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紫雷の魔法使い  作者: 黒猫
ヴェイル領 第二部
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第49話 朝礼

「ただ、まぁ」

マークは言い淀む。


「理想は、毒に身体を慣らすことだがな」

マークは、笑いながらそう言った。


(毒に身体を慣らす……? それって、どういうこと?)


レイには、意味が分からなかった。


「戦闘で、毒を喰らうこともあるかもしれんからな」


「あの」


前の方から、手が挙がった。

赤茶色の髪を短く切った、小柄な男子だった。髪はあちこちに跳ねていて、整える暇もなかったように見える。


「水魔法で解毒すれば、いいのではないでしょうか」


「その通り!」


マークは、大きく頷いた。

「——さっきのは冗談だ」


「変なこと言わないでください」


その少年が、呆れた声を出す。広間に小さな笑いが起きた。


緊張していた空気が、少しだけ緩む。


「よし。何か質問があるやつはいるか」

マークが見回す。誰も手を挙げない。


「じゃあ、とりあえず——」


「あの」


気づけば、レイは手を挙げていた。


「毒に身体を慣らしたら、強くなれますか」

——広間が、静まり返った。


隣で、カイとレンとメルが驚いてこちらを見たのが分かった。


(……あ)

言ってから、少しだけ後悔した。冗談だと、たった今マーク先生が言ったばかりだ。


けれど、聞いてしまった。


マークは、片眼鏡の奥の目を、少しだけ細めた。

「なぜ、強くなりたい?」


責める声ではなかった。ただ、理由を知りたいという、静かな問いだった。


レイは、少し迷ってから答えた。

「……外の世界に出るために、できることをなんでもしたいんです」


「ほう」


「僕が知っている人たちは、僕の想像を、遥かに超えているんです」


ザック先生。アイ先生。それに——師匠

自分がどれだけ届いていないか、想像もできない。


マークは、しばらくレイを見ていた。

それから、ふっと笑った。


「ほぉ〜。面白いな」


「え?」


「わかった。とりあえず、その答えは、授業でゆっくり答えていこう」


そう言って、マークは他の生徒たちの方へ視線を戻した。


「他にあるやつはいるかー? ……いないな。じゃあ、よろしく」

ここまで読んで頂きありがとうございました!

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