第42話 心配
影との一件の翌朝、レイが朝食を食べていると、ガルドが口を開いた。
「廃坑で、魔術の練習をしていたそうだな」
(父さんも、知っていたのか)
思わず、エマを見た。
エマは、すっと顔を逸らした。
(……心配、されてたんだな)
「はい。魔術の練習をしすぎて、疲れてしまいました」
「兄さま、あまり無理はしない約束ですよ」
ミアが、心配そうに言う。
「無理だけは、するなよ」
エリオも、短く付け足した。
「怪我はしていないので、大丈夫です。雷を通す練習をしていただけです」
ガルドは、しばらくレイを見ていた。
「分かっているな。廃坑の奥へは、行かないこと」
レイは、一瞬だけ言葉に詰まった。
「……はい。分かっています」
嘘をつくことに、胸の奥が少しだけ痛んだ。
「まぁ、なんだ……レイ、勉学に励めよ。今年から新しい先生が王都から着任するらしいから、色々学ぶことができるかもしれないぞ」
その後、ガルドとエリオは領地の話に移っていった。
「今年は、例年よりも農作物が良く育っているみたいです」
「そうか、それは楽しみだ。今年は少し農業にも、もう少し力を入れられそうだな」
ガルドとエリオの話は、領地の方へ移っていく。
その声を半分だけ聞きながら、レイは俯いていた。
(二人はすごいな。領地を守っていて。それに比べて、僕は……)
「兄さま」
隣から、小さな声がした。
ミアだった。ガルドたちの会話とは別に、レイにだけ聞こえる声で。
「エマが、すごく心配していたんですからね。気を付けてください」
釘を刺されてしまった。
「うん、気を付けるよ。……そういえば」
話題を変えることにした。
「なんだか、顔色が良さそうだね」
ミアは、少し驚いたように答えた。
「……最近は、調子が良いかもしれません」
レイは、話題を変えられたことに安堵しながら、学舎のことを考え始めた。
朝食の間、廃坑のことをそれ以上追及されることはなかった。
⬜︎
「そういえば、来週から学舎が始まるんだよな?」
エリオが、思い出したように言った。
「確か、魔術というより、生活のための知恵を学ぶところでしたよね?」
ミアが、小首を傾げながら言う。
「そうそう。懐かしいなあ、あそこで本当にいろいろ学んだよ」
レイは、まだ影のことを考えていた。
(あの場所には、また行っていいのかな。……ところで、あの影は、何て呼べばいいんだろう。先生、とか?)
「レイも、楽しんで来いよ」
「……あ、はい。楽しみです」
一拍、遅れた返事だった。
「大丈夫か?」
エリオが、怪訝そうな顔をする。
「……ちょっと、寝すぎちゃったみたいで。まだ、ぼーっとしてます」
「兄さま、ちゃんとしてください」
ミアに、そう言われてしまった。
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