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現代日本プレッパーズ~北海道各地に現れたダンジョンを利用して終末に備えろ~  作者: 256進法
第三部:駆け抜けろ 燃え尽きたろか シンデレラ

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132/157

昏き凍土の暗黒女帝(後編)

笑顔とは、地球上で一番苦しんでいる動物が発明したものなのよ、イーチカ。

ほら、笑ってみなさい……

私の様に……


鑑賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=UbDegv99U9g&list=PLyJPl6jeGWTCk0NfW-v4QHfslUoHaYMt8&index=70

鑑賞用BGM(アイカ出撃から):https://www.youtube.com/watch?v=7S1ucRnpVDk

鑑賞用BGM (ススキノから):https://www.youtube.com/watch?v=_UNcU_uulvE


~イチカフォートレスシティから400m~


アイカとゲオルグ達は双眼鏡で様子を窺っていた。


『どうだ?レナ』

『何時仕掛けたか分からない盗聴器で、会話は聞こえてるか?』


『聞こえてるけど……』

『マルファは自分をロシア語で『お母さん』とか言ってるわ……』

『あと一言余計よ』


ヨハンはクリチカと目線を合わせる。

何かを察した彼女は車のトランクへと駆け出した。


『……嫌な予感がするな……』


突如、レナが慌ててヘッドセットを外した。


『──今すぐ皆隠れて!!!』

『攻撃が来る!!!』

『イチカお姉ちゃんはマルファに捕まった!!!』


『『『──!!』』』


ヨハンはクリチカからレミントンM870を受け取り、背後から来た自爆ドローンを即座に撃ち落とした。


『ゲオルグ!!!』

『イチカを救うぞ!!!』


『了解だ!!兄貴!!!』

『アイカ!!フェルゼン!!レナ!!クリチカ!!』

『俺の援護を頼むぜ!!!』


『『『了解!!』』』


ゲオルグは【ソード・オブ・グラム】を握り込み、イチカの家へと向けて駆け出した。

その後をフェルゼンとヨハンが続いて行く。



~イチカフォートレスシティ(仮)~

~イチカハウス~


【まだ私に勝てると思っている様ね、あの裸の王子様は……】

【私を倒せるのはイーチカとベルナルドだけよ】

【【バーバ・ヤーガの盛装】第三段階起動】

【《闇防壁》】


防壁周りの地面からドス黒い闇が湧き出し、高さを増していく。

ゲオルグ達は一旦立ち止まり、回り込もうとまた走り出す。

しかし、ヨハンは二人を制しながら立ち止まる。


『『『ウーーラーーー!!』』』


ドス黒い闇の中から、武装した兵士が喊声を上げながら飛び出て来た。

フェルゼンは咄嗟にゲオルグとヨハンの後ろに滑り込む。


『ゲオルグ様!!ヨハンお義兄様!!』

『ここは私にお任せを!!』


『……分かった!!』

『死ぬなよ!!フェルゼン!!』


『お任せ下さいですわ!!』

『【ブリュンヒルデの指輪】第二段階起動!!』

『《剛力のエッダ》!』


彼女の全身の筋肉が盛り上がり始め、服がはち切れて行く。

彼女はロシア兵の銃口を掴むと、紙のように握り潰した。

それでも兵士は怯まず、ナイフで彼女の腹を刺しに掛かった。


『そんなの、効きませんわよ(にこっ)』


しかし、刃は彼女の鋼鉄の腹筋に負け、折れ飛んでしまった。

フェルゼンは兵士の顎を撫でるように回し、同時に兵士の首がねじり飛んだ。

それでもマルファの部下達は、彼女を殺そうと殺到する。


『躾のなってない方達ですわね……』

『私が(しつけ)て差し上げますわ』


彼女は鋼鉄のハンドガードを嵌めた。

高速ドリルの様なジャブが、兵士の装備を突き抜けて背中に大穴を開ける。

巨体が銃弾を避けながら、兵士の腹を右ストレートがブチ抜く。


『接近戦は不利だ!!』

『遠巻きにして仕留めろ!!』


『──そうは行かなくてよ』


距離を取り始めたマルファの部下達に対し、一気に踏み込みながら距離を詰める。

命を刈り取るワンツーが、兵士達の頭を吹き飛ばして行く。


『フッ!!シッ!!』


フェルゼンの勢いは止まらず、敵陣へ突撃して行く。

その時、闇の壁から戦車が飛び出て彼女へ砲を向ける。


『戦車如きで、私を止められるとは思わない方が良いですわよ!!』


彼女は戦車に飛び乗ると、左フックで戦車砲をブチ折り飛ばした。

戦車は彼女を振り落とすべく、急旋回する。

彼女は戦車から跳び降りると、後部に回り込んで車体を持ち上げ始めた。


『せいやっ!❤️ですわ!!』


戦車はひっくり返り、乗員が銃を持って這い出して来る。

フェルゼンは乗員の首と頭を、笑顔で踏み潰して行く。


『人に喧嘩を売って来た割には……』

『余りにも張り合いがありませんわね』


そこへ、顎髭を生やした兵士が素手で向かって来た。

彼女は咄嗟に構えを取り、ステップを踏んで回り込もうとする。


『格闘技経験者のアイテム使い……俺でないと対処出来ない相手か』


兵士はカーフキックをフェルゼンに対して繰り出した。

だが、彼女はビクともしなかった。


『子供の遊びですの?ソレ』


『……まるでデルベントの要塞だ』


男は距離を取り、素早いワンツーを繰り出す。

彼女は躱して懐に潜り込もうとしたが、兵士のアッパーが顎に直撃する。


『──!』


兵士は彼女が止まらないのを見て、側面から足払いを掛けて転倒させた。

だが、即座に彼女は跳び起きた。


『今のが効いていないのか……』

『完全に入ったと思ったんだが』

『(首と肩が強すぎる)』


『生半可なパンチでは私の脳は揺らせませんわ』

『もっとパワーが必要でしてよ』


兵士は後ろの兵士達を下がらせながら言う。


『俺はイスラム・パラチェフ』

『マルファの協力要請に応じて、貴様等を始末しに来た』


『……知っていますわよ』

『(マズいですわ……想像以上に敵がお強いですわ)』


『俺は戦士の誇りに賭けて、全力でお前を殺しに行く』

『何より、女に殺されたら天国へ行けなくなるからな』


フェルゼンは圧力を掛けながら、ジャブを繰り出して行く。

一発一発が必殺級のジャブが、パラチェフの頬を掠める。

彼は正面から行くと見せ掛けて、側面からタックルを仕掛けて彼女を倒そうとした。


『……倒れませんわよ、その程度のタックルでは』

『(今のはサンボの入り方ですわね)』


『……!!』

『(何という体幹……!!まるで巨岩だ……!!)』


パラチェフはフェルゼンに掴まれる直前に、回転しながら股下を潜り抜けた。


『(今だ!!)』


彼は彼女の膝裏を掴むと、尾てい骨へ(かかと)を掛けて彼女を引き倒した。


『──!しまっ……!』


『もう遅い!!』


彼はフェルゼンの膝関節を両足で締め上げ、てこの原理で彼女の足を引き上げて行く。


『……予想通り関節技の展開には慣れていなかったな』

『寝技は時間と努力がモノを言う……今更覆せない』

『諦めろ、戦乙女』


『……ッ!』

『不覚を取りましたわ……!!』

『でもまだ勝負は終っていなくてよ!!』


フェルゼンの腕と脚に太い血管が走り始めた。



~イチカハウスの裏手~


『ゲオルグ!!』

『ここに穴を開けるんだ!!』


『了解だ!!兄貴!!』

『【ソード・オブ・グラム】第二段階起動……』


ゲオルグが剣を振りかざそうとした時、戦場に例のアイツの声が響き始める。


《ははははははは!!》

《病室を抜け出して来た甲斐があったぞ!!魔女!!》

《黙っていたとは、水臭いじゃないか!!!》


『な、なんだアイツ……』


ブラックメタル色の機体が、ゲオルグとイチカハウスの間に着地する。

ヨハンはゲオルグより前に出て言う。


『ゲオルグ』

『ここは私が奴の相手をする』

『お前はイチカを救出する事だけ考えろ』


『──!』

『……頼むぜ、兄貴』


『任せろ』

『私は今回も『強くてカッコ良いお兄ちゃん』だ、と言う事を証明して見せる』

『【スレイプニルランサー】起動!!』


空から青く巨大な戦闘ロボットが、光輪と共に降りて来る。

例のアイツは滅茶苦茶に興奮し始める。


《なんだこれは!?》

《凄いぞ!!初めて見るタイプの戦友だ!!》

《ははーー!!最高だな!!》


ヨハンは【スレイプニルランサー】に飛び乗り、コクピットへ入って行く。


《──暫く付き合って貰うぞ、ロシアの英雄》


《望む所だ!!戦友!!!》

《俺の名前はヤストレブ!!》

《戦友の名前は!?》


青い機体は空へ飛び上がり、ブラックメタル色の機体もそれを追い掛けて行く。


《ヨハン!!》

《世界で最高のお兄ちゃんだ!!》


ゲオルグは少しの間空を見上げていたが、気を取り直して黄金色の剣を構える。


『頼むぜ、【ソード・オブ・グラム】……』

『《破竜剣バルムンク》!!』


黄金色の光線は闇の壁に大穴を開け、彼はその穴へ即座に飛び込んだ。


『良し!!』

『後はクリスティナを連れて脱出するだけだ!!』


ゲオルグは家の壁を蹴り壊し、リビングに入り込んだ。


『おい!!ロシアンイカレババァ!!』

『俺の妻を返しやがれ!!』


返事代わりに彼の顔面へ蹴りが飛んで来た。


『おっと!!』


ゲオルグは屈んで躱したが、即座に次の蹴りが彼の頭を叩き飛ばした。


『ぐぁっ!?』


【こんな単純なフェイントに引っ掛かる単細胞になんて……】

【イーチカを養っていけるだけの甲斐性があるとは、到底思えないわ……】

【甲斐性の無い男に尽くす程、女に取って不幸な事は無いのよ】


彼は瓦礫を押し退け、頭を押さえながら立ち上がる。


『なーんも分かってねぇな、ババァ』

『甲斐性なんて後から付いてくるモンなんだよ』

『男は惚れた女の為に、命だって賭けられるんだぜ?』


ジーカは熊のぬいぐるみを抱きかかえながら、彼を睨み付ける。


『……何だよ』

『俺はお前の家族を奪いに来たワケじゃねぇ』

『俺の妻を取り返しに来ただけだ』


イチカは涙を流しながら叫ぶ。


『……ゲオルグ!!』


『……間に合って良かったぜ、クリスティナ』

『随分おっかない女が姑になったもんだ』


マルファはジーカに合図し、彼女は何処かへ走って行った。


『……アレはお前の子供か、ババァ』


【ジーカの本当の母親は、あの子自身の手によって死んだわ】

【父親が戦場で死に、母親は薬物中毒になってあの子を虐待していたの】

【で、教育施設行きになる所を私が兵士として引き取ったのよ】


『で、少年兵として戦場に放り込むのか』

『親代わりなら、学校に行かせろよ』


【貴方如きが、あの子の事を心配しなくても良いわ】

【ジーカには既に大学レベルの学力がある】

【イーチカやベルナルドには及ばないけれど、あの子も《選ばれた側》よ】


ゲオルグは黄金色に輝く剣を構え直す。


『ハ!どうだかな!』

『あのガキは友達が欲しい、ってツラしてたぜ!』

『俺は空港でそういうガキを見掛けたら、こう声を掛けてやるんだ』

『『友達の所まで俺が飛んで連れて行ってやる、任せろ!』、とな』


【反吐が出る様なうわごとね】

【上辺だけの希望程、タチの悪い物は無いわ】


『なんてネガティブなババァだ』

『俺とは人生観が正反対だぜ』

『そんな人間の元で、クリスティナが笑って過ごせるワケがねぇ』

『もう充分だろ、クリスティナをツラい目に遭わせるのは……』


【貴方と停戦してイーチカを解放しろ、と?】


『ワハハハ……』

『最っ初からそれしか要求してねぇよ』

『歳のせいでボケたか?あ?』


彼の顔に獰猛な笑みが浮かぶ。


【イーチカ】

【やはりこの男はダメよ】

【言葉遣いすらなっていないわ】

【【魔勇剣グラデニェッツ】二段階起動】


『【ソード・オブ・グラム】二段階起動!!』

『《破竜剣バルムンク》!!』


冷気と光熱がぶつかり合い、爆発が起きる。

爆発の煙に紛れ、マルファはゲオルグを背後から斬り付けた。


『──ッ……!このっ!』


ゲオルグが背後へ転回しようとした瞬間、彼は足を払われて背中から落ちてしまった。

剣の切っ先が彼の頬を掠め、彼は転がりながら体勢を立て直す。


【まるで戦い方までバカね】

【本能で勝てる程、私は甘くないわ】


『(畜生、手強いな……!)』


彼が起き上がった瞬間、マルファの右膝が彼の顔面に直撃した。


【休んでるヒマはないわ、裸の王子様】


そして彼女の腕がゲオルグの首に巻き付き、膝裏に真っ直ぐ足が落ちて来る。

彼は耐えようとしたが、抗せず体勢を崩して倒れてしまった。


【終わりよ】


青白い剣が彼の鳩尾を通りに抜けて、床に突き刺さる。


『ガ──ッ……!』


動けなくなったゲオルグに対し、マルファは膝を付いて彼の頭を抱き寄せた。

そして彼の耳元で囁く。


【ふふ……貴方は核の炎で焼かれるのがお似合いよ】

【私のイーチカは誰にも奪えないわ】


『……!』

『マ、マジで核を使う積もりなのか……!!』

『(あっ……!『使ってみろ』って言ったのは俺だった……!!)』


マルファは彼の頭を、自分の胸元に押し付けて黙らせた。

正直クソ羨ましい。そこ代われ。


【聞こえなかったわ】

【それに、まだ役者は揃っていないの】


『……!(ワン公か!!)』



~車近くの茂み~


アイカは黒い狙撃銃を抱え、身を屈めながら立ち上がる。


「おめーら……そこでじっと隠れてるですよ」


「えっ!?」

「アンタこの状況で突撃する積り……!?」


「無論ですよ」

「でかでかヴァルキリーはダゲスタン族に抑えられ、ブラコン公爵はネジの飛んだ機械兵に手一杯……」

「そして全裸バカ王子はあのロシアンくそオババに、ワンサイドゲームでやられています」

「ここで私が行かなければ、イチカさんは確実に連れて行かれます」


レナはアイカの後を付いて行こうとするが、アイカに突き飛ばされる。


「ッ!?」


「おめーらはレイカって人物を探して会いに行くですよ」

「三白眼でヤケド痕のある、背の高い女です」


「狂犬……いや、アイカさん……」


「私は猟犬です」

「獲物の喉笛に噛みつき、肉を引きちぎり、血を啜る汚れた犬です」

「そして、今だけ昔の私に戻る事を許して下さい……イチカさん」


アイカの黒い狙撃銃に、牙や爪の様な部品が生えて行く。

彼女の身体にも黒い毛や爪が生えて行く。


【【M99カリュドーンライフル】三段階起動】

【《アタランテーの呪い》】


「……!!」


【レイやんに宜しく、です】


アイカは地面がへこむ位に踏み込み、イチカの家へと向けて飛び出した。


『飛び出して来たぞ!!』

『仕留めろ!!』


【《拡散狙撃弾》】


黒い狙撃銃から、赤い光線弾が傘の様に放たれる。

拡散した光線弾はまるで意思を持ったかの様に、兵士達の頭蓋を的確に撃ち抜いて行く。

倒れて行く兵士達の間を、黒い獣が素早く駆け抜けて行く。


【やはり牙は抜けていなかったようね、闇の猟犬……】

【貴女からは直接全てを奪わないと、私の気が済まないわ……】


ゲオルグはマルファに傷口を踏みつけられながらも、不敵に歯を見せて微笑む。


【……これでテメェも終わりだババァ!】

【ったくワン公め、待たせやがって……!】


マルファは笑顔でゲオルグの内臓を踏み躙る。


【【魔勇剣グラデニェッツ】三段階起動】

【【バーバ・ヤーガの盛装】三段階起動】

【《昏き凍土の暗黒女帝》】


彼女は、闇に巻き付かれたイチカの頬を撫でる。

その顔には、子供を撫でる母親の様な笑顔が浮かんでいた。


【笑顔とは、地球上で一番苦しんでいる動物が発明したものなのよ、イーチカ】

【ほら、笑ってみなさい……】

【私の様に……】


『……!』


泣いているのか笑っているのか、それすら分からないマルファの笑顔に、イチカは言葉を発せなかった。


【イーチカ】

【家では狂犬病に罹った捨て犬は飼えないのよ?】


『アイカは犬じゃない……!』

『親友……そして大切な相棒なんだ……!』


【……まだ目が覚めないのね、イーチカ】

【ならお母さんがあの狂犬を処分してあげるわ】

【ヴァヴィロフ】


ヴァヴィロフは対戦車ミサイルを背負って敬礼する。


【イーチカを《門》へ連れて行きなさい】

【私はあの狂犬とこのバカ王子を始末してから行くわ】


『りょっ、了解です……!』


彼は拘束されたイチカを抱え上げ、闇の渦へ向かって行く。


『──ッ!』

『やめっ……』


ヴァヴィロフは渦に飛び込みながら、イチカに小声で謝罪する。


『済まない……!』

『私にはこうする以外の選択肢が無いのだ……!』


『……!』


マルファ青白く輝く剣を抜き、それに伴って服が禍々しい穴開きドレスに変わって行く。


【私の悲願は着実に進んでいるわ、ナスターシャ……!】


彼女は号泣しながら天に向かって笑い掛けた。



~イチカフォートレスシティから2kmの山中~


一人の男が、双眼鏡で黒い獣の動きを眺めていた。


「【A19】……いや、アイカ」

「お前はやはり……【組織】の最高傑作だ」

「より強く大きくなって戻って来たな」

「我々は今、再びお前の力が欲しい……」


「《宗一郎様》」

「これ以上の滞在は危険です」


「……この世に安全な場所など無い」

「アイカが居る限りはな……」


男は双眼鏡を下ろし、満足げな笑みを浮かべた。



~札幌~

~エリシェバが所有するビルの屋上~


欄干に腰掛けてタバコを吸ってるレイカの元へ、エリシェバが息を切らしながらやって来る。


「ケンザキ!!核攻撃だ!!」

「ロシア軍の戦略原潜が根室沖で浮上した!!」

「攻撃目標は恐らく新ひだか町……!!」

「第三次世界大戦が始まるぞ……!!」


だが、レイカは落ち着き払っていた。

彼女はスマホを取り出し、ある人物へと掛ける。


「でも、あら不思議」

「核ミサイルは太平洋の奥深くで爆発しました」


「……!?」

「何を言っている、ケンザキ……!」


「腕の良い手品師(・・・)が知り合いに居るんや」

「今からソイツに核ミサイルを消して貰うわ」

「あのオバハンがいっちゃん絡みで壊れる事は、ある程度予想済みや」


通話の相手が出る。


《一体どうしたんだ?レイカ》

《今日は二度も電話を掛けて来て……》

《俺にはリヴァが居る、お前とは付き合えないぞ》


『私の彼氏になりたきゃ、金融資産100万ドルが最低条件や。ヘイリー』


《お前の男性観、かなりイカレてるぞ》


『うっさい。ほっとけや』

『それより100万ドルのお仕事あるんやけど、聞く?』


《聞く(即答)》


レイカはタバコを放り捨て、札幌の街を見下ろしながら言う。


『核ミサイルを消してくれ』

『フラッシュ(※1)みたいに』


《は???》


『悪い、言葉足らへんかったな』

『今、マルファってロシアの悪いオバハンが、新ひだか町に向けて核撃とうとしとる』

『ヘイリー、ミサイルを太平洋のど真ん中に放り込んで来てくれや』


《……それ、マジな話なのか?》

《いや、マルファとは旭川でやり合ったが……そこまでおかしくなっちまってるのか》

《分かった。多分お前の話はマジだな、レイカ》


『で、引き受けるか?』


《ああ、引き受けるぜ》

《40万ドルで良い。アンタには恩もある》

《それに、リヴァと俺が食って行くだけの金があれば十分だ》


『ふふっ。了解や』

『成功報酬は現金で、後で私が店へ渡しに行く』

『それでええか?』


《構わない、ってか凄い助かるぜ》

《今は預金やカードの動きを、CIAに監視されているしな》

《じゃ、今から行って来るぜ》


『ほな、場所の座標はショートメールで送っておくわ』


レイカはエリシェバに向かって、指でOKマークを作って向けた。

そして通話を切る。


「コマンドー(※2)が暴れる未来はなさそうやで、エリシェバはん」


「……今の相手はあの《ジャンパー》か……?」


「せや」

「急ぎの用件なら、最高の相手やろ?」


エリシェバはレイカの手をそっと掴む。


「ケンザキ……」

「相当無理をしているのではないか……?」

「今は1ドル240円だ、報酬だって安くは無い……」


「……今を無理せなアカン、そうやって来て気付いたらもう29や」

「そして、それに慣れてしもうた自分がおる」

「そろそろ本気で考え始めとるわ、お好み焼き屋」


「……少し、北海道を離れたらどうだケンザキ」

「私と一緒にNYへ行かないか?」

「向こうでの10日間で、貴女の世界は必ず変わる」


「しかし、いっちゃんが……」


「ケンザキ」

「友の為に尽くすのは良いが、貴女の人生はどうなんだ?」


「──!」


レイカは目を大きく開き、黙り込んでしまった。

エリシェバは眼鏡を外し、自分の髪形を手で変えて行く。


「な、何を……」


「何処かで見た事あるだろう?」


「え、映画で見た事あるで……!!」

「ま、まさか……!」


「諜報活動の一環で、女優として活動していた時期がある」

「ベルトランとはその時に縁が出来た」


エリシェバは紅を唇に引き、微笑みを浮かべた。


「仲間を増やしたくはないか?ケンザキ」

「我々はどうしても【創造主】に対抗したい」

「貴女の力がどうしても必要だ」

「そして、その協力がコウサカを救う事にもなる」


「な、なーんかオマエのペースに引き込まれている気が……」


「ふふ」

「それが仕事だから」


彼女が欄干に腰掛ける姿は、CMのワンシーンであるかのようだった。




※1:フラッシュ

ある意味スパイダーマン以上に可哀想なスーパーヒーロー。

早く走れすぎて、時間すら置いてけぼりに出来る。

彼の得意技は超高速移動で人を救出・奪還する事。それでも救えない事があるのが辛い。


※2:コマンドー

シュワちゃんが筋肉と火力で全てを解決していく映画。

第三次大戦のネタは、映画に登場するカービー将軍のセリフから。

エリシェバはある意味、将軍よりもエリートコースに居る人ですが。

多分、祖国の高官連中とも面識がある。


暗殺者時代のアイカが戻って来ました。

アイテムの力によって。

でも本人は戻りたくなかっただろうな……格好良かったけども。


イチカを救う為に、彼女との出会いで得た人間性を犠牲にしないといけない。

人を殺す度に昔の記憶が戻って来る。

それが彼女に取って今一番辛い事だと思う。

でも、今回のアイカは本当にカッコ良かった。


彼女はどうやら【組織】の史上最高傑作だった。

暗殺者としての不完全性故に、彼女は【組織】から脱走した。

しかし、殺しから最も遠い【救う】という行為で、彼女は暗殺者として完成してしまった。


そして、そんなアイカを遠くから見ている人物が……

その人物は、いずれ彼女を連れ戻そうとするかもしれません。

ただ、言動が家出した娘を遠くから眺める、父親そのものだ。


閑話休題。


フェルゼンお嬢様の本気発揮ですの。

お嬢様の右ストレートは、戦車の装甲を簡単にブチ抜きますわよ。

そして、左フックは砲身をあっさりブチ折りましてよ。


パラチェフも流石にこれには死を覚悟したと思う。

一撃でも食らったら大ダメージは避けられないので。

打撃が全く効かないってのも凄いやり辛いと思う。だから彼は組み技で攻めてる。

顎に入れても、首が強すぎて全く脳を揺らせないし、タックルでも体幹が強すぎて倒れない。

技術自体は彼の方が全般的に高いですが、でかでかヴァルキリーの超パワーには負けている。


戦い方も性格も一番エグいと思う。

普段はお優しいのに、スイッチ入ったら残虐超人ファイトです。

妹のエレナと正反対だ。

マフィアの後継者なら、フェルゼンの方が断然素質があると思う。


そして病院から抜け出して来ました。例の連邦英雄です。

マジでイっちゃってるよこの戦友は。

ヨハンお兄ちゃんでも流石に戦友は厳しい。


でもお兄ちゃんはマジでスゲェよ。

あのヤストレブとなんとか渡り合ってる……


そして夫と姑の直接対決ですが……

マジでゲオルグが勝つ要素が見えねぇ。

王子は戦い方が不器用過ぎて、器用に立ち回るマルファお母さんとは相性が悪すぎる。

だが、急所を抉られない限りは何度でも立ち上がれる。


勝てないけど、負けはしないという感じ。

何より王子自身のガッツが凄すぎる。

というより、これだけのガッツがある男だからこそ、【ソード・オブ・グラム】に選ばれたと思ってる。


ゲオルグは全探索者の中で、最初にブレイクスルーを起こす存在だとも思ってる。

王子のバカさは欠点じゃない。完全なる長所なんだ。

マルファはイチカに対しては極度の愛を抱いていますが、王子に対しては愛憎両方ある気がする。

王子の良くも悪くもストレートな所が、マルファの複雑な感情を呼び起こすんだろうなーと。


ヘイリーが間に合えば核実験で話は終わりです。

間に合わなかったら、第三次世界大戦です。

因みに、リヴァの食費は1日で最低6万円です。そら金欠になるわ……

ただ、運用維持コスト以上に化け物染みた性能を誇っているので、大抵の敵は叩き斬れます。


で、レイやんNYデビューです。

エリシェバはグイグイと引き込んで来ますね。

そんなにハマったのかこの関西アラサーに。

レイやんは芸能業界の人からもウケが良いかもしれない。


無論、ミレイアと高っちゃん、エスティアとクエイドも同行予定です。

高っちゃんが騒ぎを起こすのは確定事項です。


相次ぐ事件と事変により、円の価値がドルを超えて下がり、遂には1ドル240円の価値になってしまった。

うまい棒は作中では1本30円、コーラは280円です。

まともな店で食べようと思ったら、最低2000円かかるのは普通になっています。


その為、企業や自治体の倉庫や輸送車両を襲撃する集団まで現れ始め、物流は危機的な状況です。

ただ、そういった連中は上杉ちゃんや四十万によって血祭りに上げられる可能性、大です。

体制側も本気で秩序維持に精を出して来ています。正直イタチごっこだけど……

特に東京は大消費地帯な為、物流の崩壊が即都市の崩壊を招いてしまいます。


次回は夢見るダークなイタリア男の登場です。

思い出の懐中時計が、悪夢を喚びます。


そしてEUもとい、教会の日本への軍事介入が決定するかもしれない。日本側の意志はガン無視です。

お姉さんが核を使ったのが良い口実になってしまう。ユクセルも北海道に行ってしまったし。

無論、ラインバウト卿は全力で反対すると思いますが……

彼が議会を止められ無かったら、EUの軍隊と空中要塞が長崎に出現します。

四十万の仕事量をこれ以上増やしてもいいぞ。


で、今回の話……誰が一番悪いと思いますか?


「マルファとその部下達の誰か」なら感情ボタンでなんらかの反応を

「アイカ達の誰か」なら何らかの評価を

「誰も悪くない」場合ならptを

「全員悪い」と思う場合はご感想を

「何言ってんだお前」なら何もせずで

「眼鏡外すな」なら低評価で


お願いします。感想もお待ちしております。

今回もお読み下さり、ありがとうございました。


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