第51話 出会い
教室に入ると、机には一つずつ、名前を書いた札が置かれていた。
自分の名前を見つけて、腰を下ろす。
周りでは、もう何人かが話し始めていた。同じ組になれたことを喜んでいる子たちの声が、あちこちから聞こえてくる。
(一人って、寂しいな)
今まで、いつも誰かがいてくれた。カイがいて、レンがいて、メルがいて。こんな気持ちになるのは、久しぶりだった。
(……気まずい。帰りたい)
そんなことを考えて俯いていると——
「お前、名前なんて言うんだ?」
不意に、前の席から声がかけられた。
顔を上げると、赤茶色の髪の男子が、椅子の背もたれに腕をかけて、こちらを振り返っていた。朝礼で、真っ先に手を挙げていた子だ。
「俺はサク。よろしくな」
「……僕は、レイ。よろしく」
それだけ言うのが、精一杯だった。急に話しかけられて、言葉が出てこない。
「さっき、先生に面白い質問してたよな?」
サクが、笑いながら言った。
「みんな驚いてたぞ」
「……なんだか、気になって」
レイは緊張し過ぎてそれ以上、言葉が出てこなかった。
「そっか! まぁ、これからよろしくな!」
サクは、あっさりと言った。それから、少しだけ声を落とす。
「俺、同年代の知り合いいなくてさ。ちょっと寂しかったんだ」
「えっ」
思わず声が出てしまった
「だから、仲良くしてくれると助かる」
(……そうだったんだ)
一人だったのは、自分だけじゃなかった。
「こちらこそ。これから、よろしく」
知り合いが、一人できた。
ガラガラ、と教室のドアが開いた。
マーク校長が入ってくる。
「お、みんな緊張してるかー?」
返事はない。何人かが、曖昧に首を縦に振った。
「とりあえず、席につけよー」
ざわめきが収まり、生徒たちが自分の席に戻る。
「さっきも紹介したが、担任のマークだ。よろしく」
そう言って、教壇に手をついた。
「楽しい学舎生活と、青春送れよ」
(……青春って、なんだろう?)
「とりあえず、今日はこんなところだ。みんな緊張してると思うからな。今日はこれで終了だ」
「えぇ」
誰かが、驚いたような声を上げた。
「明日から、一日授業が始まるから。頼んだぞ」
マークは、ぱんと手を叩いた。
「以上! 解散!」
マークが、教室を出ていこうとして、ふと足を止めた。
「あ、忘れてた」
生徒たちが、動きかけていた手を止める。
「明日から、二日休みだ。ゆっくり休んでおけよ」
そう言い残して、今度こそ教室を出ていった。
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