番外 ゼロ、ゼムと過ごす時間
エクリシェで久々にゆっくりとゼムと一緒にいられるんだ。当然俺の部屋。ゼムは軟弱なエレと違って、この部屋でもなんとも思わないんだ。なんなら、エレがいる時よりも寒くて平気なんだ。
空色の部屋。氷のようなこの部屋で、兄弟仲良く一緒に過ごす。そんな至福な時間が他にあるわけないだろ。
ゼムをソファに座らせて、俺は紅茶の準備。セムがやるって言ってたけど、ゼムにやらせると下手だから。ゼムは、俺らの家の裏家業とかはできるけど、生活面だと俺がいないとなんだ。いつも俺がゼムの世話してる。それが好きだから。
今日はゼムのためにも豪華にしてやる。クッキーじゃなくて、アイスを出してやるんだ。エレの時は出さないけど。
ゼムの好きな紅茶アイス。俺が作っておいたんだ。
これで今日のお茶会セットが準備できた。あとは、ゼムと一緒に堪能するだけ。
ゼムの隣に座って、ゼムにらぶアピールする。そうしたら、ゼムが俺の頭を撫でる。俺がにゃんにゃんしている。いつもの時間。
「……」
今日はあんな事聞いたから、話がなにも出てこない。でも、一緒にいられるだけでいいんだ。
それに、話は俺の方からすればいいんだ。
「ゼム、ずっとここいられる? 」
「多分。向こうで問題起こらない限りは」
ゼムは最近はロストにいた。色々とあって、財政を整えるとか全部ゼムがしてくれてたんだ。俺はエレの世話しないといけなかったから。
それに、ゼムはそういうのが得意だから。
ロストであった王族の集まりの時にも会ってる。けど、あの時は互いに忙しくて、あまり話す事できなかったんだ。今は違う。
「そう言えば、ゼムにプレゼントあるんだ」
「プレゼント? なにかな? 」
ワクワクそう。プレゼントはちゃんとラッピングしてある。中身が見えないように。見てびっくりさせたいんだ。
ゼムが受け取ってくれた。中身を確認している。
「これ、ゼロが? 」
「俺が作ったんだ」
魔法具。それに、ブレスレット。両方俺が作ったんだ。ブレスレットの方は本職だからな。魔法具は、慣れてないからちょっと不格好。でも、使えるのはちゃんと確認してある。四角くて薄い箱のような魔法具。小さいけど、記録された映像が映るんだ。エレに監督してもらって作った。免許持ってないから。
免許ないと、免許保有者がそばにいる事が決まり。
ゼム、喜んでる。ずっと、魔法具とブレスレット眺めている。
ブレスレット忘れてた。ブレスレットは、氷のようなデザインにしてみたんだ。ひんやり仕様。派手すぎず、地味すぎず。いい感じの塩梅を見つけるのが、一番難しかった。
「ありがとう」
「喜んだ。喜んだからいいんだ」
「今日はとことん甘えモード」
そうなんだ。ゼムが一緒に久々にいてくれるから甘えモードなんだ。それに、ゼムが術を使ってくれたから甘えなんだ。
ゼムは、俺に気を使って術を使わなくなった。でも、今回は使ってくれた。あの時の指示は、術を使ってたんだ。俺が危険な目に遭わないようにって。俺は知ってるんだ。
氷の部屋と銀が似合う。その、透き通った青も。じっと見つめていると、微笑んでくれた。
「ゼム、術見せて。氷の術。なんでもいいから」
こんな無茶振りでも、俺の頼みだからゼムは引き受けてくれる。俺の頼みだから。
少し考える時間があるけど。それでも、使ってくれるんだ。
俺の頼みだから。ここ重要。
ゼムが左腕を曲げる。左手を上にする。そこに、キラキラと空色の光が集まる。集まった光は、パァァーと周囲に散った。氷に光を纏わせてる。透明な氷が反射して色んな色になってる。どんな仕組みか知らない。
これがゼムなんだ。器用でどこまでも繊細な術。多種多様の術を使いこなせる俺の自慢の兄。
「どうかな? 久しぶりだけど、それなりには」
「それなりじゃないんだ‼︎ 俺のゼムはいつだって一番なんだ‼︎ 」
こんなに綺麗な景色久々。それに、俺らがちょうどいい気温になってる。氷が室温を調節してくれているんだ。あかりがなかったらもっと綺麗なのかもしれない。あかり消した。氷の光が際立ってる。夜空みたいだ。
「これは俺だけの景色なんだ。俺の特権。俺以外は、見るだめ」
「わかっているよ。これは、これだけは、ゼロとオレだけの景色。他のみんなには、一度も見せた事ないよ。それに、これから先見せる事もないと思うよ」
当然なんだ。これは俺らだけの秘密だから。たとえエレとイシュでも、この景色は見せないんだ。どれだけ頼まれても、押しに弱いゼムの代わりに俺がだめって言ってやる。
「……ゼロ、ゼロは、どうする? 」
「そんなの、決まってんだろ。そんな未来なんて、絶対変えてやるんだ。俺らは、ずっと一緒にいるんだ」
フォルの事。絶対に、一人になんてさせない。ずっと一緒にいて、俺を甘やかさないといけないんだ。きっと、方法はあるはずなんだ。エレが世界を創って回避した時のように。方法は探せばいくらでもあるはずなんだ。俺らが気づいていないだけで。
俺はそれを信じる。絶対に見つけ出す。
だから、笑っていてやる。悲しんでなんてやらない。やる必要ない。
「ゼロ……そうだね」
「そうなんだ……フォルって言えば、この前報告書書いておけって連絡あったんだった。ちゃんと書かないと、エレと同じ扱い受ける」
エレと同じ扱いはいやなんだ。
へぇ、ゼロってエレと一緒で報告書の一つすらまともに書けないんだ。なんて言われたくない。
……いや、まて。それだけならまだ可愛いかもしれない。
ギューにぃがこっそり手伝ってたと仮定しよう。それで、エレが黙って提出したら、どう言われる? エレですらできるのに、君はできないんだ。なんて言われるかもしれない。
急いで報告書書く。紙用意して、水没都市で起きた事まとめる。
「……ゼロの字、いつ見ても綺麗」
「ゼムの方が綺麗なんだ」
「そうかな? オレはゼロの書く字が好きだよ」
ゼムが好きって言った。俺(の書く字)が好きって言った。俺が好きって言った。
「俺もゼム好き」
「あれ? 意味違くない? 」
気のせいなんだ。気のせいって事にすれば気のせいなんだ。ゼムが俺の書いている報告書見ている。
「ゼロ、ここ間違ってる。これだと水没じゃなくて、水恋。水恋??? 」
水に恋している都市。意味不明だな。俺が書いたんだけど。
ちゃんと水没に直しておく。フォルに哀れな目で見られる前に気づけてよかった。ゼムに大好きって言われた字で、報告書書き終える。あとは提出だけ。今日は気分じゃないから明日以降。暇な時に出しても誰も何も言わないはず。エレは出すかも怪しい。
「ゼム、魔法学の勉強する。嫌いだけど」
「今度は何がわからない? 」
「魔法を使うのに自分の体内に保有する魔力を使う理由」
ゼムが苦笑い。でも考えてもみて欲しいんだ。体内に保有している魔力。そんなもんはたかが知れている。なのに、そんなもんを使う。なんて、非効率だと思わないか? 自然に多くの魔力があるのに。それは使わないんだ。
ほら非効率。理解不能。
問題、魔法を使う際に、自分の手持ちの魔力以外使えない理由は
とかもあった。本当に、わけがわからない。
ゼムに教えてとぎゅぅってする。ひんやり。
「……えっと、ゼロ、一般常識においての話。魔力は、体内に溜まる。ここまで大丈夫? 」
「常識」
「その魔力以外は使えない。普通の人は、そう思っているんだよ」
理解不明。理解不能。意味不明。
ゼムが困っている。けど、これは俺の方が正しいと思うんだ。
ゼムが言うならそういう事にしておくけど。この件に関しては。他にも聞きたい事あるから、今日はゼムにいっぱい聞くんだ。




