第62話 紫雷
「私は、風・火・水・土属性を使えて、得意なのは風属性なんだよ」
メルが、上目遣いでレイを見た。
(四属性……)
すごい。みんな、いろんな魔法を扱えるんだ。
そう思った瞬間、何かが引っかかった。
(あれ? ってことは……)
カイが三つ。レンが三つ。メルが四つ。
(僕だけ、一つ……?)
(——あ)
そこで、ようやく気づいた。
三人が言いにくそうにしていた理由。視線を交わしていた理由。メルが最後まで言い淀んでいた理由。
(そうか。みんな、僕に気を使ってくれていたのか)
レイは、納得したように頷いた。
そこへ、カイが恐る恐る口を開く。
「もしかしてと思ったんだけどさ」
「うん?」
「多分、みんな魔法は三属性以上使えるぞ」
「え」
「一つの属性しか使えない人の方が、珍しいんだ。しかも、雷だから……余計にさ」
「——え?」
レイの動きが、凍りついた。
一つしか使えない方が、珍しい。
(そう、なんだ)
知らなかった。誰も、教えてくれなかった。
(父さんも、兄さんも——というか、みんな。僕に気を使って……)
あの日の食堂の沈黙。
「無理はするな」という兄の言葉。
黙ったままの父の横顔。
全部、そういうことだったのか。
(……ずっと、知らずにいたんだ)
胸の奥が、少しだけざわついた。
でも。
「ごめんね、みんな。今まで気を使わせちゃって」
レイは、顔を上げた。
「大丈夫」
指先に、紫雷をばちっと一瞬だけ弾けさせる。
小さく、細く、頼りない光。
でも、確かにそこにある光。
「僕は、この紫雷が好きだから」
三人の顔を、順番に見ながら言う。
「それは、今もこれからも変わらない」
——好きなものを、無理に嫌いにならなくていいのよ。
いつか、母がそう言ってくれた。
あの言葉は、今も自分の中にある。
「でも、びっくりしたよ。というか、最近で一番」
レイは、笑いながら付け足した。
カイ、レン、メルは、ほっとした表情で胸をなでおろしていた。
そこで、レイはあることに気づく。
(みんな風属性を使えるなら、ぜひとも鍛錬に付き合ってほしいな)
火属性や土属性は当たると痛そうだし、水属性は濡れちゃうし、土がつくと汚れるから着替えないといけない。
(風なら、ちょうどいい)
レイは、今まで考えていた練習方法を、みんなに伝えることにした。
ここまで読んで頂きありがとうございました!




