第19話 3日目 魔力量の壁
訓練が終わったあと、レイはしばらく訓練場に残っていた。
他のみんなは徐々に帰って行く。カイが手を振りながら「また明日」と言って去った。
レイは石を掌の上に乗せたまま、もう一度、魔力を這わせてみる。
紫電が、静かに広がる。
石を包み込むように。
魔力コントロールは、できる。
ザックにそう言ってもらえた。エリオも驚いた顔をしていた。それは素直に嬉しかった。
でも。
(僕の魔力って、どのくらいなんだろう)
石を包んだとき、思いのほか早く魔力が底をついた感覚があった。エリオは同じ練習を何度繰り返しても、まだ余裕があるように見えた。カイも、うまく包めてはいなかったが、何度も繰り返す事ができていた。
レイはもう一度、石を包もうとした。
紫電が走る。広がる。均一に。
——そして、途切れた。
魔力が、尽きた。
石の上の膜がぱっと消える。掌の中に、白い石だけが残った。
(やっぱり、少ない)
自分でも、うすうす気づいていた。雷魔法で的の端を焦がすくらいはできる。
でも威力という点では、同じ年頃の他の属性の子たちに比べて明らかに劣っていた。
コントロールは得意かもしれない。でも、コントロールできる量が、そもそも足りない。
それは、認めたくないが事実だった。
(どうすれば増えるんだろう)
答えは、今のレイには分からなかった。
(明日聞いてみよう)
石を革袋に戻して、レイは立ち上がる。
空はだいぶ明るくなっていた。朝露を含んだ草の匂いが、まだ辺りに漂っている。訓練場から遠くに領主館の屋根が見えた。
(でも、今日は僕の雷が少し認められた気がした)
それだけで、頬が少し緩んだ。
その時、不意に肩を叩かれた。
振り返るとそこに兄のエリオがいた。
「レイはすごいな何度やっても石全体をムラなく包み込む事ができなかったよ」
「ヴェイル領じゃなくて、違うところに行けば今よりももっと雷魔法について教えてもらう機会がありそうだな」
「その方がレイに合ってるのかもな」
レイは一瞬、何と返せばいいか分からなかった。
「ありがとう兄さん」
少し、歯切れの悪い言い方になってしまったが、一言そう答えた。
エリオは先に行ってるぞと言って一足先に領主館へ戻って行った
レイは革袋を握る手に無意識に力が入っていた。そのことを自覚することなく訓練場をあとにした。
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