第67話 老女
レイが席に着くと、ちょうどサクが教室に入ってきた。
「おはよう」
「おはよう」
お互いに挨拶をして、何かを話しかけようとした時。
ガラ、ガラ、ガラ。
教室のドアが開く音がして、マーク校長が入ってきた。
「遅刻してる奴はいるか?」
教室全体を見回して、「よし」と声が聞こえた。
「誰も欠席はいないな。では、治療学の担当の先生を紹介する」
入ってきたのは、八十を越えた小柄な老女だった。
肩まで伸びた白髪は飾り気なく後ろで束ねられ、細い顔には深い皺が幾筋も刻まれている。けれど、灰色の瞳は澄んでおり、見つめられると心の奥まで見透かされてしまう印象を受ける。
身にまとうのは、白と薄い灰紫を基調とした質素な神官衣。胸元には小さな木札を下げ、節くれだった手で古い木の杖を握っている。背はわずかに曲がっているものの、立ち姿は凛としていて、老いを感じさせない。
そして、レイも含め、数人が同時に声を上げた。
(あ、確か治療院で……)
「ルーヴァじゃ。よろしくおねがいしますじゃ」
しわがれた声で、老女は自己紹介をした。
(治療院で会った時より、なんだか元気そう)
「わしは講師を頼まれたからか、元気になったのじゃ」
「え」
思わず、声が漏れた。
ルーヴァは、皺の中の目を細めて、教室を見回した。
「みなの顔に書いてあるぞ」
(……見透かされてる)
「これからよろしくじゃ。マーク校長から話があった通り、治療学担当じゃ」
杖を軽く床に突いて、ルーヴァは続けた。
「長生きも、悪くないものじゃの」
そして、教室をぐるりと見回す。
「今日は、質問タイムにしようと思っているのじゃが」
「なんでもよいぞ。わしに答えられることなら、なんでもこいじゃ」
そこで、マーク校長がみんなに伝えた。
「じゃ、俺はこれで。ルーヴァさん、よろしくお願いします」
「マーク校長、ではまた」
マーク校長はそう言って、教室を出ていった。
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