表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/29

第13話 治療院

レイは、ヴェイル領の魔法士について考えていた。


 ヴェイル領にも、生活魔法や土属性の基礎を扱える者はいる。畑の土を整えたり、簡単な補修をしたり、領地を守るための最低限の魔法を使える者はいる。


 けれど、強い魔法使いや、属性ごとの基礎を専門的に教えられる者はほとんどいない。


 辺境で報酬や名声が少なく、王都からも遠い。魔法士にとって、出世や研究につながる場所でもない。


 だから才能のある者は、王都や大きな街へ出て行ってしまう。


 特に雷属性は、もともと珍しいと聞いたことがあった。


 だから、雷属性を教えてもらえる機会など、滅多に訪れない。


(雷の使い方を教えてもらえれば、今よりはきっとできる事が増えるはず、頑張って教わるぞ)


(でも今日はまず、肩を治療士に診てもらいに行かないと)


次の日、領地にある小さな治療院を訪ねた。


治療院といっても、領地の端にある古い民家を改装したものだ。水属性を少し扱える老いた女性が一人で営んでいて、骨折や切り傷、熱の高い子どもを診るくらいが限界だと聞いている。


トントン

「どうぞ」


少し、しわがれた声が聞こえた。


レイは引き戸の取手に手をかけ開けると、薬草の乾いた匂いが漂ってきた。


ここに来たのはいつぶりだろうか?

随分と前のような気がする。


「レイ様とは珍しいどうされましたかい?」


老女は少し驚いた顔で聞いてきた。


なんだか凄く不気味な感じがする。

部屋を見渡しながらレイは思った。

薬のために薬草やら魔獣の骨みたいな物が所狭しと置いてあった。


「廃坑で動きすぎて転んでしまいまいました」


「そうでございましたか、若い時にたくさん動くことはとても良い事じゃ」


老女は歯が少ない口を大きく開きながら笑った。


肩と脇腹を診てもらいながら、レイは昨日のことを考えていた。あの顔の見えない剣士。ただ一言。


 良い雷だ。


 それだけだった。その直後、一撃で倒された。気づいたら前室の石畳の上に寝ていた。


 褒められたのか、試されたのか、今でもよくわからない。


「痣になってますが、骨折はしてなさそうですじゃね」


それを聞いてレイはほっとした。


(でも、蹴られて吹っ飛ばされたと思ったけど)


「何を心配してるんですかい?」

「大丈夫、このくらい治せますじゃ」


あの剣士について考えていると老女の声で現実に戻された。


「あ、はい、ありがとうございます」


老女の手の手掌の中心から何かが溢れ始める。そして澄んだ水の膜のようなものに変わる。ついで掌全体にじわりと広がった。それをそのまま、打撲の上に、羽根が降りるよりも静かに当てる。


魔力が皮膚の下へ、薄い膜のように染み込んでゆく。滞った血の流れをほぐすように、細い水の指がそっと絡み、解き、また流す。治るのではなく、治ろうとする力を手伝っている——そんな感覚。


数分が経った。


青紫の色が、少しだけ、端から薄れていた。


「完全には無理ですじゃ」


彼女は掌を離し、小さな布包みを取り出した。中には薄い貼り薬が数枚。薬草の匂いがほんのりした。


「これ、今夜貼って寝れば、明日にはだいぶ楽になると思うのじゃが」


「痛みがだいぶ楽になりました」

「ありがとうございます」


「怪我したらまた来るのじゃぞ」


「はい!」

「これで王国の魔法士の指南に臨めそうです。」


「頑張るんじゃぞ、王国の鍛錬は多分、厳しいと思うが応援しとるぞ」


老女にお礼を言ってレイは治療院を後にした。


ここまで読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ