表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/28

第15話 1日目 的当て


東の空がわずかに白み始めたばかりの、夜と朝の狭間。太陽が昇る前の訓練場は、どこか厳かな青い闇に沈んでいた。


立ち込める薄い朝靄あさもやの向こう、踏み固められた土の訓練場は、夜露を含んでしっとりと黒く濡れている。頻繁に使われないがゆえに、人の足跡が少ない。


冷たく張り詰めた空気を吸い込めば、肺の奥が痛むほどに澄んでいる。人の気配を拒むような静寂の中で、きれいに手入れされた木柵だけが、かすかな光を浴びてその輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていた。



レイは訓練場の端に立ち、指先をそっと握った。


これから始まるのは、王都の魔法士による訓練だ。


雷属性を教えてくれる者など、ヴェイル領にはいない。


期待はしていた。けれど、それと同じくらい、不安もあった。


集まったのは、十二歳から三十歳ほどまでの男女十名ほどだった。

農家の次男、見習い兵、鍛冶場の若者、使用人筋の少年。皆、慣れない早朝の空気の中で、少し緊張した顔をしている。


エリオもいた。

兄は訓練場の中央近くに立ち、いつも通り背筋を伸ばしていた。領主家の後継ぎとしての覚悟があるからだろうか堂々としていた。


レイはその少し後ろに静かに立つ。

ザックは銀の杖を片手に、集まった者たちを見渡した。


「今日は初日です。まずは皆さんの魔力の扱い方を確認します。無理に強い魔法を使う必要はありません。大切なのは、魔力を乱さず、コントロールすることですから」


とても穏やかな声だ。 それだけで、集まっていた若者たちの肩から少し力が抜けた。


少し離れた場所では、アイが細身の剣を腰に下げたまま、腕を組んで立っていた。


「剣や護身の訓練は、私が見る。今日はまず、ザックの魔術確認を優先する」


短い言葉だったが、それだけで空気が引き締まった感じがした。

ザックは訓練場の奥に並べられた木の的を杖で示した。


「では、最初は的当てから始めましょう。火でも水でも土でも構いません。自分が扱える属性で、的に当てて見てください」


みんな横一列になり、的に目掛けて魔術を放つ準備をする。


(あの的まで雷が届くように気合いを入れないと)

ぱち、と指先で小さな紫電が弾ける。


「まずは、エリオ君からお願いできますか」


「はい」

エリオが一歩前に出る。

足元の湿った土が、わずかに震えた。

次の瞬間、エリオの隣から頑丈そうな土壁が競り上がる。


そして。


土壁の表面が、ぼこりと丸く盛り上がる。盛り上がった土は一瞬で硬く固まり、拳より小さな石礫へ変わった。

エリオが片足で軽く地面を一度、叩いた。


ぱん、と乾いた音がした。

次の瞬間、木の的の中央に穴が空いた。


遅れて、的の後ろの土に石がめり込む鈍い音が響く。


周りのみんなも驚いている。 ザックも関心している様子だ。


(すごい、兄さんの土魔法がここまですごいなんて)


ここ数年は父と石垣などを作ってる様子しか見てなかった。


「この年齢で正確に的を撃ち抜き」

「威力も申し分ない」

「次の領主として優秀ですね」


ザックにそう言われ、 兄はとても嬉しそうだった。


やっぱり兄は魔法も領地運営も才能がある。


(僕も負けていられない)

バチ 指先の紫雷が弾ける音とともに気合いが入った。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ