番外 フォル、ギュレーヴォと過ごす時間
ギューも時々エクリシェに泊まってくれるから、部屋あるんだ。だから、たまにはギューの部屋でと言ったんだけど、断られた。って事で、僕の部屋で一緒にいる。
ギューはエレに気を使ってばかりだったから、用意するのはハーブティー。リラックス効果が高めの。
普段から隣で座ってるから、癖になっているのかもしれない。自然と隣に座っていた。気づいたからといって、移動する気にはならないけど。
「……ギュー、エレと一緒の方が良かった? 」
「フォルと一緒で良かった。知ってんだろ? 」
「うん。聞いてみただけ」
ギューが僕よりエレと一緒にいたいという事は、ほとんどないからね。
それに、互いにそこまで気を使わなくていい相手。数少ないから。
「あれ? 髪解いたんだ」
「外出ねぇからな」
ギューは普段は髪を一つにまとめているけど、今はそうじゃない。そっちの方が好みだとエレ言っていたかな。
僕は両方好きだけど。
「ねぇ、頼みがあるんだけど」
「いなくなったあとなんて言うなら聞かねぇぞ」
「違うよ。もうすぐギューを返してもらえるでしょ? だからさ、僕の補佐になってよ」
本気でそうなれるなんて思っていない。でも、ずっとみんなと一緒にいられるとしても、補佐は必要だから。それを誰にするのか。ずっと保留だった。エルグにぃ様にルーを勧められたけど、断っているから。僕の補佐はできれば、御巫を持たない黄金蝶にしたくて。将来的に、でもね。
管理者の方も考えないといけないんだよね。そっちは、エルグにぃ様に紹介してもらう。むりなら、その時考える。
ギューにも考える時間与えるんだけど、すぐに答えを出してくれた。
「いいぜ。フォルの方が、仕事やりやすいからな」
「君にそんな事言ってもらえるのは光栄だね」
ギューは普段はオルの補佐と雑務をこなしている。本来ならセイにぃ様が補佐になるはずなんだけど、あまりにも仕事が早すぎてね。実質補佐はギューって感じだったんだ。だから今は、本家すっごく忙しいと思うよ。僕とギューが仕事ほとんどしないから。
ほんとにね、ギューはオルに渡したくない逸材なんだよ。毎回オルの前でも言ってるんだけど。いつになったら返してくれるんだって。
セイにぃ様は元高位貴族。それなり以上の礼儀作法を身につけている。そのセイにぃ様が学んでいないとは信じられないって言う。ギューの礼儀作法を見て。
本人曰く、僕が教えたのと独学半々。カップを持って口へ運ぶ。普段は何も気にしていないと言うけど、そうは思えない。
身体に染み付いているって事なのかな。
ギューは生命の星にある名家の子息の生まれ変わり。でも、その記憶も何もない子供の頃ですら不思議な事はいくつもあったんだよね。ヴィーは普通の子供だったのに。
……ほんとにわからない事ばかりだよ。アディもかなり困っているんだろうね。ギューの扱いには。
「……」
「どうしたんだ? 」
「……なんでもない。それより、ヴィーの事気にならないの? 」
わからないのは、僕が何も知らないから。ギューが知っている事を僕は知らないんだ。それが原因で、それを話せないと言われている。
あまり気にされないように、話題を変える。
「ヴィーなら大丈夫だろ」
「そう。じゃあ、僕の事は? あの後、君と二人っきりで話す事なかったからね。エレの事今なら気にしなくていいよ」
黄金の瞳をギューに向ける。天色の瞳をじっと見つめる。ギューも僕と一緒で、黄金は普段は隠しているんだ。
エレがいればギューはエレに気を使う。本心は絶対に言わないだろう。僕もエレがいると聞きづらい。だからこそ、今のタイミング。今なら、ギューの本音を聞き出す事だってできるから。
このタイミングを逃さないけど、能力で聞き出す事もしたくない。だから、黄金は見せているだけ。僕のお願いのようなものかな。
「なんも心配してねぇよ」
「へぇ」
「一緒にいれんだろ。二度と会えなくなるなんて、認めねぇからな」
そっか。そういう事か。なんの疑いもないその瞳。
……いられなくなるんだよ。いつかはもう二度といられなくなる。今はまだわからないと誤魔化すけどね。僕は、永遠に星の中にいる事を選ぶんだろうから。星の寿命をなくすために。
ギューにすら、言わないんだ。知らない方がいい事だってある。
僕は笑顔を見せた。一緒にいられない。それを隠すように。
「消えるわけねぇんだ。だから、そうやって誤魔化す必要もねぇよ」
「えっ……」
「全ての因果が一つの奇跡に終着する。それが運命というもの。誰でも変えられて、誰にも変えられない。定め」
『だから、未来視は可能性しか視れないんだ。今この瞬間にも、多くの運命を選ぶ事ができる。でもね、どんな運命を選ぼうと決して変わらない事。それが、因果が一つとなる先。例えば、世界が創造される。とかね』
……誰の……ううん。知ってる。わかってる。僕が言っていたんだ。記憶がなくても、刻まれた何か。それが、この言葉が僕が言った言葉なのだと教えてくれる。
どうして、僕はそんな事を言えたんだろう。今の僕はそんな事言えない。考えもしない。
でもね、なぜか溢れてくるんだ。その言葉以外にも。
奇跡の魔法。それは、運命と似ているのかもしれない。もしかしたら……
なんて、考えすぎなのかな。それが事実なら、今頃騒がれてるよ。
「……ギュー、たまには裸の付き合いっていうのを」
「断る」
「いいじゃん」
「何がいいじゃんだ! どこがいいじゃんだ! 」
可愛い。一緒に風呂に入るって話なのに、顔真っ赤にしちゃって。そう言えば、エレが言っていた時もこんな反応していたよね。エレが……
……僕は一応男だよ。エレとは違うから。身体の構造。女性特有の部位なんてないから。逆もそうなんだけど。
「……僕男なんだけど……あれ? というか、ギューって本家でも必ず一人じゃなかった? 大浴場使ってない」
僕はほとんど本家のはいないから、絶対に入っていないとは言えない。でも、僕が知る限りでは一度もないんだ。子供の頃はよく僕と一緒に入っていたんだけど。ついでにエレとも。エレが世話をするんじゃなくて、子供のギューがエレの世話をしていた。
「もう誰かと一緒に入るような歳じゃねぇだろ」
それはそう。反論できないな。
……あっ、でも
「大浴場なら、みんなと入るのが普通じゃん」
「広いと落ちつかねぇからな」
落ち着かないなんて事ないでしょ。絶対に嘘だね。どうして嘘を吐いてまで一緒に入らないんだろう。何か見せたくないものがあるとか?
「ギュー、一緒に風呂」
「だから……そのうちな」
あっ、諦めた。でも、今すぐじゃないんだ。もし、一緒にいられるならその時は教えてもらおうかな。
……消えられない理由、また一つ増えたじゃん。
ほんとに、どうしてくれるんだろうか。一緒にいられるなら、奇跡が起きるなら……
そうだね。ずっと一緒にいると言って、エレの世話をいっぱいしてもらおうかな。
裏家業の方も手伝ってもらおう。フィルは魔法具制作に夢中だから。できない事はないんだけど。
「……ギュー、いつかは、正式に家名を与えるよ。オルが返してくれるまでは待たないとだからね。だから……僕らの仕事をちゃんと手伝うんだよ? 裏家業。の合間に喧嘩を始めるシェフィとミドゥを止める事とか」
「それは勘弁してくれ。仕事の手伝いはすっから。それと、フィルに弓使わすのやめさせろ」
「それは僕もやめろって言ってる。なぜか自覚がないんだよ。なぜか」
僕の兄、フィルは自慢できる兄だよ。でもね、時々そうじゃないんだ。その一つがそれ。弓が苦手なのはいいんだよ。問題は、怪我人が出ている事。僕の隣で、リラックスティーを飲んで現実逃避しようとしているギュー。
「……ねぇ、一緒に寝るくらいはいいよね? 」
「ああ」
残りの時間一緒に寝れる。もう言質とったから。さて、満足したとこで一旦風呂に入ってくるか。
ギューの……かつての僕の言葉を信じて、気楽に考えながら。




