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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 星実月 希蝶
5章 エレ編 管理者見習い試験
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2話 エレとイシュ〜姫達のひととき


 転移魔法でエクリシェにおかえりなの。エレは転移魔法できないから、シェフィが使ってくれた。


 エレはイシュと一緒にお部屋に行く。二人っきり。お部屋の声が外に漏れる事はないの。なんか、お友達がお部屋にいるっていうのが恥ずかしい。だから、いっぱいぬいぐるみをベッドに置いておく。


 ふかふかのソファに座るの。今日はね、イシュがお客様。エレがお招きしている。だからね、エレが紅茶とクッキーの用意をしてあげるの。淹れるの下手だけど、苦くなるけど。でも、お砂糖で誤魔化せばいいと思うんです。

 クッキーは、ゼロがくれたのがいっぱい残っているからそれにしようと思っていたの。でも、エレはチーズタルト買っていたの思い出した。それをお茶請けに出す。


 ついでに、お客様には手土産を渡さないと。手土産は、フォルと一緒に量産したエレぬいぐるみ。着せ替えもできるの。


 ……あっ⁉︎ お着替えどうしよう。イシュとエレじゃサイズが違う。

 持ってきている事信じる。


 エレは当然のようにジュースにするの。ブーニャの果実のジュース。甘酸っぱいんだ。


「エレ、紅茶は私が淹れるよ」


「ふぇ、お、お客様」


「気にしなくていいよ」


「……じゃあ、これ使って。ゼロがくれた茶葉」


 エレにはよくわからないけど、ゼロがエレもすきって言えるようにとか言ってた。ゼロは、本業これにすればいいと思うの。アクセサリー職人じゃなくて。


 イシュはとても慣れている。自分で紅茶淹れている。


 紅茶の準備もできて、一緒にソファに座る。お隣同士。向かい合わせじゃないの。エレとイシュはこれがすき。


 ふわふわほんわりな雰囲気。


「イシュ、あのね……フォルがいなくなったら、エレは神聖姫を辞めたいと思ってる。簡単に辞められるようなものじゃないって理解してるよ。でも、エレは神聖姫としていられなくなる気がする」


 みんなを迷わすくらいなら、エレは神聖姫じゃない方がいいと思う。

 イシュには、ちゃんとお話しておくべきだと思うの。


「そう、なんだね。それがエレの決めた事なら止めないよ。でも……神聖姫じゃなくても、ずっとお友達でいて? 」


「うん。いる。ずっとお友達だよ。エレとイシュは」


 ずっとお友達。エレは神聖姫じゃなかったとしても、なくなったとしても、もう一人なんかじゃないんだ。自分勝手なエレでも、いいよって言ってくれる人がそばにいるんだ。


 ……本当はね、フォルがいなくても、フォルのために神聖姫を続けないとってわかっていたんだ。でも、それができそうじゃなくて。悩んだ結果がこれなの。


 イシュの左手がエレの右手と重なる。


「……エレ、続けたいって思ったらいつでも言って。私は、エレがどっちを選ぶにしても応援するから」


「うん。ありがと」


 エレは、自分から続けようと思える時が来るのかな。まだわかんないよ。


「それに、まだフォルがいなくなるって決まったわけじゃないじゃない。最後まで諦めないんでしょ? 」


「うん。そうだね」


 フォルがエレと一緒にいられなくなる。それは、まだ確定していない未来。そう思わないと。


 クッキー、サクサク。


 このクッキーのためにも、エレは神聖姫を続けられるように最善を尽くさないと。まだ時間がある。その時間内で、とってもいい案を見つければいいだけ。

 もっと、そう思えるようにしないと。エレが言い出したんだから。


「……イシュ、エレはね、イシュと一緒にもいられるようにしたいの。じゃなくて……一緒いいから遊びたい! 」


「そうだね。考えるのは神魔聖に任せて遊びましょう」


「うん。遊ぶ。エレの趣味部屋をこっそり紹介して遊ぶ。あのね、あのね、フォルには内緒だよ」


 どうしてフォルに内緒なのかは、内緒なの。イシュなら行けばわかると思う。イシュは「行きたい。」って食い気味に言うの。そんなに楽しい場所ではないんだけど。エレにとってはとってもうれしい場所。楽しいよりもうれしい。


 あのね、少しだけ教えると、ゼロの趣味部屋とお隣さんなの。


 まだ、夜にすらなっていないの。いっぱい時間がある。

 エレ達がむずかしく考えすぎて、暗くなっていたら、みんなに心配されるだけ。みんなをどんよりさせちゃうだけ。

 それに、楽しいでいっぱいの方が良い案も浮かぶかもしれないの。


 という事で、エレ達は立ち上がる。ちょっぴりふかふか恋しいけど。

 クッションだけでも持っていこうかな……邪魔になるからやめよっと。


「……イシュ、洗い物先してもいい? 」


「エレ、つけておいて、後で一緒にしようよ。その方が洗うの楽だよ」


 つけておく? 何に? とりあえず、お客様をこれ以上働かさせられないの。ここはエレが持っていくの。

 空になっている器達を持って、洗い桶に入れにいく。

 料理はお部屋でできないけど、クッキーやアイスを置いておけるように、各部屋に保冷魔法具。それに、器とかいくつか。あとあと、器洗えるようにお水場も用意されているの。


 イシュがなんかニコニコついてきているけど気にしない。


 器を洗い桶に入れたら、洗剤をどばっと入れるの。普通に洗う方が安上がりな気がするけど、不思議。

 洗剤の容器を持って


「待って! 何しようとしてるの? 」


 イシュに止められた。


「何って、だって、つけておくって」


「違うよ⁉︎ 水でいいから! 私もあまり詳しくないけど……少なくとも、洗剤を器に入ってるの全部入れないから! 」


 そうなの? エレ知らない。でも、イシュが言うならそういう事にしておく。お水を洗い桶にいっぱい入れておくの。


 お片付けも終わったから、今度こそ趣味部屋行くの。


 てこてこって。


 扉を開けて、イシュをエレの趣味部屋にご案内。あのね、迷子になるだろうって思っている、そこのシェフィ。エレは迷子になりません。なった事ございません。


 扉から出て廊下は、右に曲がります。ちなみに、少し歩くとフォルのお部屋です。そして、まっすぐと道なりに歩いていきます。歩いていると、アディのお部屋も見えてまいります。てこてこ信じて歩きましょう。そうしたら、イヴィのお部屋が見えます。それでもまっすぐと歩いていきます。


 そうしたらね、曲がり角があるの。他にも歩いている間いっぱいあるから、間違えないように気をつけます。


 その曲がり角を左に曲がって


 ……


 ……


 ……


 ……


 ……


 つかないの。着くはずなのに、つかないの。おかしい。つかないの。


「……え、エレ、あっちの方行ってみない? 」


「うん。いく」


 イシュが行きたい場所に行くの。そうしたらね、なんと不思議な事が起こりました。ついたのです。まさかのついたのです。


 エレはピンクと空色の扉を開ける。一見するとだよ、ただの調合部屋。とても落ち着く濃い木色の壁。灰色の床。茶色の机には、調合のための道具が置いてあるの。試験管とか、抽出機とか、なんかすりすりするあれとか。本当に必要なものはいっぱい揃っているの。


 でもね、ここが重要じゃないのですよ。ここはただのお飾りと同意。実際にかなり役立っているにはいるんだけど。あのね、調合部屋は別にある。でもね、あそこはみんなが使えるようにってしてあるの。最新式の道具ばかりもいいけど、エレは手動もいいと思うの。


 ここにはそれができるような道具も揃っている。

 だから、必要になった時はエレはみんなが使う調合部屋じゃなくて、ここでお薬作ってる。


 で、で、それはいいのです。問題はそこじゃないのです。


 その奥にあるの。なんの変哲もないあかり魔法具に触れて


「にゃんだにゃん」


 と言うと、ゴォォォォ——何かが動く音がします。隠し扉なの。その先には


 エレとゼロの秘密のお菓子部屋ーーー♡


 フォルに見つかると怒られるから秘密。イシュには特別に教えてあげるの。


「ここが、エレの秘密? ……これは、怒られるね」


「うん。だから秘密。時々ここでゼロと開催するお茶会に今度ご招待するから秘密」


「うん。楽しみにしておくね」


 エレの秘密をイシュと共有しちゃったの。今日は特別。明日からまた離れ離れだから、いっぱいいっぱいイシュを堪能しておかないと。エレの初めてのお友達なんだから。

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