第40話 再会
レイは、ゆっくりと中に入った。
黒い床の空間は、あの日のままだった。
継ぎ目のない、鏡のような黒。天井は高く、光源も分からないのに、ぼんやりと明るい。
(……誰も、いない?)
左右を見回す。
「——きたか、小僧」
「っ……!」
声を上げそうになるのを、必死でこらえた。
いた。
空間の奥——百歩はありそうな距離に、人の形をした影が立っている。灰色の外套。あの日と同じで、やっぱり顔は分からない。
(攻撃は……してこない?)
影は、動かない。ただ、こちらを見ている——気がする。
得体の知れない恐怖を、腹の底に押し込む。
レイは、掠れた声で聞いた。
「……聞きたいことが、あります」
「なんだ」
「雷は、撃つものじゃないって——どういうことですか。教えて、ほしいです」
直後だった。
音もなく、影が目の前にいた。
その距離、わずか数歩。
百歩の距離が、消えていた。驚く間も、声を上げる間もなかった。
「————」
心臓が、遅れて跳ねる。
影は、レイを見下ろしていた。顔は分からない。分からないのに——
(……笑った?)
「恐怖に耐えて、よくきた」
影は言った。
「あいわかった。修行を始めるとしようか」
「……え」
(修行……? 雷について、教えてもらいに来たんだけど……)
「あの——」
「あそこに台座がある。その剣を、突き立てるといい」
影が示した先に、石の台座があった。
以前来た時には、気づかなかった。けれど確かに、そこにある。床と同じ黒い石で、中央に細い溝が刻まれていた。
「な、なんで——」
「保険だ」
「……保険?」
意味が、分からなかった。
けれど、聞き返せる空気でもなかった。レイは台座へ歩き、鞘から古剣を抜いて、溝に突き立てた。
——何も、起こらない。
(……これで、いいのかな)
振り返ろうとした、その時。
「小僧よ。避け続けろ」
「え?」
声のした方を見る。
影は、もういなかった。
直後——
レイの右斜め後方の地面が、爆ぜた。
「えっ?」
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