第52話 新鮮な下校
レイは、みんなと一緒に帰ろうと、一組の様子をうかがった。
けれど、まだ先生の話が終わっていないらしい。
仕方なく、一人で帰ろうとした時——
「お、レイ。一緒に帰ろうぜ」
サクだった。
「うん」
サクと一緒に帰ることになった。
サクと下校することになるなんて自分でも驚いている。
「王都から指南役が来たんだってな。俺も行きたかったなー」
「ちょうど、父ちゃんの手伝いで行けなかったんだ。あ、俺の親、建築関係の仕事してるんだ。だから、急に仕事ほっぽり出すわけにいかなくてさ」
「……そうなんだ」
「レイは、訓練行ったのか?」
「うん。ほぼ毎朝」
「うわ、まじか」
サクが、目を丸くした。
「どんなことやったんだ?」
「素振りとか、身体強化とか……色々」
「へー! いいなー、俺も混ざりたかったよ」
サクは、羨ましそうに言ってから、少し肩をすくめた。
「まあ、あの時期は屋根の修理が立て込んでてさ。父ちゃん一人じゃ手が足りなかったんだ」
「大変だったんだね」
「まあな。でも、屋根の骨組みとか、水路の継ぎ目とか——結構、面白いんだぜ」
サクの声が、少しだけ弾んだ。
「今度、屋根が壊れたら教えてくれよな。直しに行くから」
サクが、あっさりと言った。
「……いいの?」
「もちろん! 友達だろ」
その一言に、レイは少しだけ驚いた。
(友達……)
まだ会ったばかりなのに、もう友達と言ってくれる。
「うん。ありがとう」
「よし、決まりな」
サクは、にっと笑った。
町の景色が、いつもと違う人と歩くだけで、少し違って見えた。
⬜︎
サクと別れてから、レイは一人で家路についた。
町の景色を眺めながら、今日一日を振り返る。
朝は、心細かった。カイもレンもメルも一組で、自分だけが違うクラス。誰も知らない教室に、一人で座っているのは、思っていたよりずっと寂しかった。
(最初はどうなるかと思ったけど……)
サクのことを思い出す。
「同年代の知り合いいなくて、寂しかったんだ」——そう言っていた。
自分だけじゃなかった。そう分かっただけで、随分と気持ちが軽くなった。
(サクのおかげで、なんとかなりそうだ)
歩きながら、レイは指を折って数えた。
学舎は五日。そのあとの二日は、休みになる。
(休みの日は……)
朝鍛錬は、休みの日も続けるつもりだ。カイたちと約束している。
でも、それとは別に。
(廃坑に、また行ってみよう)
あの日、影に「避け続けろ」と言われたきり、まだ行けていない。何を教わっているのか、まだよく分からない。それでも、行きたい気持ちが強まる。
(明日から2日間、休みだってマーク校長が言ってたし)
家が見えてくる。
一日分の疲れと、それでも少しだけ軽くなった心を抱えて、レイは屋敷の門をくぐった。
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