第16話 1日目 様々な魔法
レイは、息を深く吸い込んだ。
肺の奥に冷たい空気が染み渡る。
胸の高鳴りを押さえつけ、指先に意識を集中させる。
(兄さんみたいに、ちゃんと的に当てないと)
ザックの視線が、そっとレイのほうへ向かう。
「レイ君、次はどうぞ」
「はい」
声は、思ったより小さく震えていた。
けれど、その小さな声に合わせるように、指先の紫電が、ぱちり、と少しだけ強く光った。
レイは、木の的をじっと見つめる。
距離は、兄が撃った時と同じだ。
夜露を含んだ土の匂いが、鼻の奥をくすぐる。
(雷を束ねて線のようにして)
指先から、細い紫の筋が走る。
空気がわずかに焦げる匂いがした。
次の瞬間、雷光が、ぴしっ、と訓練場を駆け抜けた。
――命中した。
けれど、兄のように的の中央に穴は開かなかった。
木の的の端を、かすめるように焦がしただけだった。
「……っ」
レイは、唇を噛んだ。
周囲から、かすかなざわめきが聞こえる。
自分でもわかる。威力も、精度も、兄には遠く及ばない。
ザックは、しばらく的を見つめていたが、やがて穏やかな声で言った。
「雷属性は、扱いが難しい属性です。それでも、的の端を焦がすだけの魔力を、十二歳で出せたのは立派ですよ」
「……でも、兄さんみたいに、的に当てる事はできませんでした」
「比べる必要はありません。あなたはあなたのペースで、魔法を磨いて育てていけばいいのです」
レイは、黙ってうなずいた。
アイが、腕を組んだまま、低い声で言う。
「魔力の扱いは、ザックに任せる。だが、身体の鍛え方は、私が教える。今日の魔術確認が終わったら、全員、剣の素振りから始める」
若者たちの顔に、今度は別の種類の緊張が走る。
ザックは、苦笑いを浮かべた。
「では、次の方、どうぞ」
訓練場に、再び魔法が走り始める。
火の玉が的を焼き、水の矢が的を貫き、風が的を切り裂く。
それぞれの属性が、その人にあった方法で的に魔法を当てていく。
レイは、指先に残るわずかな痺れを感じながら、静かに息を整えた。
(兄さんだけじゃない、他の人達もしっかり的に当てている、威力は僕の雷の何倍も上だ)
レイはみんなが放つ魔法を見ながらその光景に胸の高鳴を感じた。
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