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現代日本プレッパーズ~北海道各地に現れたダンジョンを利用して終末に備えろ~  作者: 256進法
第三部:駆け抜けろ 燃え尽きたろか シンデレラ

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133/157

高度1万メートルのイリュージョン

そしてここに取り出したるは、白いスカーフ!

さあ、世紀のイリュージョンをご覧あれ!



鑑賞用BGM(ヘイリーのワープ後):https://www.youtube.com/watch?v=JX_OInOo5n4

鑑賞用BGM(エレナ登場後):https://www.youtube.com/watch?v=8brAe0DWoRM&list=PLyJPl6jeGWTCk0NfW-v4QHfslUoHaYMt8&index=27

鑑賞用BGM(マルティーニ召喚から):https://www.youtube.com/watch?v=auh-v9R64r0


~新ひだか町~

~イチカハウスの前~


一発の銃弾が、闇を突き抜けながらマルファの頬を掠める。


【……来たわね】

【こうなる前に船の中で殺しておくべきだったわ】


アイカは【M99カリュドーンライフル】のレバーを引きながら返答する。


【それはこっちのセリフですよ、くそババァ】

【あそこで引き金を引かなかった自分を殺したいくらいです】

【……イチカさんを何処へ拉致したんですか】


【その自慢の()で、探してみたら?】

【主人の股座を嗅ぐのが趣味なんでしょう??】


彼女の瞳孔が獣の様に細くなり、血走り始める。


【もういいです、もういいですよお前】

【お前の(はらわた)で、お前の首を吊ってやりますから】


黒く刺々しい狙撃銃から、至近距離で複数の紅い光弾が放たれる。


【【バーバヤーガの盛装】三段階起動】

【《人喰いドレス》】


マルファの足元から歯の生えたドレスが這い出て、光弾に喰らい付いた。


【《闇分身》】


更に彼女から滲み出た闇が、もう一人の彼女を作って行く。


【駄犬……】

【貴女程度、分身で十分よ】

【血塗れになるまで躾けてあげるから、覚悟なさい】


マルファは闇の渦へと吸い込まれて行く。

彼女の黄金色の瞳は妖しく歪んでいた。



~道東・大樹町・幸町地下~

~ダンジョン中華・紅火鍋ホンフオ・グオ


ヘイリーは頭に巻いたタオルを外し、植物を眺めていたユンユンへ言う。


『レイカから依頼が入った』

『ちょっくら副業(・・)に行って来るわ』


『気を使わないでも良いヨ、ヘイリー』

『アナタの本業は手品師。中華料理店で働くの、タダのバイトネ』


『理解があり過ぎて助かるよ、オーナー』


ユンユンは笑顔で手を振った。

そして、骨付き肉を持った金髪の女性が、彼の前に呆然としながら立ち塞がる。


『ヘイリー……行って、行ってしまう……』

『わたし、わたし……』


『大丈夫だ、リヴァ』

『仕事を終えたら直ぐに戻って来るから』


ヘイリーは彼女の頭を抱き寄せ、背中を撫でた。


『絶対に……お前の生活は俺が絶対に護ってやる……!』

『【バッカスウォーク】起動』


彼の姿は、その場から手品のように消え去った。



~新ひだか町~

~高度1万4000メートル~


ヘイリーの緑色の瞳に、死の灰を降らせるミサイルの群れが映る。


『……!』

『(町一つ所か、北海道が消し飛びそうな量じゃねぇか……!)』


彼はミサイルを待ち受けるかのように、軌道上へワープした。


《【何者だ!!新しい戦友か!?】》

《【悪いが【ヴォストーク作戦】の邪魔はさせないぞ!!戦友!!】》


ブラックメタル色の戦闘ロボットが青い機体の追跡を振り切りながら、ヘイリーに向かって突進して来た。


『私情で核を使っておいて、作戦もクソもあるかよ!!』

『【バッカスウォーク】第二段階起動!!』

『《位置逆転(コンバーチブル)》!!』


青い戦闘ロボットとヘイリーの位置が、即座に入れ替わる。


《【なっ、なんだこれは!!?】》


《──あの時のアメリカ人か!!感謝する!!》

《お兄ちゃんポイント50点だ!!》


【スレイプニルランサー】は【ケストレル】に正面から衝突した。

ヘイリーは彼等を尻目に、アイテムを起動させる。

彼は飛び石を跳ねるように、高空をワープして行く。


『……ミサイルの数は36発か……!!』

『これなら……』

『──!』


彼の視界の端に巨大なステルス輸送機が映る。


『ミサイルは迎撃予想済み、ってか……!!』

『やってくれるな、魔女のオバサン!!』

『しかし、何だあのデカさは……』

『An-225(※1)より更にデカいじゃねぇか……!』


敵は余りにも巨大だった。

だが、彼は不敵に微笑む。


『──さしずめ世紀の瞬間移動ショー、って奴だな』

『レイカ、やはりお前は俺を完璧に理解している!』

『最高のマネージャーだ!!』


~新ひだか町~

~高度1万3000メートル~


ヘイリーはミサイルの前に躍り出る。


『そしてここに取り出したるは、白いスカーフ!』

『さあ、世紀のイリュージョンをご覧あれ!』


彼はスカーフをミサイルの先端へ向ける。


【【バッカスウォーク】第三段階起動!!】

【《フィラデルフィア・エクスペリメント》!!】


ミサイルの群れが、白いスカーフに撫でられるように消えて行く。

ヤストレブはミサイルの反応が消失した事に驚き、声を上げる。


《【ハラショー(素晴らしい)!!】》

《【敵ながら見事だ!戦友!!】》


感心してる場合じゃねーぞ!戦友!

ヘイリーは更に輸送機に向かってワープし、巨大な格納庫に着地した。


【さぁ!南の島でバカンスしようぜ!】

【……あれ……?】


格納庫内には誰も居なかった。

核兵器と1人を除いては。


【久しぶり、貧乏アメリカ人】

【待ちくたびれたわ】

【アサヒカワ以来ね】


格納庫の冷たく固い空間を、ヒールの音が支配して行く。


【ふふ……まさか私だけがこの展開を予想出来ていた、ってワケ?】

【そりゃそうよね!何故なら……】


【俺もレイカも、性格を知っているのはお前だけだから、か……?】

【エレナ】


【そうよ】

【でも相手より先に答えを言うって、なんて詰まらない男なのかしら……】

【それで手品師やってるなんて、本気でセンスないわね】


白銀の髪が揺れ、色違いの瞳がヘイリーを見下ろす。


【レイカさんなら、絶対アンタに依頼すると思ってたわ】

【万年金欠のアンタなら二つ返事で受けるハズ】


【……ああ、合ってるよ】

【だが、お前……何に加担しているのか、分かっているのか……?】


【分かってるわ】

【だからこそ、ここに居るのよ】

【私の覚悟を舐めないで頂戴】

【レイカさんの美しさを真に輝かせられるのは、私だけ……】

【その為に不要な物は削ぎ落した方がゴウリテキ、ってヤツでしょ??】


【……世の中、無駄な物なんてない】

【だからこの世界は面白いんだ】

【あの日……思い付きで橋の下に寄らなければ、俺はリヴァに会う事は無かった】

【リヴァに会ってから、俺にはこの世の全てが意味のある物に視えている……】


ヘイリーは軽く白いスカーフを握り締めた。

エレナは軽く鼻で笑い、髪を撫でる。


【何に何の意味があるか……】

【それを決めるのは【女王】たるこの私よ】

【旅芸人のアンタじゃないわ】


【……お前が何をどう思おうと、お前の自由だ】

【俺は他人の自由を心から尊重する】

【だが、リヴァとの平穏な生活は誰にも奪わせない】

【金よりも仕事よりも……アイツの笑顔が大切なんだ】

【アイツは北海道(ここ)に来てから笑顔が増えた……】


【……一度ならずとも、二度も先生のジャマをするなんてね……】

【先生最大の敵はあのナチ共や、マルクト社の連中じゃないわ】

【アンタよ!】

【アンタこそが、一番手強いアメリカ人よ……!】


ヘイリーはエレナに向かって歩いて行く。


【……《大草原の小さな家》って知ってるか?】


【そんなの知らないわよ】


【元は小説でドラマ化までされたんだがな……そんな事はどうでも良いか】

【今の北海道はフロンティアなんだよ】

【古き良きアメリカ……それが日本に出来やがった】


【……だから?】


【俺はこの愛すべきフロンティアに、恩返ししたいんだろうな】

【美しくも厳しい自然、豊かさと貧しさ、忍耐と希望、絆と愛、自立心と助け合いの精神……】

【マジで宝石の様に輝いてやがるんだ】

【紆余曲折あったが、この土地に来て良かったと本当に思ってるよ】


エレナは眉間に皺を寄せながら、バルディッシュを彼に向ける。

ヘイリーは彼女の目を真っ直ぐ見据える。


【やめておけ】

【お前みたいな優しく美しいお嬢さんに、人は殺せない……】

【冷酷な戦乙女を演じるには、お前は心が暖かすぎる】

【そうだろ?マルファ】


核爆弾の影から闇が這い出して、人の形を取る。


【虫唾が走る程頭がキレるわね、《ジャンパー》……】

【エレナの言う通り、今までで一番手強いアメリカ人だわ】


【(特A級のアイテム使いを相手に2対1……)】

【(正面から相手にするにはキツすぎるな)】


ヘイリーはスカーフを首に巻く。


【……俺はしがない田舎の手品師だぜ】

【それだけじゃ食えなくてバイトやってて、なのに無計画に人の世話をしちまう】

【だから万年金欠だ。こんな男が手強いだと?冗談はよしてくれよ、《魔女》】


【……過大評価をしている積りは全く無いわ】

【貴方からはアメリカ人が本来持つ、真の強さを感じるもの……】

【アーデルハイドやラロシェルからは全く感じない、それをね……】


【お世辞、ありがとよ】

【……一つ聞いて良いか?】


【良いわよ】


【──どうも】

【何故、核まで使って痕跡(・・)を消したがるんだ?】


マルファはハンカチで目元を拭う。


【イーチカが……前に進む為よ】

【変な未練があっては、あの子は女帝として完成しない……】

【いずれ大きな障害となるのなら、ここで消してしまいたかった】


【違うだろ】

【アンタが前に進む為だろう】

【コーサカはその為の道具に過ぎない】

【アンタ……アイツの心をちゃんと直視しているか……?】

【もう溢れそうだったぞ……アイツの心は余裕がなく、限界ギリギリだった】


【……!】


【アイツがアンタの何なのかまでは知らないし、干渉する気も無い】

【だがな……アイツの母親を気取るのなら、まずアイツの悩みを聞いてやるべきだ】

【娘の相談事に乗るのが、母親ってモンだろうが】

【それが、北海道という大草原でのルールだ】


【……】


ヘイリーは《デザートイーグル.50AE》をホルスターから取り出す。


【俺もアンタも同じ人間だ】

【いずれ俺の言った事を納得してくれる、と祈ってるぜ】

【それに俺はアンタの事が嫌いじゃない】


【同じく【夢】を追っている者として……?】


【……俺は正直諦めかけていたよ、ソレを】

【このまま何者にもなれず、何処かで生き倒れるんじゃないかと思っていた】

【だが、俺とアンタで大きく違う点がある……】

【アンタは既になりたい何者かに成れているし、何かを成し遂げて来た】


【……】


【俺はアンタが羨ましい】

【それなのに自分が作り上げた物を自分で壊しちまう、そんなアンタには……】

【俺は激しい怒りを覚えている!】


ヘイリーはリヴァの写真が入ったペンダントを、胸に仕舞って叫ぶ。


俺等(・・)はまだこれからなんだ!!まだ人生で何も成し遂げていないんだ!!】

【だから成し遂げたいんだ!!なりたい自分になりたいんだ!!】

【【バッカスウォーク】第三段階起動!!】

【《アルクビエレ・ドライブ》!!】


輸送機周りの空間が、両側に引っ張られて行く。

ヘイリーの目と鼻から血が出始めた。


【ハハハ……やはりキツいな……】

【でもリヴァの笑顔がまた見られるのなら、安いモンだ……!】


マルファは腕時計を見て驚愕する。


【……!!】

【時計の針が……!!】


【この輸送機は1時間後のミッドウェー諸島上空に転移させる……】

【爆弾なら、海の底で幾らでも爆発させておけよ】


エレナの周りに赤と緑の光が集まって行く。


【そんなコトさせると思う!?】

【【極光乙女レギンレイヴ】三段階起動!!】

【《極光の星ズヴィズター・ポラーリノヤ・シーヤニエ!!》】


【エレナ……】


【聞かないわよ!!先生(ウチーチェリ)!!】

【私はレイカさんを絶対モノにする!!】

【その為には最後まで美しくあらねば、絶対に取り返せない!!】

【結果がどうであれ、中途半端な行動は私の美意識が許さないわ!!】



~クレポスト・アサヒカワ~


暗い闇の通路を抜けた後、イチカはヴァヴィロフに担がれて要塞内部に辿り着く。


『……ここは……』


『我々が旭川に造った要塞だ』

『ダンジョンで採れた素材を用い、防壁が建設されている』

『緊急時にはシールドが張られ、大抵の攻撃は跳ね返せる想定だ』


『……核戦争を想定しているの……?』


『それ以上の事態を想定している』

『先程、アラル海周辺の集落が津波に襲われたとの情報が入った』


イチカは大きく目を見開く。


『あそこは干上がって砂漠化していたハズじゃ……』


『……クリスティナ候補生(・・・)

『ダンジョンが現れてから、想像も出来ないような現象が頻発している』

『今はまだ恩恵の方が多いが、そろそろ副作用(・・・)も想定せねばならない』


『(……私の終末に備えた行動は図らずも正しかった、って事なのかな……)』


ヴァヴィロフは拘束されていた彼女をベッドに降ろす。


『……抵抗しないのか、クリスティナ候補生』


『必ずアイカとゲオルグ達が、ここから私を救い出してくれる……』

『そう信じているから』


『……』


ヴァヴィロフは大きめの椅子を引き出して座る。


『正直、私としてはもう諦めて大将(・・)の言う事に従って欲しい、と思っている』

『貴女のせいで、第三次世界大戦が起きる寸前だ』


『……マルファのせい、とは言わないんだ』


『……それは口が裂けても言えない事だ』

『それに私の見た所、貴女は軍事指揮官としての才能も持ち合わせている』

『磨けば何処までも光る原石……マルファ様が惑わされるのも無理は無い……』


『……私、虐められっ子なんだけどな……』

『軍組織なんて場所、一番向いてないよ』

『毎朝早く起きるのも苦手だし……』


『かつて同じ事を言った大学生が居た』

『その大学生は同年代の誰よりも早く軍内で出世し……』

『そしてオデッサで焼死した』


イチカは天井を見つめながら軽く笑う。


『ほら、死んじゃうじゃん……』

『私は弱い生き物なんだ、って北海道に来てから散々思い知らされた』

『誰かの助けが無いと生きて行かれない、って自覚してるんだ』


『……自分の弱さを自覚出来る人間は貴重だ』

『そして手強い』


『……買い被りすぎだって』

『因みに、私がマルファの要求を受け入れた場合、待遇ってどうなるの?』


『訓練と教育の後、少佐の階級、そしてハンガリー系ロシア人としてロシア国籍が与えられる予定だ』


ヴァヴィロフはくすんだ青い瞳を床に向けた。

イチカは彼に顔を向けて言う。


『──アメリカ侵攻、狙ってるでしょマルファは』


『──!!』


『分かるよ』

『私の勘だけど、マルファの本当の敵はそこに居る』

『北海道を制圧したいのはその為じゃないかな、って』


『……今の事はマルファ様の前では言わない方が良い』

『ますます、貴女を手放す事を嫌うだろう……』


彼女は頬に涙を伝わせながら言う。


『私が欲しいと……最初から言ってくれれば良かったのに』

『あの……八戸のラーメン屋で逢った時に……』

『それならハルカとあんなに辛い別れを……経験する事も無かったのに……』


『出会わなければ別れも無い』

『とは私は言えない……』


『……ありがと』


イチカは手首を動かして、ポケットから金色の懐中時計を辛うじて取り出した。


『ごめんね、ヴァヴィロフ中佐』


『……?』


『私はこの決断に賭ける』

『例え夢か現か分からない世界からも、帰還して見せる』


彼女は懐中時計の長針を、2周手動で回した。

彼女の手元が光り、ヴァヴィロフは咄嗟に飛び退いた。


【ダハハハハハッ!!】

【やはり俺を選んでくれたか!!レティツィア!!!】


閃光が収まった時、そこには黒いスーツとコートを着た男が立っていた。

ヴァヴィロフは咄嗟に対戦車ミサイルを構える。


『貴様!!何者だ!!』


【……あ?】

【俺はマルティーニ】

【悪党を殺す悪党さ】

【ヴェネツィアの夢が俺を喚んでくれたんだ】


マルティーニは二挺のブレードガンを構える。

そしてイチカを縛る闇に向かって撃ち、彼女を拘束から解き放った。


【胸が時めいていた、あの頃に戻った気分だ!!】

【レティツィア!!お前が居れば俺の人生はどうにかなる!!】


『敵か!?なら排除する!!』


ヴァヴィロフの放った対戦車ミサイルが、マルティーニに向かって行く。

マルティーニは高速回転蹴りで、ミサイルを蹴り返した。


『──!?』


爆発が起き、硝煙の中を黒い影が舞う。


【【ダークブレードガンナー】二段階起動!!】

【《麗しの暗黒銃》!!】


彼は空中連続蹴りで、ヴァヴィロフの巨体をよろめかせる。

そしてムーンサルトしながら、ヴァヴィロフに青い光弾を撃ち込んだ。


【ダッハッハッハッハ!!】

【さあ!街を駆けるぜ!レティツィア!!】


【(まさか……コイツは『無法拳銃』のマルティーニ……!)】


マルティーニはイチカの手を引き、廊下に踊り出た。


【マフィアのアジトから脱出するぜ!!レティツィア!!】


イチカは彼の後を駆けて行く。

マルティーニは現れたロシア兵達に向かって、空中を回転しながら嵐の様な連続蹴りを繰り出した。


「(これはサバット……!いや、こんなアクロバティックな蹴り技見た事が無い……!)」


彼は宙返りをしながらイチカの背後へ着地する。

そして彼女の顎を指で掬い、囁く。


【また惚れちまったか?】

【相変わらずしょうがない女だ】


『貴方がそう思うなら、それで良い……』


【100点だ。レティツィア】

【その強がりな態度、マジで煌めいてるぜ】


マルティーニの頭部が黒い装甲に覆われて行った。

今回は後書きも長いぜ。

年末特別バージョンだ。


※1 旧ソ連が生み出した世界最大の輸送機。

侵攻時、ロシア軍の空挺部隊により破壊された。

因みに、商業利用を思い付かれるまで、ずっと埃を被ってた。

こんなん多くないか?旧ソ連……


お前は史上最高の手品師だぜヘイリー。

彼の【手品】によって、核ミサイルは太平洋のド真ん中で爆発しました。

彼の手品は人を救う手品なんだ。

兎に角【バッカスウォーク】が強い。移動・回避系としては最高なんじゃなかろうか。

何より、ヘイリーの応用力もとんでもなく高い。

遂には時空間ジャンプまで成し遂げてしまった。


正直、アーデルハイドやラロシェルよりもヘイリーの方が、新しいアメリカのリーダーに相応しい気がする。

彼は無辜の市民を一人として傷つけていないので。

それどころか……レイやんの依頼とは言え、世界大戦を未然に防ぎました。

エリシェバ → レイやん → ヘイリーのラインが強すぎる。

逆に言えば、そこまでしないとマルファお姉さん先生の暴威を止められない、という事でもあるけど……


ラロシェルはヘイリーが大統領になるのは兎も角、リヴァがファーストレディになるのは絶対に認めないと思う。

知的エリートが主導する未来世界を創りたい彼に取って、自分の自我さえ確立出来ない彼女は邪魔以外の何物でもない。

ラロシェルは飄々としている風に見えるけど、実は物凄いプライドが高く、ヤバい選民思想の持ち主なので。

その事は物語が進むに従って、じき分かるようになります。


アーデルハイドもナチ的な教義から言って、リヴァは収容所へ送らないといけない様な存在だと考えると思う。

どうしてお前らはそう極端なんだ。

アメリカの病理が具象化したような二人だから、さもありなんだけど。

実はベクトルや価値観が正反対なだけで、同類かもしれん……


リヴァを守りながら、病理的なアメリカ社会を生き延びて来たヘイリーは、マジで凄い男なんですよ。

レイやんも彼の人柄と性格、そして能力を信頼しています。

そんな男が稀代の名医の手術を受け、フルパワーでレア中のレアアイテムを使った。

そりゃ凄い事になる。


ヘイリーの功績は羅列するだけでも凄い。

彼がアメリカのトップを取りに来たら、間違いなくアーデルハイドとラロシェルの敵になる。

本人は全くなる気なさそうだけども。


イチカにはある種の人と人とを繋ぐ力がありますが、レイやんには別ベクトルでその力があると思う。

裏社会の住人や異端、はぐれ者、嫌われ者、異常者、食い詰め者、山師……そう言った社会の周縁に居る人間達を繋ぐ力がある。

イチカやアイカ、ハルカもその中に入っていたからこそ、レイやんと繋がった。

自分の私見だけども。

実はレイやんに3人とも引き寄せられたんじゃないか、と今は思ってる。


イチカは表側、レイやんは裏側の人間達と繋がって行く確率が高い気がする。

二人がある程度の関係を持っている人物達を、比較すると分かり易いかも。

フェルゼンとエレナの言動が一番象徴的だった。


じゃあ比較すっか(アイカとハルカ除く)。


イチカ……マルファ、ヴァヴィロフ、平良、ラインバウト、ロベール、モントヴァン、ヴェルナール、ミューゼ、リヴァ、アーデルハイド、ヴェルミーナ、四十万、九子、ゲオルグ、フェルゼン、レナ、クリチカ、クレイエル、文香、ボブ


レイカ……高っちゃん、マルファ、上杉、エレナ、ベルナルド、ベルトラン、葵、ユンユン、ヘイリー、エスティア、クエイド、ミレイア、ジュビア、エリシェバ


マルファお母さん先生は例外として、やはり明らかにカラーが違う。

金に対して独特な考え方をする人が多いかもしれない。

……じゃあ、おまけで四十万行くか!


四十万……イチカ、九子、リン、大道、上杉ちゃん、山金、張本、アーデルハイド、マルティーニ、ラロシェル、服部、藤原、クレイエル


……ハードモード過ぎねぇか??

やっぱ裏主人公ですねぇ。ラスボス級の奴がゴロゴロしてますよ。

ただ、服部と藤原を味方に出来たのは本当にデカい。


閑話休題。


本作はある意味、西部群像劇みたいなジャンルに入ると思ってる。

ヘイリーがかなり本質を突いた事を言ってくれた。

ジャンルとしては、西部劇+現代ダンジョン+開拓系SLG+少しのSF&戦記+能力バトルかな……


イチカは都会で負けて流れて西部に辿り着いた、開拓者の役割です。

アイカはお尋ね者のガンマン、ハルカは先住民のインディアン、レイカは海の向こうから来たワケありサムライって感じ。高っちゃんは力持ちの侠客です。

ゲオルグとフェルゼンはお忍び旅行中の王子と婚約者で、ヨハンは欧州にある製鋼会社の役員かな。


四十万は連邦捜査官、リンと大道はその部下、張本は保安官、平良は騎兵隊の指揮官、マルファはロシアの貿易商人兼軍人、エレナはロシア貴族の娘、ヤストレブはクリミア戦争の英雄、ラロシェルは鉄道会社と電信会社のオーナー兼発明王、アーデルハイドは白人主義団体のリーダー兼娼婦、ヴェルミーナはガトリングを持った元南軍兵士、ヘイリーは貧乏な旅芸人、リヴァは身寄りの無い放浪者、エスティアは東部から来た学者、クエイドは南北戦争の元北軍兵士、ユンユンは中国系の酒場オーナー、トーシアは石油会社の代理人ってな感じ。


続けると、クライヴはガンスミス兼賞金稼ぎ、クレイエルは外人傭兵部隊のボス、レナは器用で利発な戦災孤児、ラインバウトはドイツの名門貴族、モントヴァンはベアナックルのチャンピオン、ヴェルナールはクリント・イーストウッド、マルティーニは旧大陸から来たイタリアマフィア、ベルトランは賞金首の義賊、ベルナルドは新興実業家、ジュビアはメキシコ人の自警団員、ミューゼは一世を風靡する天才音楽家、ミレイアは解放奴隷、エリシェバはユダヤ人の金融業者、上杉ちゃんは移民と先住民を排除したい将軍と言った感じです。


フリスちゃん様?

西部で暗躍する、謎の美女でーす!❤️


ここに書くと収まりきらないので、後は各自で人物ごとの役割を想像していただければ。

大体西部群像劇だと思って見て貰えば、スッキリすると思う。多分。


ハルカとキリエ率いる自衛隊の戦いはインディアン vs 騎兵隊がモデルです。

インディアン戦争が歴史上の大問題になった事を考えると、ハルカのヤバさが分かると思う。

でも、最も西部という土地を愛しているのがハルカだったりする。


更に、クレイエルの東京襲撃は外人部隊の反乱をイメージしています。

それに対し、連邦捜査官の四十万が連邦軍のレンジャー部隊と協力して事態の解決を図った、と言えば腑に落ちるかと。

しかも裏で外人部隊の反乱を煽動していたのが、西部随一の富豪だというオチでした。

保安官の張本が上杉将軍の蛮行に対して、正面から決闘を挑んだり、賞金稼ぎのクライヴが連邦政府と黒幕のラロシェル相手に立ち回った挙句、反乱部隊のリーダーと決闘したり……本当に楽しかったな。


レナちゃんは反乱部隊のリーダーに惚れてしまった戦災孤児です。

故郷の東欧で圧制から逃れて移民し、更に逃れた先のアメリカで南北戦争の被害を被っています。

西部劇風に言っても、かなり可哀そうな境遇なんだ。

でも、それを跳ね返す程の利発さと逞しさがある。


皇帝の命と自分の目的で、西部全体を制圧しようとしているのがマルファお母さん将軍です。

昔は社交界の華で、劇作家志望の青年とも恋仲にあった。

クリミアの英雄を投入したり、ダゲスタン族を投入したり、まさに手段は選ばない。

おバカな貴族の娘を連れて来てしまう優しさもある。


西海岸の港湾都市には辣腕の外交官までいて、彼女達をバックアップしています。

ただ、本国からは権力闘争と農奴反乱の気配が漂って来ている。

お母さん将軍は途中の汽船と宿場町で、死んだ部下に良く似た開拓民のイチカに遭ってしまう。

クリミア戦争の血生臭い記憶と部下への未練が彼女を狂わせていく、という感じです。


アーデルハイド率いる元南軍兵士や農場主達が、連邦政府打倒の為に西部占領を企てていたりもします。

ヴェルミーナやモーンケ、ヴェルチカ、ヴィットマンはまさにそれです。

モーンケは奴隷解放と移民の進出で全てを失ってしまい、ヴェルチカは戦いの怪我で下半身が麻痺してしまった。ヴィットマンは旧大陸の騎兵王国から派遣された騎兵将校かな……

クラリスは南部社交界のじゃじゃ馬娘って感じで、アルグゥは旧大陸で活躍したけど、嫌気が差して西部に来た舞台女優だと思う。


戦争後行き場の無くなったヴェルミーナは酒場で、雑用兼娼婦として虐められていたアーデルハイドに遭った過去エピがある、というイメージ。

それに対して怒り狂ったミーナが、酒場の連中をボコボコにしていくのは想像し易い。

クラリスがチンピラを2階から蹴り飛ばすのも。


そして、西部の経済を掌握しつつ、連邦の経済をも掌握しようとしているのがラロシェルです。

表向きは若き発明王兼大富豪のWASPとして通っていますが、裏ではかなりあくどい事もしています。

連邦捜査官すら直接始末しようとした、と言えばそのヤバさが理解出来るかと。

更には移民・先住民を排除したがっている上杉将軍を唆し、金脈を狙っています。

孤児を集めて人体実験していたりするけど、本人自身は文明の進化を願っちゃってる。ヤバいって。


メキシコ人移民達や元奴隷達、自警団員達のリーダーがベルナルドです。

彼等は事業を興し、武装し、耕し、自分達の楽園を創り上げようとしています。

しかし、連邦政府はそれを許しそうにはありません。

そして、コンキスタドールの血を引くベルナルドも、引き下がる気は一切無い。

先住民達や外国をも味方につけ、激烈な闘争の気配が西部を覆っています。


で、そんなベルナルドがビジネス上、心底邪魔だと考えているイタリアマフィアのマルティーニも、東部から西部に進出して来ます。

イタリア統一戦争に参加しましたが、戦争中に怪我をして、その治療の為に麻薬にハマってしまった。

西部到着後、早速有力者パーティーが開かれているホテルへ押し込み強盗に入り、四十万捜査官や上杉将軍、そしてハリー保安官とのバトルの後、即デットオアアライブな賞金首になりました。

そしてとある湿地帯で傷心中のイチカと会って、昔の女の形見である懐中時計を渡した。


さる帝国の超名門貴族ラインバウト卿は、新大陸西部の現地調査を教皇と皇帝に依頼されました。

ベアナックルとレスリングの絶対王者モントヴァン、フランス外人部隊出身の商人ヴェルナール、医学生のロベールを連れて出発しました。

西部に興味を抱いた教皇公認聖女のユクセル、武装シスターのティフォン、護衛兵のソリタリウス達も新大陸へ渡って行きます。

信仰も秩序も無く、生の人間の感情と欲望が渦巻く西部で、真の騎士道は示せるのでしょうか?と言った感じです。


アイカは旧大陸のアサシン一族に生まれ、脱走して西部でガンマンをやっていた所を、開拓者のイチカに拾われました。

イチカは彼女が指名手配犯であるかどうかも大して気にせず、彼女と一緒に拠点を構えて生活を始めた。

これが物語のスタートです。

ハルカが北海道で色々と案内してくれたりしたのは、インディアンが自分の故郷を紹介していたに等しいかと。これは相当信頼されていると思って良い。

結局は東欧系移民のイチカとインディアンのハルカでは根っこの価値観が違い過ぎて、一時喧嘩別れしてしまったけども。


で、ハルカと行った先の競馬場でレイやんと彼女は会いました。

レイやんの持つ、エキゾチックな魅力に三人とも惹かれて行った。

ただ、彼女は腕の立つサムライであると同時に、実は大火で城と家族を失ったお姫様だった。

そんな彼女に上杉将軍は異常な執着を示し、数々の事件を起こしているのが今の状況です。


東欧系開拓民のイチカが故郷の料理を作り、サムライのレイカが酒を調達し、インディアンのハルカがタバコを巻き、ワケありガンマンのアイカが野営の準備をする、そんな光景も幻視した。

こんな感じかな、西部劇チックに直すと。

これだけ見ても、四十万は主人公クラスだわ……あと、レイやんがカッコ良くなりすぎる。

洋装に刀差してる麗人、ってだけでもうカッコ良いんだよ。


以上、妄想でした。

そして次回、夢見るダークな男がスタイリッシュな大活躍を魅せます。

マルティーニの運動能力はマジで飛び抜けてるな……リンやアイカ以上かもしれない。


それにしても、マルファお母さん先生と猟犬アイカの仲の悪さは一貫してる。

もう出会った当初からこれなので、今回の殺し合いはある意味清算の段階に入ったとも言える。

てな感じでイチカは二人だけではなく、色んな人の人生を大きく変えて行ってますね。

魔性の女すぎる。


今回のショーは終了だ。

評価とかブクマとか、おひねりをくれると助かるぜ。


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