第三話 高橋 洸探検家シリーズ 『謎の珍獣、ゴダイゴを追え!』
西暦2082年5月12日 火曜日 午後5時5分
(あ……ありのまま 今 起こった事を話すぜ! 五十嵐さんが病室を出て行ったと思ったら、いつのまにか背が縮んだ五十嵐さんが病室の中にいた!)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴと何やら重苦しい音が僕の脳内のみで響く。
とりあえず混乱する頭を静める為、目を瞑り深呼吸をする。
「ヒッ、ヒッ、フーッ……ヒッ、ヒッ、フーッ!」
(いや待て落ち着けこれは深呼吸じゃない!何をやっているんだ僕は!!)
今度こそちゃんと深呼吸をしよう。
「スゥ……ハァーッ……スゥ……ハァーッ……!」
頭の中がすっきりクリアになる。
(よし、落ち着いた)
もう一度、ベッドにいる白いパジャマを着た女の子を見る。
背丈からして小学生中学年くらいかな、本当に五十嵐さんにそっくりだ。
(あれ……? そういえば……)
ふと思い出し、戸に付いているプレートを見る。
『103 五十嵐 美雪』と書いてある。
(五十嵐さんの妹さんだろうか?姉妹なら似てる可能性はあるし……)
さっきまで勝手にパニックになっていた僕が馬鹿らしく思えてきた。
(そうだよな、背が縮むなんて……昔の漫画の高校生探偵じゃあるまいし……)
フゥーと安心して息を吐く。緊張が一気が緩む、それがいけなかった。
「ありゃ、洸君?」
「ふぁ、ふぁい!?」
背後から声を掛けられ、反射的に気を付けをして振り返る。
ヨレヨレの白衣を身に着けたお爺ちゃん、山口先生が立っていた。
僕が気を緩んだせいで足音が聞こえなかったんだろう。
なんて説明したらいいか、頭の中が大パニックになった。
(待て待て待てどう言い訳をすればいやもうばれたんだ覗いてた事を素直に謝ろうそうしようそれがいい)
「あ、あの! すみま……」
「ああ、美雪ちゃんのお見舞いかね? 入ってええよ」
(最後まで言わせてくれなかった……!)
思わず膝から崩れ落ちそうになるが、なんとかふんばった。
山口先生は病室の戸をコンコン、とノックして喋りかける。
「美雪ちゃん、お客さんだよー」
「はーい、だぁれー?」
とっても可愛らしい声が聞こえる。
ギクシャクとした動きで山口先生の顔を見る。
山口先生は一回頷き、戸の方に視線を向けた。
その動作に「さぁどうぞ」という意味が込められている事は、説明されなくても分かる。
僕に逃げ場はないと悟り、あきらめて戸の取っ手を握った。
「お兄ちゃん、だぁれ?」
僕が病室に入ると、美雪ちゃんと呼ばれた女の子がベッドの上から上半身をこちらに向け、つり気味な目をキラキラさせて話しかけてきた。
「あ、あの……僕は……」
(一体何て言えばいいんだろう……多分だけど、この子は五十嵐さんの妹さんだから…君のお姉さんのクラスメイトです、って言えばいいのかな)
「きみのおね……」
「ストップストップ! 美雪が当ててあげるね!」
手を上下にブンブン振った後、腕を組み難しそうな顔をして、何やら考えこんでいる。
しばらくしてから……表情をパァ明るくして、「分かったァ!」と叫び、右手の人差し指をバシィ! と僕に向け更にまた叫ぶ。
「お姉ちゃんの恋人ね!!」
(お姉ちゃんの恋人? おねえちゃんのこいびと? オネエチャンノコイビト?)
突然で予想外の言葉を僕の脳は理解ができず、脳内の会議室で沢山の小さい僕が
ワラワラと集まり、緊急会議を始めた。
~僕の脳内~
「みんな揃ったな。では、これより第4649回緊急脳内会議を始める。議題はこの『お姉ちゃんの恋人』の意味だ」
「まず、この美雪ちゃんは五十嵐 月子さんの妹さんなのでは?」
「そうだね、そう思うよ」
「うん、僕も」
「ちくわ食べたい」
「じゃあ、この議題の『お姉ちゃんの恋人』の『お姉ちゃん』って……五十嵐 月子さんを指してるんじゃない?」
「まあ、そうでしょう」
「異議なし」
「ちくわ食べたい」
「『恋人』は……そのまんまの意味だろう。他に意味があるとは思えん」
「そうだね」
「ああ」
「ちくわ食べたい」
「よし、答えは出たな。主に至急、報告だ」
「「「おーう」」」
「ちくわ食べたい」
~現実~
「いやいや! いい、五十嵐さんとはべべべ、別にそんなんじゃないよ!! た、ただのクラスメイトだよ、うん! ハッ!? ちくわ食べたい!!」
意味を理解した瞬間、顔全体が沸騰したみたいに熱くなり、気付いたら早口で一気にそんな事を言っていた。慌てすぎだろ僕。後、ちくわ食べたいって何だ。
「アハハ、お兄ちゃん、顔真っ赤ー!」
美雪ちゃんは口に両手を当ててキャッキャッと笑っている。
笑われて幾分か冷静さを取り戻した。
美雪ちゃんの笑いが落ち着いたところを見計らって声を掛けた。
「ねぇ、お姉ちゃんって月子さんだよね? 僕、月子さんのクラスメイトなんだ」
「うん、お姉ちゃんは月子だよ。お姉ちゃんの恋人じゃないのか、ざんねーん」
と、残念がりながら頬をプゥーっと膨らませる。雪子ちゃんと五十嵐さんの顔が似ているので、五十嵐さんが頬を膨らませるとこうなるか、と嫌でも想像してしまい、思わず「ブフォ!!」と噴出してしまった。
いつも人形のような表情の五十嵐さんとのギャップが凄まじくツボに入ったのだ。でも笑うのは五十嵐さんに凄く失礼な気がする。
「何を笑ってるのー?」
不思議そうに首を傾げ訊いてくる。
「い、いや……な、なんでもないよ……クッ、ププ……」
「えー、気になるー」
美雪ちゃんはまたプクゥーっと頬を膨らませる。
(ヤバイ、これ以上は腹筋がヤバイ!! 助けて!!)
両手で口を押さえギリギリ耐える。
これ以上はヤバイと判断した脳が指示を出す。
(そうだ、窓を見よう!)
首を素早く動かし窓の外を見る。
外は夕日でオレンジ色に染まっていた。
夕日の光に反射してオレンジ色にキラキラ光るたくさんの民家の屋根、奥に見えるゆっくり動く風車、犬の散歩をしている子どももいる。
綺麗な景色だな…でも、何だか無性に寂しいという感じもする。
(なんで、こんなに寂しく感じるんだろう……)
なぜ寂しく思うのか窓の外を見ながら思案に耽ってると、美雪ちゃんに呼ばれた。
「お兄ちゃーん」
「ん?」
美雪ちゃんに視線を向ける。
そこには頬を限界にまで膨らました美雪ちゃんがいた。
僕の腹筋は崩壊した。
3分ほど笑い続けただろうか、腹筋がつりそうだ。僕が笑ってるのを見て、美雪ちゃんもずっと笑っていた。
僕の笑いがとりあえず収まったところで美雪ちゃんが質問してきた。
「そういえば、お兄ちゃんのお名前なんていうの?」
「え、ああ。言ってなかったね。僕、高橋 洸って言うんだ」
そう言いながら、ベッドの前に置いてある丸椅子に腰掛ける。
「洸?洸お兄ちゃんって呼んでもいい?」
「うん、いいよ」
少なくとも洸おじさんとか呼ばれるよりはずっと良いと思う。
「ねえ、洸お兄ちゃん。今日は何で来たの?」
「え、えっと……それは……」
(君のお姉ちゃんが病室から出てきて天使君と悪魔君がプロレスで戦って悪魔君が
勝って好奇心に負けて覗いていたら山口先生がやってきて成り行きで来ちゃった)
なんて言えない。口が裂けても言えない。っていうか意味が分からない。
(美雪ちゃんと五十嵐さんには悪いけど、嘘を付くしかないか……)
「え、えっと……そ、そう! 月子さんに妹がいるって聞いた事があって、会いに来たんだ」
僕は嘘を付いた事を、心の中で美雪ちゃんと五十嵐さんに土下座をしまくった。
「ふーん、そうなんだ!」
美雪ちゃんはキラキラした目で僕を見つめている。
嘘を付いた罪悪感でまともに美雪ちゃんを見れそうにない、
せめてこれ以上追求されないように話題を変える事にした。
「あー……そ、そうだ。美雪ちゃんは、お姉ちゃん好き?」
「うん、好きだよ! あのね、昨日具合悪くした時ね、お姉ちゃん、ピューンって来てくれたんだよ!」
ニパァと笑う。駄目だ、笑顔眩しくてを直視出来ない。
(って、昨日……ピューン?)
そういえば、昨日は急いでた五十嵐さんとぶつかった。
(美雪ちゃんが具合を悪くしたから、あんなに急いでいたのか……)
「あ、あとね! お姉ちゃん、よくご本読んでくれるの! この病院のね、美雪みたいに入院してる子にね、いっぱいご本読むんだよ!」
頭に雷が落ちたような衝撃が走った。
僕の中の五十嵐さんのイメージが360℃変わっていく。
(いや待て落ち着け、それじゃ一回転だ。なんだかおかしいぞ今日の僕)
やっぱり僕の中の五十嵐さんのイメージが180℃変わっていく。
(一見、とっても冷たい雰囲気の五十嵐さんだけど、妹思いで子どもに優しくて……なんて素敵な人なんだ)
僕の胸がキュゥン……と一瞬苦しくなった。頬に熱を帯びるのを感じる。
(これが恋か、恋なのか。恋なのかぁぁぁぁぁぁ!?)
両手で小さくガッツポーズをする。
「でも……」
声のトーンを落として美雪ちゃんが言う。突然の変わりっぷりに心配になり、横目でチラッっと見てみる。悲しそうな顔をして、下を向いている。
「でも……どうしたの?」
「えっと……お兄ちゃん、お姉ちゃんに言わない?」
「うん、言わないよ」
どうしてそんな事を言ったのか、自分自身でも良く分からない。
多分……だけど、美雪ちゃんの悲しそうな顔が、月子さんの悲しそうな顔に見えて…見てられなかったんだと思う。
「お姉ちゃんにもらったゴダちゃん、逃げちゃったの……怒られないかな……」
美雪ちゃんが取り出して僕に見せたのは、液晶が付いた白くて小さな四角形の何かだ。
「これは……」
美雪ちゃんの小さな右手にある、液晶画面が付いた白い四角い何か見る。
縦横は名刺くらいの長さで、厚さは大体3cmくらい。
表……と思われる前面には液晶画面が付いていて、すぐ近くに黄色いボタンが3つ並んでいる。
(はて、見た事のない物だ。なんだろう?)
首を傾げる。頭の中で何か似たような物がないかと探してみる。
(確か……ポケットベル。チラッと見ただけだけど近代現史の教科書に載っていた。携帯電話のような通信するための機械だったような…。でもゴダちゃんが逃げたとか言ってたし、関係ないよな。うーん、考えても分かんないな。美雪ちゃんに直接聞いてみるか)
「これは何かな? ゴダちゃんって何なの?」
下を向いて辛そうな顔をしている美雪ちゃんに優しく訊く。
「これね、ゴダちゃんのお家。ゴダちゃん、ここに住んでた……」
左手の人差し指で四角い液晶画面を指差す。
「ゴダちゃんは紫色のウサギさん、緑色のポツポツがいっぱいあるの。本当の名前は、ゴダイゴって言うんだよ」
ますます分からなくなった。頭の上にクエスチョンマークだ。
とりあえず今分かっている事をまとめよう。
(まず、ゴダちゃんの本当の名前はゴダイゴと言うらしい)
これは理解できる。
(次にゴダちゃんは、紫色のウサギで緑色のポツポツがいっぱい……紫? 緑?)
頭の中で、緑色の斑点を持つ紫のウサギを思い浮かべる。
(いや、待って! なんかこのウサギすっごい毒々しい! なにこれ!?)
「あ、あとね。ゴダちゃん、立って歩くんだよ。すごいでしょ。それと黒くてカッコいい眼鏡を掛けてるよ」
さっき頭の中に思い浮かべたウサギを立たせてみる。
(え?ウサギって立って歩くの? ……いや、そういえば立つし、歩く……かも。うん、これはいい……のか? 黒くてカッコいい眼鏡……サングラスかな? ウサギってサングラス掛けるっけ? いや、モグラだってイラストだとよくサングラス掛けてるし……掛けるのかな?)
ウサギにサングラスを掛けてみる。なんだかとっても偉そう。
そして次が最大の疑問だ。あの白い四角い何かが、ゴダちゃんのお家らしい。
(いやいやいや! あの白い何か、凄く小さいよ? あれがお家?)
想像したゴダちゃんをあの白く四角い物のサイズに縮めてみる。
うっかりすると気付かずゴダちゃんを踏んでしまいそうだ。
(緑の斑点がある紫のウサギで、二足歩行していてサングラスを掛けている。そして、うっかり足で踏みそうな程の超ミニサイズ……って、そんな生き物がいるわけないよね? 僕、からかわれてるの?)
ゴダちゃんのお家から、美雪ちゃんの顔に視線を向ける。
美雪ちゃんは目に大粒の涙が浮かべており、今にもポロポロこぼれ落ちそうだ。
「えぐ、えぐっ……ふぇぇ……」
「あああの、ちょ、みみみ美雪ちゃん!? だだだ大丈夫だから!!怖くない、怖くない! ほら、ハンカチ、ハンカチ!」
ズボンのポケットから青いハンカチを取り出して、美雪ちゃんの目元を優しく拭た。拭っても拭っても大粒の涙が溢れてくるので、何度も何度も拭う。
「洸おにいちゃぁん……ゴダちゃん、ヒック。見つけてェ! エグッ、ヒック」
「わ、分かった! 僕がゴダちゃんを見つけてあげるから!泣き止んで、ね?」
美雪ちゃんに一秒でも早く泣き止んで欲しくて、よく考えずに無責任にそう言ってしまった。
「ゴダちゃんね、エグッ。見つけたらね、ヒック。お家、入れて上げて」
「え、あ……わ、分かった!任せて!!」
美雪ちゃんが僕にゴダちゃんのお家を差し出してきたので、つい反射的に受け取ってしまった。
泣いている美雪ちゃんを放って置けなくて、彼女が泣き疲れて眠るまで、僕は傍に付き添ってあげた。
茂団市総合病院の帰り道、色々と考えてみる。
(ゴダちゃんはともかく……このお家の事、まったく要領を得なかったな。
でも泣いていたし、嘘をついて僕をからかっているようには見えなかった。
近代現史の教科書で見たポケットベルに似てるみたいだし、家に帰ったら早速調べてみよう。そういえば……美雪ちゃんは何で入院しているんだろう? どこが悪いのかな?)
西暦2082年5月12日 火曜日 午後7時25分
夕ご飯を食べた後、自分の部屋に戻った。窓の外は既に日が暮れて真っ暗だ。
布団の上にあぐらをかき、右手にゴダちゃんのお家を持ち、左手にはポケットベルの写真と解説が載っているページが開いてある近代現史の教科書を持っている。ページに目を向け、解説と写真を見てみる。
・ポケットベル
日本では1968年頃から一般人に使われ始めた。略してポケベル。
最初は連絡を取りたい人の通信機器に合図を送るだけだったが、改良により文字も送れるようになる。
1999年から携帯電話が普及し始め、だんだんを姿を消していった。現在は携帯電話でメールが出来るので、多くの一般市民からポケットベルは不要と判断され、世間からは“遺物”扱いとなっている。
(遺物……か)
遺物について、僕の知っている事をすべて思い出そうとする。
最も簡単に言えば、生産されなくなった物。
大まかに分けると二種類ある。
1
使用すると環境を破壊してしまうおそれのある物。
例えば火力発電機や原子力発電機、石油を使った乗り物等。
2
昔の娯楽の為の機械や人に悪影響を及ぼす物、不要な物。
2070年頃、世界は環境を破壊する全ての原子力発電機や火力発電機の稼動を止めた。その結果、多くの工場の生産力や質が落ち、生活に必要な最低限の物しか作れなくなった。
余談だけど、日本では2040年頃に既に国中の原子力発電機と火力発電機の稼動を止めている。これは世界から見て早い方だ。
教科書に載っている例だけど、パーソナルコンピューターやゲーム機という遺物は使用すると身体能力や学力が低下するおそれがあると昔から言われている。その事から生活に必ず必要な物ではないと見なされ、生産されなくなり、世間からは遺物扱いになった。
前者は極一部以外姿を消したので、主に後者の意味で現代は使われている。
現在、どこの国も地球の環境を破壊する物の使用を禁止する法律がないように、遺物の使用も法律では禁止されていない。
だけど遺物の所持は、世間からいい顔はされない。
遺物の世間一般的の認識はたった4文字の言葉で言い表せる。ガラクタ、だ。
生産されなくった物は時が経つにつれて壊れ人々から捨てられ、多くの遺物の名前、存在すら忘れ去られた。
ほとんどの遺物は壊れており、道具して意味を為さないし、邪魔なだけ。
壊れてない遺物は僅かで、更に大多数の名前や使用用途が不明である。
使えたとしても人にどんな悪影響があるかも知れないし、世間から不要と判断された遺物を所持していると他の人に知られたら、変人の烙印を押されてしまう。
遺物は世間の目を気にしない遺物の蒐集家以外、持とうとしないだろう。
(ポケットベルは遺物だったのか……)
次にゴダちゃんのお家に視線を移す。教科書の載っているポケットベルの写真によく似ている。黄色いボタンが3つ付いているけど、怖くて押す勇気はない。
何が起こるか分からないから。
(ポケットベルによく似ているから、ゴダちゃんのお家は遺物と思っていいかもしれない。でも、おそらくポケットベルではない。通信する機械を普通、お家と呼ばないだろう)
自分があの遺物を持っている事が信じられない。
綺麗な形を保っている遺物自体が珍しいからだ。大抵の遺物はかなりの年月を経て、ボロボロで原形すら保っていない。
最後に綺麗な遺物を見たのは、確か僕が5歳の時、両親が連れて行ってくれた
歴史博物館の中でだ。用途の分からない色々な古い物が、ショウケースに入っていた。あの時の遺物以外に綺麗な形を保っている遺物を見たのは、今持っているこのゴダちゃんのお家だけだ。
(流れでつい承諾したけど、ゴダちゃんのお家とは何なんだろうか? 本当にゴダちゃんが存在しているんだろうか? 体に悪影響とかないだろうか?)
今僕が遺物を持っている事が現実味がないように思える。
何だか夢を見ているみたいだ。自分で遺物を持ってる事を認めたくないのかも
しれない。例えるなら、いつ何処で爆発するか分からない爆弾を友人から預かった気分、と言えば少し理解してもらえるだろうか?
この遺物がいつ動き出して僕にどんな悪影響を及ぼすか分からないし、遺物を持っているところを家族や近所の人に見られたら面倒な事になる。そして、美雪ちゃんから預かった手前、勝手に捨てられない。
今すぐこの遺物をベランダから投げ捨てたい衝動に駆られ、膝に力を入れ立ち上がろうとする。でも、美雪ちゃんの顔が頭をよぎる。
(駄目だ……これは、美雪ちゃんの大切な物なんだ。それが例え遺物でも……勝手に捨てたら、悲しむよな……)
一旦頭を冷静にするため、深呼吸をする。それからこれからどうしようかと頭を悩ませる。
(美雪ちゃんから預かってしまったんだ……これ以上、美雪ちゃんを悲しませたくない。ゴダちゃんを探そう)
ゴダちゃんが本当に存在するか疑問を覚えるし、このゴダちゃんのお家もよく分からない。分かんない事だらけだ。困った。超困った。
(せめてヒントを! ヒントをお願いプリーズ!!)
ヒントが欲しくて、美雪ちゃんと話した内容をよく思い出そうとする。
脳内で劇場ができ、僕が美雪ちゃんと会ってからの事を映画にして、上映し始めた。ヒントが見つかるまで、何度も何度も上映を繰り返した。




