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第5話 渚とオルカ・1

 みなもは、渚とともに学校帰り、コンビニに寄っていた。


「えぇーっ! 売り切れ!?」


 みなもはレジの前で叫ぶ。


「えぇ、申し訳ございません、人気商品ですので」


 店員が言った。


「そんなぁ……」


 みなもは肩を落として、レジ前をあとにした。


「まぁ、そうだよねぇ。放課後、ちょっと買いに来たくらいじゃ、なかなか売ってないよね」


 渚がみなもの背中をさすって慰める。


「でも……これでコンビニ三軒目なのに……。期間限定のいちごプリンパフェが売ってないなんて……」

「まだ三軒目だよ。四軒目はきっとあるって」


 その時だった。コンビニの自動扉が開き、ひとりの男が入ってくる。目出し帽を被った黒ずくめの男だった。

 みなもと渚は立ち止まる。初めて見る光景だけど、これから何が起ころうとしているのかは何となくわかった。

 店員の顔からもサッと血の気が引いた。

 男は大股に歩いていくと、肩からかけた鞄の中からナイフを取りだした。

 男はナイフを店員に向ける。


「強盗だ。大人しく俺の言うことに従え」


 その男、強盗は言った。


「で、ですが……」


 店員は食い下がろうとする。

 すると強盗は、近くにいたみなもの手を摑んだ。


「えっ」


 みなもは強盗に引き寄せられる。


「言う通りにしないと、こいつの命はないぞ!」


 みなもの目の前でナイフがちらつかされる。

 みなもは考えた。どうする……? 魔法少女に変身する? でも相手は深海獣じゃない。一般人相手に魔法少女の力を使うわけにはいかない。

 その時だった。

 店の窓際の雑誌コーナーで漫画雑誌を読んでいたライダースジャケット姿の青年が口を開いた。


「卑怯だよな、そうやって……何も関係ない人を巻き込んで、自分のほしいものを手に入れようとするなんてさ」

「なんだお前は」


 強盗が振り返った。

 青年は漫画雑誌をぱたんと閉じた。


「オルカ……とでもしておこうかな」


 髪を茶色く染めた青年だった。彼は強盗の方に向き直る。そしてゆっくりと歩き始めた。


「来るな! 来たらこいつの命はないぞ!」


 強盗はナイフをみなもに突きつけてきた。


「みなもちゃん!」

「おいおい、お前にそんな度胸があるのか? 手が震えっぱなしだぞ」


 見るとたしかに強盗の手は震えている。


「ふざけるなっ! 俺だってっ!」


 強盗はみなもを突き放すと、ライダースジャケットの青年に向かってナイフを振りかざしていった。しかしオルカと名乗った青年は強盗の攻撃を簡単にかわすと、彼の背中に、両手を叩き込んだ。


「うげぇっ!」


 強盗は床に倒れる。


「さて……」


 オルカは強盗の腕をねじりあげ、ナイフを取り上げた。


「こいつは危ないから没収しておこう」

「店員さん、警察を呼んじゃってください。こういうやつには法の裁きを受けさせなくちゃいけないですからね」


 オルカが店員の方を見た瞬間だった。一瞬の隙をついて強盗は走り出す。


「あ……」


 とオルカは言った。

 強盗はみなもと渚を突き飛ばし、そして自動扉からコンビニの外へと逃走していく。


「逃げられた……か」


 オルカはお店のカウンターにナイフを置いた。


「とりあえず、これが証拠品です。警察が来たら説明してください。最近の警察の捜査能力は一流ですからね」


 それからオルカは床に尻もちをついていたみなもと渚に手を差し出した。


「君たちは……怪我はないかい」

「は、はい……」


 渚はオルカの手を取って立ち上がった。そしてまだ尻もちをついているみなもに手を伸ばした。


「みなもちゃんも、ほら」


 みなもも渚の手を借りて、立ち上がった。


 それから、三人はコンビニの外へと出た。オルカは駐車場に停めてあったバイクに向かった。


「あのっ、ありがとうございました!」


 みなもは言った。


「ん? あぁ、気にするなよ。俺は悪いやつが許せない。それだけだ」

「悪いやつが許せない?」

「あぁ、だってそうだろ? せっかくお天道様に貰った身体を誰かを傷つけることにしか使わないなんて……死んで当然だと俺は思うんだよね」

「は、はぁ……」


 オルカのバイクは黒地に白いラインが入っていた。そしてそこにかけられていたヘルメットはシャチの頭のような模様と形状をしている。

 オルカはヘルメットを被るとバイクにまたがった。


「んん? お前たち……」


 ヘルメットの向こうからみなもと渚を見て、オルカは呟いた。


「どうかしたんですか?」


 みなもは尋ねる。


「いや……なんでもない。それと……さっきちらりと話を聞いていたが……いちごプリンパフェを探してるのか? 駅前のコンビニにはまだ売ってたぜ。じゃあなっ」


 オルカはバイクを発進させた。そしてふたりの前を去っていく。


「なんだったんだろ、変な人」


 と渚は言った。


「うん……って、そんなことよりも! 駅前のコンビニに行こうよ! 早くしないとなくなっちゃうよ!」

「うぅ……いちごの亡者……」

「さ、早く!」


 みなもは渚の手を引っ張った。


 *


 強盗は廃工場にたどり着くと、その目出し帽を外した。はね放題の黒髪をした青年だった。彼は近くに転がっていたドラム缶を蹴り飛ばす。


「くそっ! どうして上手くいかないんだ! いつもいつも! 何もかも!」


 その時、近くの水たまりに影が浮かび上がった。サメのような、それでいて人間のようにも見える影だった。サメの怪人というべきだろうか。そしてその両目は赤く光り輝いていた。


「憎いか……」


 サメ怪人は問いかけた。


「あぁ、憎いよ……この世の全てが……な」


 強盗は言った。


「だから強盗でもして、警察に捕まれば楽になると思ったのに……。ほら、刑務所の方が、シャバより暮らしやすいっていうだろ? こっちは食べていくだけで精一杯だってのによ」


 そこまで言ってから青年は驚いて後ずさった。


「うわぁぁっ! って、なんだぁ!? み、水にだけ映ってる怪物……?」

「リアクションが遅いな……」


 サメ怪人はため息をついた。それから続ける。


「俺様の名前は憤怒のギガロ。貴様の望みを叶えるためにやってきた」

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