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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 星実月 希蝶
5章 エレ編 管理者見習い試験
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番外 シェフィ、ミドゥと過ごす時間


 エクリシェ……久々に帰ってきたよ。エクリシェができた時、神魔聖全員揃ってたんだ。エレは覚えているんだろうね。

 僕も少しだけ手伝ったんだよ。主に荷物運び。


 それはいいとして、どうしてミドゥの部屋に連れ込まれているんだろう。ほんと、夢であって欲しかったよ。気が休まらないから。

 あのね、普段から一緒にいたよ。あの拠点改築前から。でもさ、あの時と今とは全然状況違うんだ。なんて言えばいいのかな……追うと追われるは違う。


 ミドゥの部屋は、一言で言うと怖い。空色の家具。ピンク色のカーテン。紫色の小物。これを偶然そうなった。この色がすきだったんだで済ませられるような僕じゃないから。エレならそれで騙せていたんだろうけどね。


「……いつまで扉の前で立ってるの? 座って」


「どうしてだと思う? どうして、ずっと奥に行かないと思う? 」


「……? 」


 わかりませんみたいな顔するんじゃないよ。わかるでしょ。自分の部屋を見たらさ。


「早く、シェフィのすきなぬいぐるみ抱っこさせてあげるから」


 それで僕の警戒心が解けると思ったら大間違いだよ。解けるはずないでしょ。本気で何考えてんの?


「……」


「そっ、それは⁉︎ 」


 僕がずっと欲しかった魔法書。ミドゥが持っていたなんて⁉︎ 欲しい! 読みたい!


「座って」


 うん。座る。大人しく座っておく。だから貸して。読ませて。僕にもその魔法書を読ませて。

 ソファに座って、両手を上げる。早く、早く。早く読ませて。


 ミドゥが僕の隣に座る。そして、僕の読みたかった魔法書を貸してくれた。黒茶のレザー素材風の表紙。金の文字。趣のある魔法書。現在だと、普通の厚紙のような表紙のものもちらほら見られる。重さも、このずっしりとくる重さがいいんだ。もう見た目からしてさらっと読めそうにない本。

 ああ……これだよ。これが読みたかったんだ。


 何年もひっそりと探していた魔法書に、ようやく出会えた。このご縁、感謝いたします。


 重い表紙を開ける。わずかに黄味がかる白い紙。もう、すごいとしか言いようがない。趣があるとかそういう話じゃないよ。最高すぎる。

 これが、これが……

 まだどんな魔法が載っているのか見ていないのに、もう気分が上がりすぎている。


「どう? 気に入った? 」


「うん。うん。気に入った。ありがと、ミドゥ。だいすき」


 そう言いながら、視線は魔法書。離れられない。ページを捲る。魔法についての理論。しかも、古くの時代のもの。これは、魔法の歴史を綴った書物だったんだ。魔法書の中にはそういうのも存在するんだ。


 世界で初めて魔法が知られた時、奇跡の力と言われていたんだ。星からの移住者も、そう言っていた。世界の人達に合わせていたんだと思うよ。

 祈りにより、奇跡の力は人々に祝福を与える。弱った人に、癒しの力を与える。これは、回復魔法師の事だね。今も昔も、かなり貴重。しかも、ほとんど使い手が、応急処置程度しかできない。

 それでも、当時は創世姫様の奇跡だと言って騒がれていたんだ。


 すごい。時代背景まで書いてあるんだよ。こんなにも、魔法についてわかるのは貴重。


 ミドゥが、僕の頬を触っているけど、気にしない。そんな事よりも、魔法書。


「……それ、ぼくがいない時に読んでよ。あげるから」


「やだよ。今読みたい」


「ぼくがいる時は、シェフィはぼくに時間を使うってお約束でしょ」


「そんな約束した覚えがない」


 なんか、勝手に変な約束した事にされている。僕は知らないよ、そんな約束は。


 でも、せっかくくれるって言うんだから、この話を見たら一旦やめようか。

 ……あれ? これってさ……ミドゥの好き勝手させていれば、僕はご褒美いっぱい貰いまくれるんじゃないのかな。それって、僕にとってはいい事?


「……相手するよ」


「うん。じゃあ、久々にシェフィの調合が見たい」


「いいよ。ついでに、僕の趣味部屋紹介してあげる。その代わり、今度ミドゥも紹介してよ」


「うん」


 魔法書を本棚にしまっておく。ここはミドゥの部屋だけど? そんなのは気にしなくていいよ。ミドゥの部屋は僕の部屋でもあるから。


 ミドゥが服を出している。なぜか二着。また僕を着せ替えようとしているよ。そして、また僕に渡される服はミドゥ好み。もういいけどね。魔法書貰ったから。


 文句なんて言わずに、喜んで着てあげる。ついでに、お揃いの小さな花の髪飾りをつけるように渡されたのも何も言わない。素直で従順になってあげておく。魔法書の喜びが収まるまでは。

 服を着替えて、手を繋いで、理解不能な僕色部屋から脱出。じゃなくて、一旦出ていく。


 ……もし、エレが趣味部屋をイシュに紹介するなら、あれかな? こんな感じかな?

 エレは〜、自分で〜、迷わずに行けるの。だから、今からイシュをご案内。

 ……なわけないか。


「……そういえば、シェフィってぼくの部屋の隣だよね? 」


「うん。そうだね。ミドゥの趣味部屋も寄ってく? 」


「今片付いてないからだめ。シェフィに初めて紹介するから、ちゃんと綺麗な状態がいい」


 そっか。僕は気にしないんだけど。ミドゥがそこまで気にするなら、見せろなんて言えないか。ミドゥの趣味部屋観光は今度にして、今日は僕の趣味部屋だけ。


 ちょっと歩いていると、僕の趣味部屋に着くんだ。扉は青銀色。エレには秘密なんだ。

 扉に手をおく。扉を開くと僕のだいすきな場所。なにがすきかって? エレのぬいぐるみとフォルのぬいぐるみが出迎えてくれるんだ。壁の方に設置している棚の上から。

 ……ぬいぐるみは目立つけど、全体的には落ち着いている方だと思うよ。少し暗くて静かな雰囲気を感じさせる、上品な木の壁風。床は、白。清潔感を出すために。


 最新式の器具は置いていないけど、一通りの器具は揃っているんだ。ここでいつでも調合ができる。


「……どう? 」


 なんでだろう。ミドゥが僕の趣味部屋をまじまじと見ているだけ。それだけなのに、なんか、気恥ずかしい。

 あれ? そう言えば僕はなにしにここへきたんだっけ? えっと、ミドゥに趣味部屋を紹介しようって話。その前は……


 ……


 そうだ⁉︎ 思い出した。なんか、じっと見られていてわかんなくなってた。

 あれ、あれだよ。調合を見せようとしていたんだ。


「ミドゥ、調合見たいんだよね。簡単な回復薬でも作ってあげるよ」


 最近のミドゥは、かなり忙しそうなんだ。僕がそうさせているってだけなんだけど。だからこそ、たまには労いが必要だよね。素材もちょうど用意できているから。


 ミドゥのために、まずは抽出から。抽出機に入れれば簡単にできるんだけど、僕あれあんますきじゃないんだ。ちゃんと抽出できない時あるから。

 だから、素材となる植物をすり潰す。必要素材全部入れて混ぜて、布に包む。ギュゥゥゥっと力任せに絞り出した液体は薄緑色。これに、なぜか収納袋に存在した緑色の液体を混ぜる。この液体の方は、抽出後に何日か寝かせておかないといけないんだ。


 完成品は瓶に詰めておく。今回は瓶二つ分。

 一応本職だから手際はいい方だと思うよ。


「久々に見たけど、すき」


「ミドゥの作ればいいじゃん。できるでしょ? 」


「うん。できるけど、シェフィの見ている方がいい。自分で作るのは面倒だから」


 また面倒って。たまには自分でやってみますって言いなよ。


「……ぬいぐるみに着せる聖衣あげる」


「いいの⁉︎ ありがと。早く着せて、着せて」


 ミドゥがぬいぐるみの着せ替え服くれた。白い衣装に身を包むエレとフォルもかわいい。隣で「いつか本物にも。」と言っているミドゥは、気にしないでおく。

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