第46話 印象
——空気が、変わった。
外の夏の熱が、ふっと遠のく。石造りの建物の中は、思ったよりも涼しかった。
そして、天井が——高い。
見上げると、太い梁が幾重にも渡されている。屋敷の広間よりも、ずっと上にある。声が反響して、大勢の話し声が、水の中にいるように混ざって聞こえた。
(すごい……)
両側の壁には、縦長の窓が並んでいた。硝子は古く、ところどころ気泡が入って歪んでいる。そこから差す光が、石の床に細長い形を落としていた。
壁際には、燭台が等間隔に取り付けられているが、今は火が入っていない。昼間は必要ないのだろう。
奥の方に、床が一段高くなっている場所があった。
(あれ、なんだろう)
段差の上には、今は何も置かれていない。ただ、そこだけ石の色が違っていた。長い間、何かがそこにあったような跡だけが残っている。
「祭壇があった場所だって」
隣で、メルが言った。
「今は、朝礼とかで先生が立つところ」
「……祭壇」
かつて、誰かがそこで祈っていた。その同じ場所に、今は先生が立って、生徒に話をする。
不思議な感じがした。
広間には、もう何人もの生徒が集まっていた。同じ制服姿の子たち。初めて見る顔がほとんどだ。
「レイ! メル!」
聞き慣れた声が飛んできた。
振り向くと、カイが手を振っていた。隣にはレンもいる。
二人とも、見慣れない制服姿で、少しだけ違う人のように見えた。
「おー、二人とも一緒に来たのか」
「うんそう!図書館の前であったの」
メルが自分の髪の毛をくるくるしながら答えた。
「にしても、レイの制服姿、なんか変な感じだな」
「カイもね」
(服装が変わるだけでこんなに印象って変わるんだ)
レイはそんなことを感じながら答えた
「言うなよ、朝から母ちゃんに三回も直されたんだから」
そう言うカイの襟は、確かにきっちりと整っていた。
「一年生は、こっちに集まってくださーい!」
奥の方から、上級生のよく通る声がした。
途端に、広間の空気が動き出す。
話し声がざわめきに変わり、生徒たちが一斉に声の方へ移動しはじめた。
「お、始まるっぽいな」
「行こう」
レイは皆んなとの新しい学舎生活に胸を躍らせていた。
四人も、その流れに乗って歩いた。




