自殺するような、弱い女に視えるか……?』


『……視えるわよ、今のアンタは……』

『いい?明日は病院行くまで大人しくしてなさいよ!』


ヴェルミーナは水を飲んで頷いた。

翌日──


『……居ない!』

『バイクで何処かに脱け出したのね……!』

『もう……!』


クラリスはため息を付きながらも、何処か安堵したような表情を浮かべた。

一方のヴェルミーナはバイクで、サンドイッチとナゲットを買いに出掛けていた。


『……』


彼女は突如飛び出して来たポルシェを見事躱したが、脇の林に突っ込んで転倒してしまった。


『……!』

『クソ、これはマズいぜ……!』


彼女はバイクを起こし、道に戻ろうとしたが、運悪く警察が通り掛かってしまった。

運転手の黒人はポルシェのアクセルを踏み、そそくさと逃げ出して行く。


『あ!オイ!!待ちやがれ!!』


ヴェルミーナは追い掛けたが、警察車両に阻まれてしまった。

女性警官はドアを開けて降りて来て、彼女へ言う。


『事故ですか?』


『脇道に逸れて草むらに突っ込んだだけだ』

『あのクソポルシェを躱したせいでな』

『大丈夫だ、自力で帰れる。放っておいてくれ』


女性警官は訝し気に彼女を眺め、彼女のバイクを見て言う。


『……事故ですね』

『お酒とか飲んだりしています?』


『飲んだのは昨日だ』

『今から朝食を買いにく所だった』


『念の為、呼気の確認をしても?』


『好きにしてくれ』

『時間は幾らでもある』


もう一人の警官が車から出て来て言う。


『免許の確認を忘れてるぞ、新米』

『……しょうがねぇ、俺が確認する』


ベテランっぽい警官は、ヴェルミーナに免許証の提示を求めた。

しかし何時まで経っても、彼女がポケットを探る素振りすら見せない為、強引に彼女のポケットを探ろうとした。


『やめろ……!』

『余り私に近づくな……!!』


ヴェルミーナは警官の指を払い、距離を取った。


『いえ、危害を加える積りも触れる積りも全くありません』

『ただ、我々は貴女のREAL-ID(※5)の確認をしたいだけなんです』


新米警官は彼女の様子がおかしい事に気づき、質問する。


『もしかして、何かご病気でも……?』


『……怪我はしている』


ヴェルミーナはシャツを巻くり、銃痕と切り傷で彩られた、鍛え抜かれた腹部を見せた。


『『……!』』


『私は退役軍人だ』

『もう静かに平穏に生きたいだけだ』

『だから放っておいて欲しい』


彼女がバイクに向かって立ち去ろうとした時、ベテラン警官が彼女の行く手を塞ぐ。


『……もう用は済んだだろうが』

『家で従妹が待ってる』


『州の法律に基づき、IDの確認が必要なんです』


『……知るか』

『私には関係ない。それより今日のメシだ』

『頼む』


新米の女性警官が無線で応援を呼ぶ。

ヴェルミーナはそれを見て、表情を強張らせる。


『(バカ……!相手をよく見ろ……!!)』

『(PTSDの患者だ!)』


ベテラン警官は新米警官の無線を下げさせる。

ヴェルミーナは言う。


『……私を捕まえる積りなのか??』


『い、いえ刑務所は離れた所にあるので……』

『署で手続きをすれば今日中には帰れます』


しかし、警官の放った『刑務所』というワードが彼女を更に刺激した。


『……あ?』


『(これは厄介な事になって来た……!)』

『(しかも彼女は……)』


応援が到着し、ヴェルミーナは叫ぶ。


『お前ら、何処に私を連れて行く積りだ!!』

『時間を稼いでやがったな!!』


いきなりヒートアップした彼女を前に、警察官は宥めようとする。


『提示を拒否する事も可能なんです』

『しかし、拒否されるのであれば、署で一緒にデータベースを確認して貰います』


『何だよそのクソみたいな戦術は!』

『クソ内容をベラベラと……!!』

『あとボディカメラを切りやがれ!!』


警官は勿論カメラを切らず、距離を取りながら言う。


『分かりました、もうその確認はしません』

『なので……』


『お前戦争に行ってみるか?』

『キッチンの掃除でもするか?この汚ぇおフェラ豚がよ!!』


『他の確認方法を取りましょう』


応援が駆け付け、彼女の周囲を8人の警官が取り囲み始める。

ヴェルミーナの皮膚がたちまち赤くなり、怒号が響き続ける。


『本能の赴くままにだ!!』

『私は3年と10か月イラクとアフガンだ!!』

『お前が野郎共を咥えている間に、私は戦争に行ってたんだぞ!!』


何かに取り憑かれた様に怒り狂う彼女に、警官の言葉は届かなった。


『ホルスターなんか持ってんのか!?』

『どうやって使うか分かってんのか!?』

『私が使うんだよ!』


『分かってます』


『分かってる??じゃあどうする積りなんだ?』

『その銃抜くのか?』


『いいえ、抜きません』


『じゃあ失せろ!!』


ヴェルミーナは挑発しながら警官に詰め寄り、警官は後ずさりする。


『私はなぁ、揉め事が大好きなんだよ』

『檻の中にも居たし、戦場にも居たし、ボクシングのリングにも居た』


『我々も貴女を家にお帰ししたいんですよ』


『このクソ野郎が』

『お前の仕事ぶりにウンザリなんだよ』

『この内何人が軍隊に行った?』

『誰か行ったか?』


『俺は行ったぞ』


1人の警官はぼそりと呟いた。

ヴェルミーナはうろつきながら言う。


『これだから軍はお前らが大嫌いなんだよ』

『私をバカにすんじゃねぇ』

『私の後輩達でもお前らを簡単に殺せるぜ』


彼女の支離滅裂な言動に、警官達もしびれ切らし始めた。


『どうしたいんですか?えーっと……』


『ヴェルミーナだ!!』

『栄光あるアメリカ合衆国陸軍大尉の!ヴェルミーナ・V・リュドヴィッツだ!!』


『オーケー、ミーナ』

『すみませんが、我々はここに居るだけです』


『8つの戦闘で特別作戦に従事してた!』

『PTSD持ちのヤツ(私)の話をしてんだよ』

『そこで戦果を4倍にしたヤツの話をなァ!!』

『戦地でティム坊やを救ったんだよ!!』

『そんな人間に歯向かってるんだぞ!!お前らは!!』


更に、ヴェルミーナは怒り狂いながらバイクを指差して言う。


『さっさと消えろ!!』

『お前らが出る幕はねぇんだよ!!』

『寧ろ法律かじってるなら分かるだろ!?この件が法律とは無関係だって!!』


屈強な彼女の身体と気迫に圧力を感じ、警官達は思わず後ずさりする。


『お前らが私を逮捕する前に、私がお前らを捕まえちゃうぜ?』

『だから失せろ』

『失せろってんだよ』


彼女は続けて言う。


『だーれも法を犯してないんだよ』

『だからお前ら全員解散だ!』

『私は法律把握してんだよ!んで、全員片っ端から訴えてやる!』


警官達はヴェルミーナの脅迫に屈せず、冷静な対応を続ける。

彼女との距離を一定に保ったまま、包囲を続けた。


『私は違法な事をしちゃいねぇ』

『ただ、滑って道端に落っこちてしまっただけだ』

『だからもう全員帰るんだ』


ヴェルミーナはバイクを立て直し、道へと引き上げて行く。


『止めて下さい、ミーナ』


『そこまでだ、ミーナ』


だが、警官達の言葉にまたもミーナがキレる。


『おい誰が『そこまでだ』と言ったんだ、あ!?』


『ミーナ、私達はただ……』


『全員ぶっとばしてやる!!』

『私がどんな違法行為をしたというんだ!?ああ!?』

『もうとっとと失せろよ!!』


彼女は怒りを爆発させ、警官達へ迫る。

警官達の一人はテーザーガンを取り出し、迫り来る彼女へ向ける。


『やめろミーナ』


『お前らが始めたんだろ!?』


『街のど真ん中でこんな事をしたいんですか?』

『ここは貴女の住処なんですよ?』


『私とそういう会話がしたいのか!?』


警告を無視し、突進してくるミーナへテーザーガンが放たれた。

しかし、電撃は効かず、片手で簡単にあしらってしまった。


『お前の可愛いテーザーなんか食らわねえよ!』


『下がれ!』

『下がって!下がってくれ!』


『次の手を考えるんだな!』


『ミーナ、もうこれを終わらせましょう』


『いや、お前がこれを終わらせろよ』

『もう一回状況を考えてみろよ』

『2歩下がれ』

『お前らが下がったら、私も下がる』

『全然痛くねぇしな!』


警官の一人が諭すように話しかけ始める。


『良いですか?貴女は警官を追い回しているんですよ?』

『何をしているか分かっていますか?』


『追いかけ回してなんか居ねえよ』


『やったことの責任は取るんだ、ミーナ』

『地面に伏せてくれ』

『頼むミーナ、もうやめてくれ』


『単に……従妹の為に用事を済ませようとしただけなのに……!』

『警察官としての目的は何だ?』

『ふざけんじゃねぇよ!』


『ミーナ』

『貴女が家に帰りたいのと同様に、私達も家に帰りたいんですよ』


『お前らは刑務所に一泊しなくても良いだろ?』


『貴女は刑務所に行きませんよ』


彼女は吐き捨てる様に言う。


『……ふざけやがって』


ヴェルミーナは、刑務所に行かずヘ済むことが信じられない様子だった。


『もっと遊びたいか?』


『そんな事しません』


『このクソロリコンのクソマザコン共め』

『私を殺すんだろ?』

『分かってんだよ』

『もっと遊ぼうぜ、撃ってみろお嬢ちゃん』


『しません』


『撃ってみろって』


『いいえ』

『警察署に行く為に、地面へ伏せて下さい』


『そんな事態にはならねぇな』

『だって法を犯してないからな』

『こんなバカみたいな事しなくても、解決の糸口あんだろ』

『話し合いとかで解決しないワケがない』

『でも、お前が対立を望んでいるんだ』


『望んでません』


『エスカレートさせてるだろ!!』

『そうやって事態は悪化してくんだ!そうだろクズ野郎!』

『マックシェイクをその汚い口に突っ込む以外、お前はなーんも仕事をしねェじゃねェか!』

『これだから軍は警察を嫌いなんだよ!』

『まさに今、軍と警察の溝をお前が作ってる、ってワケだ』


ヴェルミーナの独り言に近い抗議が続く。


『そして軍はお前らをぶっ潰すだろうな』

『以前はチームだったのに、今は何だ?』

『仲間意識があったのになぁ』


思いつく限りの言葉で警官達を挑発する彼女に対し、警官達は尚も優しい態度で接する。

ミーナは手を広げ、掛かって来いと言わんばかりに言う。


『痛みの何を知ってるんだ?』

『1日中テーザーで撃ってろよ』

『痛みが何なのかも知らねぇクセに……』

『……私は今までの人生で一番の弱味を吐いたよ』


『……』


『知ってるか?』

『何回戦場に行った事がある?』

『何回小さいガキの生首が、体の上に乗せられているのを見た事がある?』


『……ありません』


彼女の言葉からは、過酷な軍人時代の環境が垣間見えた。

そして、遂に警官の正論パンチが炸裂する。


『……こんな事している間にも、貴女を警察署で解放出来ていたのに……』


『……ざ、ざけんな、しねぇだろ……!』


そこへクラリスからミーナへ電話が掛かって来る。


『どうした?クラリス』

『パンツでも替えて欲しいのか……?』


《違うわよ!》

《今警察署から電話が家に掛かって来て……!》

《お願いだからもう止めて……!》


『クソが……誰かが私の事を知ってやがったな』

『クソ共が、既に20人がかりで俺の事を取り囲んでやがる』

『コイツ等、一人じゃ何も出来ないからな』


《ミーナお姉ちゃんから悪魔が離れますように……》

《そしてキリスト様のご加護がありますように……》


ミーナはクラリスの言葉に狼狽え始める。


『違うんだ……!私は悪魔じゃない……!』

『命令通りに仕事をしただけだ……!』

『部隊の為、軍の為、故郷の為に悪党共を殺しただけなんだ……!』

『好きで女子供を殺したワケじゃないんだ、クラリス……!』

『それで勲章を貰えるとは思って居なかったんだ……』


《……分かってるわ》

《ミーナお姉ちゃんは全く悪く無い》

《だから警察に投降して、お願い……!》


彼女の指から力が抜けてスマホが地面に落ち、両膝を地面について両手を後ろに回した。

警官達は沸き上がる様々な感情を抑えながら、彼女の手首へ手錠を掛けた。



※1 ビルゲイツを揶揄した表現。Evil(悪)・ゲイツという意味になる。


※2 「あらかじめ設定された状態」や「その設定値の組み合わせ」という定義。


※3 作中でのUber的なサービス。向こうでは規制が無いので、普通に白タクが出来ます。


※4 戦闘停止を表す、米軍の指令コード。


※5 アメリカの連邦法に基づいて発行される、よりセキュリティ基準の高い運転免許証や身分証明書。



マルファお母さん将軍は暫くコスプレしないので、その間代わりにアーデルハイドがコスプレを担当します。

コミケでスターリングラードの戦いやるんですかね。

クラリスはノリノリでやると思うけど、一番需要があるのはミーナだと思う。


今回の話を書いた切欠ですが、ナゲット15ピースでソースを3個ともバーベキューソースで頼んだのに、3個ともマスタードソースだった事件があったからです。

レシートにもしっかり『バーベキューソース』とあったんだが……

店内は閑散としていて忙しいってワケでもなかったし、単純に嫌われただけかもしれない。

だめだ、心が四十万になりかけている。


それはそれとして。


『RIZIN師走の超強者祭り』見ました。

シェイドラエフといいノジモフと言い、旧ソ連国選手のフィジカルがヤバすぎるだろ……

っていうのは分かってました。

何故なら、その旧ソ連の流れを引くロシア式で組み技のトレーニングを、自分もしているので。

お陰で懸垂が20回3セットぐらい出来るようになった。両手ケトルベルも楽勝だぜ。

サンボの大会?今年の何処か出るかもしれない。


旧ソ連系のスポーツトレーニングは兎に角フィジカルの養成を重要視します。

それだけでなく、運動生理学や神経系の理論などをトレーナー達は大学などで叩きこまれている。

要は科学や学問の力でモンスター作って圧勝しようぜ、というのが旧ソ連の訓練ドクトリンです。

偶にそれが行き過ぎてドーピングとかやるんだけども。

ただ、普段から大自然を利用して鍛えている、というのも大きい。

シェイドラエフは自作のトレーニング器具まで作っていた、というのだからもう次元が違う。


それを朝倉未来に近い前田日明が分かってないワケがない。

彼はあのヴォルク・ハンを呼んだりヒョードルを発掘した人物なので、この展開は分かっていたかと。

で、そんな彼の言う事を朝倉側とRIZIN運営側は全く聞いてなかった、という事でしょうか。

動画で渋い顔をしていたのが印象的だった。

マッチメイカーや大会運営者に対して『アホかお前ら、何考えてんの』と仰ってましたが、完全に正論だと思う。

格闘技経験が無かったり浅い人が考えた、目先の利益優先のマッチだと自分も思いました。

長期的なドル箱を自分から潰しに行ってる。そらアホという感想しか出て来ない。


個人的にはジョリーが秒速で勝利して、泣いていた安保が見られた方が価値あったと思う。

二人で練習滅茶苦茶してたからなぁ……


閑話休題。

今回は登場人物達のトレーニングやフィジカルの話するか。

おまけでよもやま話を。


パラチェフは旧ソ連系トレーニングの流れを受け継ぎ、なおかつダゲスタンの大自然をフィールドにトレーニングを重ねて来ました。生活自体が最早トレーニングですね。

でかでかヴァルキリーに対抗するには、それぐらいじゃないと無理だとは思ってます。

というか、フェルゼンの素質がおかしすぎるんだよなぁ……多分人類の外れ値だ。


彼だけでなく、マルファお母さん将軍やヴァヴィロフ、ヤストレブやジーカも幼い頃から生活自体がトレーニングや戦いみたいな環境で、なおかつ戦う為の訓練に身を捧げています。

マルファお母さん将軍とヴァヴィロフはリャザン高等空挺指揮学校(士官学校)の出身で、そこで格闘のトレーニングはしていました。

ジーカはもう既に、素手で大人の兵士を仕留められるレベルになっています。

お母さん将軍が直々に教えている、というのもあるけど。


エレナはその意味では外れ値です。

根っこが都会のお嬢様すぎて、心身共に戦いからは遠い人なんだとは思う。

だからオシャレや外食に精通し、シティガールなレイやんとは合う気がします。

本人達もオシャレなレストランでお喋りしていたいんだろうな、と。


で、イチカ周辺で言うと……


アイカは完全に特殊ですね。

相手を一方的に殺す為の訓練を、幼い頃から叩き込まれました。

格闘もスポーツもこなせますが、武器での戦いが染みついています。

無論フィジカル面でも特殊な訓練が施されていました。

身体能力は『極めて高い』の一言です。完全に猟犬だと思う。


意外にフィジカル強いのがハルカです。

彼女は実家が農家なので、実家に居た時は手伝いで重労働に参加していました。

体格も良く骨格も頑丈で、かなり食べるので根本的な出力とタフさは相当に高い。

おっぱいがデカいのは沢山食べてるからですね、多分。


恐らく、内臓が非常に強いんだとは思ってます。病気にも罹らない。

運動神経が悪く複雑な動きや長距離走は苦手だけども、アイカ相手に力負けした事は一度もないぐらいです。

耐久値が異様に高く、偶にヤバいクリティカルや危険なトラップかまして来るサポートキャラって、敵側で出て来たら一番嫌なタイプだと思う。おまけに状態異常にも強い。

それが誰かと組んで鍛え始めると、周りが本当に勝てなくなる。

そら製作者のフリスちゃん様もアイテムごとオミットしたくなるよ。


レイやんはフィジカル面ではかなり不利です。

常人よりは高いし、ガッツも凄いけどイチカやハルカに比べて華奢すぎる。

彼女としては刀を扱うだけの力があればいい、という認識なんだろうけども。

あともっと食え。


イチカに関してですが、スタミナ以外は全般的に優れている。

特に体幹の強さが常人離れしている上、非常に複雑な身体操作や技もあっさりこなせます。

更に身体が大きくかなり頑丈で、パワーは相当に高くて戦術面でもキレがあります。

ただメンタル面が割とよわよわなので、一発強烈なのを貰うと挫けそうになってしまう。

口撃が一番効く。


実はマルファお母さん将軍の下で鍛えるのは、割とアリなんです。

指導者の頭が極めて良い上、スタミナやメンタルも徹底的に鍛えられると思うので。

これは、ヴァヴィロフがマルティーニからイチカを奪回出来るかどうかに掛かっています。

けどマルティーニもある種トップクラスの探索者なので、難しいかもしれない……


フェルゼンお嬢様に関してですが、最早パーフェクトでございますわ。

大学で学んだ理論や学問を自分にも適用し、恵まれた能力を更にお強化していますの。

彼女はまず不調の状態になりませんわ。普段から徹底的に自己コントロールしてらっしゃいますので。

特に背筋力が強すぎて、背中がオーガな事になっておりますわ。


そして今回のナチ娘3人組ですが……

3人共身体能力と知能が非常に高い。


まずヴェルミーナですが、過去の後書きにも述べたように、名門大学からバスケのスカウトが来るぐらいの身体能力と運動センスがありました。

更にアメフト部の男共相手にケンカで負け無しという、フィジカルと戦闘センスの高さもあります。

そして戦闘IQが極めて高く、軍隊と戦場で徹底的に鍛えられ、史上二人目の女性グリーンベレーになっています。

身体トレーニングは軍隊式で、そこに自己流のアレンジを加えている感じ。

格闘スタイルはかなり基本に忠実かつ効率的で、言うならばショーン・ストリックランドに近い。


意外にも勉強はかなり出来、グリーンベレーでの教育によりスペイン語やアラビア語も話せるようになっています。

多分日本語も直ぐに話せるようになると思いますが、今はその気が無さそうです。

退役時の階級は大尉ですが、一兵卒からそこまで辿り着きました。

大学は出ていなかった為、それ以上先には行けませんでしたが。


日本警察の階級に直すと、実は四十万や上杉ちゃんより出世が早い。

しかも二等兵からのスタートだからスゴい。

実戦経験に基づいた指揮能力や訓練能力もあるので、本当に有能で得難い人材だと思う。

おまけに黙っていればカッコいい美人なんだ。


が、一般除隊になり、軍を追い出されます。

これは彼女がキャリア組の天井をブチ破ろうとした為、嫉妬と警戒心からハメられました(作中を参照)。

その為、大学への奨学金(GIビル)は出ません。

三等軍曹だったヘイリーには出ます。


彼は上官達にもかなり好かれていましたが、目的の為に惜しまれながら名誉除隊しています。

腰掛けのヘイリーが上官達から好かれて、一生を軍に捧げる積りのミーナは嫌われてしまった。

これはちょっと理不尽だなーとは思う。

実はマルファでもラロシェルでもなく、ヘイリーを彼女には一番会わせてはいけない気がして来た。

人間、反証を突きつけられるのが一番堪えるので。


で、富裕層でもないミーナには、そのままシャバで就職を目指すしかなかった。

しかし、軍人の父親とネオナチ共と、軍隊と学校しか知らない彼女には一般世界の感覚や常識、という物が一切分からなかった。しかも社会的上昇のチャンスは全く封じられている。

再就職活動は失敗続き、インフレの影響で貯金は減り続け、一般社会に馴染めない彼女は追い詰められて行く。

ミーナは本来自分から積極的に何かをするタイプじゃないので、本当にキツかったと思う。


それが過去編の始まりです。

クラリスの助けが無ければ、彼女はある種の社会復帰すら出来なかったんです。

これは本当の意味で繋がりを感じさせます。

クエイドもそうですが、有能な兵士ほど激戦地に投入されて心に傷を負い易い気もする。

ヘイリーは本当にメンタル強者というか、軍に対し何処か割り切った見方をしていると思う。


そのクラリスは一見、人生楽勝なクインビーです。

しかし父親がクソ過ぎて、幼少期は完全に父親の奴隷でした。

レスリングも演劇もダンスも歌も、何もかも父親の強制です。

彼女が自由に選べたのは服装とメイクぐらいでした。


彼女の父親はクラリスに金を稼がせて、ネオナチグループでの権勢を高めようとしていた。

もし才能溢れる彼女が芸能界やスポーツ界に出て大金を稼げれば、安泰なネオナチライフまで約束される。

しかしヴェルミーナに半殺しにされ、全てをご破算にされました。

そんな経緯なので、クラリスはヴェルミーナに対して拗けた愛情を抱いてしまってる。

過去編ではかなりストレートに表現している気もしますが。


話を戻すと、クラリスの身体能力も極めて高いですが、こちらは身体の柔軟性がより高いイメージです。

あと身体が細い割にはかなりパワーがあって頑丈で、これはダンスやレスリング、チアリーディングで培われました。

更に相手を追い詰める為の戦術的な組み立てや仕掛け、これは全登場人物中で上位かと。

頭は従姉に似てかなり良いですが、今のとこ大学へ行く予定はありません。

そら、アーデルハイドやヴェルミーナ達と居た方が楽しいからな。


ヴェルチカは過去の事故で膝から下が動きませんが、鉄棒で回転しまくれるぐらいです。

握力トレーニングと懸垂と、ダンベルとケトルベルをひたすらやるタイプの人。

【血魂】を飲む前から体幹と握力が異様に強く、絡んで来た不良や移民達の指を折ったりしていました。

意外にも過去は委員長タイプで、内申点稼ぎが得意技です。


お勉強の方は表彰されるレベルで、文学や科学のコンテストで賞を良く取っていました。

特に弁論コンテストでの入賞や優勝が多く、将来を嘱望されてました。

が、性格はドの付く陰キャでジュニアスクールからハイスクールまでを通して、本当の友人と言えるレベルの存在は1人も出来ませんでした。

アーデルハイドにも居なかったので、多分陰キャ同士波長が滅茶苦茶に合うんだと思う。


そして彼女は学費が無料な為に、アナポリス(海軍士官学校)へ入学します。

押しも押されぬスーパーエリートの仲間入りを果たしました。

卒業時の成績は2位という、とんでもない実績を残しています。

特に机上演習や野外演習で他を圧倒していました。


と、彼女の人生が順調だったのは学校までです。

今はこんな有様になってしまいました。

その経緯は次回の番外編で書くかもです。


今回の話は1人の人間が戦場で壊された結果どうなったか、というお話でした。

恐らく、ゲリラの捕虜になった軍人の末路を噂で聞かされていたので、ここまで警察に抵抗したのかと。

……良く冒頭まで持ち直したなぁ、と思う。


この時点で、クラリスは性格は多少アレでも割と天使ですし、ミーナも神(国)に忠実な戦闘天使って感じです。

ただ、ミーナは神(国)からの思わぬ裏切りで壊れてしまった。

しかし、次回は超大悪魔に出会います。

サタンは哀れな女の顔をしている。


お読み下さり、ありがとうございました。

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